コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第40回
2021年4月8日更新
オンライン上の映画館、「シネマ映画.com」始めます
コロナ禍は続いています。うんざりするほど続いています。もちろん、映画館は開いていて「鬼滅の刃」や「花束みたいな恋をした」など、想像以上に大ヒットした映画もありますが、一方で、もうしばらく映画館に行ってないという方も多いのではないでしょうか? 緊急事態中などは、夜の回がなくなってしまったので、行きたい時間に上映がないという意見もよく聞きます。
そんな折、私たち映画.comは、オンライン上の映画館「シネマ映画.com」という新しいサービスを開始することにしました。
「シネマ」に「映画」って、何だか「頭痛が痛い」ネーミングだなと思う方もいらっしゃると思うので一応説明しておきますと、「cinema」というのはもともとフランス語では「映画」の意味ですが、こんにちのアメリカでは、おもに「映画館」を意味する単語なのです。TOHOシネマズ、イオンシネマ、シネマサンシャインなどなど、シネコンはCinemaのComplexなわけです。「映画.comが運営する映画館」という意味での、シネマ映画.comということですね。
ところで、私たち映画.comの編集スタッフは、毎週1回、全員が参加するオンラインミーティングを行っています。おもに、取材の報告やインタビューの予定などについて情報共有するのですが、「最近試写で見て面白かった映画」というのを各自が報告する場でもあります。
これが、自分がノーマークだった名作を発見する格好の場所なんですね。スタッフそれぞれ、アンテナの角度が違いますから、アメコミヒーローものが大好きな人もいれば、ヨーロッパのインディーズ作品に精通している人もいる。私のように、ドキュメンタリーばかり見ている者もいます。私は、年間でおよそ150本ぐらいの長編映画を見ていますが、編集部には、その倍の本数を見ているスタッフがたくさんいます。
そんな映画通なスタッフたちの「押し映画」は、映画.com上で記事にしたり、予告編を流したり、スタッフ・キャストにインタビューしたりと、ユーザーの皆さまに見ていただくコンテンツになるわけですが、コロナ禍の中で映画館にも行けない中「もう、直接ユーザーに本編を届けるのもアリじゃね?」ってことで、実施したのが昨年11月から行った「映画.comオンライン特別上映会」です。
全部で8回行ったのですが、これが思いのほか好評で「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」などは、お代わりリクエストに応えて2回も実施しました。そんなに喜んでもらえるなら、48時間の期間しか見られない「特別上映会」じゃなくて、もう常設の「オンライン映画館」にしちゃおうということで、シネマ映画.com開設に到った次第です。
シネマ映画.comは、ストリーミングの配信サービスですが、「オンライン上の映画館」というコンセプトなので、「スクリーン」ごとに作品を編成します。まずは「プレミアムスクリーン」「スクリーン1」「スクリーン2」と3種類のスクリーンを用意しました。
「プレミアムスクリーン」は、劇場公開からあまり日数が経過していない新作映画が中心です。鑑賞料金も1100円〜1500円と、映画館とそれほど変わらないレベル。「スクリーン1」は公開後半年から1年ぐらい経ったものを集めました。料金は550円〜770円。そして「スクリーン2」は、エバーグリーンな名作群で、これは我々の選抜した「映画.com ALL TIME BEST」の1200本の中からおもに選んでいます。料金は330円〜550円。
2021年4月8日のサービスインから当面の間は、カンヌ映画祭を筆頭に、各国の映画祭などで話題を集めたインディペンデントの秀作を中心に編成していきます。映画館と同じように、毎週金曜日には新しい上映作品を加え、毎月20本ぐらいを更新します。
他の配信プラットフォームと違うところは、編集部のスタッフによるキュレーションで編成している点。編集部の「押し映画」ばかりが並んでいるので、どれをご覧になっても、映画のクオリティにご満足いただけるのではないかと自負しています。
最後に、シネマ映画.comは「都度課金」のシステムなので、月額会費などはいただきません。ご覧になる分だけチケットを購入して、世界の名作をご自宅でお楽しみください。
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi