コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第70回

2005年10月5日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE
司会を務めたエレン・デジュネレス
司会を務めたエレン・デジュネレス
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第57回エミー賞授賞式に招待された。米テレビ界最大のイベントとはいえ、ぼくの専門は映画のほうなので、これまで出席はおろか、授賞式のテレビ放映すらまともに観たことがなかった。こんなに無知な人間が参加しても良いのだろうかと躊躇しているうちに当日を迎えてしまい、一張羅の黒のスーツを引っ張り出して出かけていった。

かつてのアカデミー賞の会場、シュライン・オーディトリアムで行われた授賞式は、カジュアル版オスカーという感じだった。みんなタキシードやドレスをびしっと決めているけれど、ドラマの共演者たちが一斉に集まっているせいか、レッドカーペットは和気あいあいとしたムードが漂っていた。

どうやらアメリカのテレビ関係者は映画に対して劣等感を抱いているらしく――司会のエレン・デジュネレスが「どうせならオスカーの司会をやりたいわ」と自虐的なジョークを言って、拍手喝采を浴びたのが良い証拠だ――、ノミネートされた人たちの間に、アカデミー賞のときのようなぴりぴりとした緊張感はなかった。

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でも、エミー賞に参加させてもらって改めて感じたのだが、いまのテレビドラマのクオリティは、映画を軽く凌いでいると思う。今年は特に映画が不作のせいもあるけれど、テレビの充実ぶりには目を見張るものがある。「シックス・フィート・アンダー」や「ザ・ホワイトハウス」「24」「デスパレートな妻たち」など、ジャンルこそ違えど、高品質な作品が毎週のように生み出されているのだ。

さらに驚いたのが、「LOST」の最優秀ドラマシリーズ賞受賞だ。個人的には近年のドラマシリーズのなかで最高傑作だと信じて疑わないけれど、これだけエッジのある冒険作が由緒あるエミー賞で栄冠に輝くとは思わなかった。アメリカテレビ界、恐るべしである。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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