コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第61回

2005年1月6日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE
「ライフ・アクアティック」 05年上半期、恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー
「ライフ・アクアティック」 05年上半期、恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

「ライフ・アクアティック」という新作映画で、大好きなウェス・アンダーソン監督に取材することができた。デビュー作の「Bottle Rocket」(邦題「アンソニーのハッピー・モーテル」)から、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」に至るまで彼の作品はどれも好きで、とくに「天才マックスの世界」のなんて何度見直したかわからないほどなのだけれど、単独でのインタビューはこれが初めてだった。

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「ライフ・アクアティック」の主人公は、ビル・マーレイ演じる海洋学者スティーブ・ジスーだ。ドキュメンタリー映画の撮影クルーを率いて伝説の鮫「ジャガー・シャーク」を追い求めるという冒険物語に、突如現れた息子(オーウェン・ウィルソン)との交流や、同行記者(ケイト・ブランシェット)への偏愛、ライバル学者(ジェフ・ゴールドブラム)との確執などの要素が絡まっていく。

トレードマークだった分厚い眼鏡を外し、髪をさらさらのストレートに変えたアンダーソン監督は言う。

「いろんな要素が詰まった映画だけど、ぼくがもっとも惹かれたのは、映画撮影班の物語であるという点なんだ。つまり、これは映画撮影に関する映画で、ぼくなりの『アメリカの夜』、あるいは『8 1/2』なんだよ」

海洋船ベラフォンテ号のデザインから、クルーの衣装に至るまで徹底して作り込まれた「ライフ・アクアティック」の世界は、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」の延長上にあるものだ。プロットの緩さと手作り感は、「天才マックスの世界」のなかで主人公マックスが演出する舞台劇を思わせる。

「君の言っている意味はすごくわかるよ。実は、このあいだオーウェン(・ウィルソン)にも指摘されたんだ。マックスが演出する舞台劇そっくりじゃないか、ってね」

たった20分という限られた時間だったけれど、久しぶりに充実したインタビューをこなすことができた。「エターナル・サンシャイン」のミシェル・ゴンドリー監督取材で始まった04年も、ウェス・アンダーソン監督取材でラスト。なかなか充実した1年間だった。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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