コラム:細野真宏の試写室日記 - 第94回
2020年9月25日更新
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
試写室日記 第94回 アカデミー賞最多ノミネートは確実?「TENET テネット」をネタバレありで徹底解説!<3>
>1時限目「映画内で紹介されている仕組み」
>2時限目「登場人物の紹介と役割」
※本稿は9月28日にアップしたものに加筆修正を加え、最終版として12月21日に再度アップするものです。
では、最後の3時限目は、いよいよ「ストーリーの全貌」の解説をしていきましょう。
【ウクライナ】
最初の舞台はウクライナのオペラハウス。
満席の大ホールではこれから始まるコンサートの上演を待っていた。
ところが、そこにロシア人の「セイター」の指示によるテロリストが乱入し、会場に睡眠ガスを散布し、観客を眠らせる。
彼らの目的は、天井のVIP席の観客の1人が隠し持っている「プルトニウム241」の奪還。
「名もなき男」がいるCIA特殊部隊チームはそれを知っていて、待機していた。
そして「名もなき男」は天井のVIP席にいた協力者を救い出し、「プルトニウム241」を確保することに成功する。
ただ、偽装工作のため最前列に爆発物を仕掛けた状態で立ち去ろうとしていたことを知った「名もなき男」は、会場に戻る。
そして、会場の爆発物を取り除こうとしていたが、敵に正体がバレて、銃口を向けられて殺される寸前になる。
ところが、「逆行する銃弾」が敵に当たって助けられる。
「名もなき男」は何が起こったのか分からないまま振り返ると、「5円玉のようなものが付いた赤いヒモのストラップ付リュックサック」を持った人物が走り去る後ろ姿を確認することができた。
会場から出られた「名もなき男」は何者かに捕らえられ、線路の周辺で、仲間と共に歯を抜かれる拷問を受ける。
CIA産の自殺ピル(青酸カリウムのカプセル)を服に忍び込ませていたが、それを奪われ、機密情報を吐くように拷問が続く。
そして、何とか縛り付けられていた椅子から転んで自殺ピルを口に入れ意識を失ったところで、タイトル「TENET」が出る。
【船・研究所】
その後、なぜか「名もなき男」の意識が回復する。
そこは船の上で、一連の拷問は「テスト」であったことが伝えられる。
そして、その「テスト」に唯一合格した「名もなき男」は、「TENET」というキーワードを伝えられる。
船から降りた「名もなき男」が向かった研究所で、未来から送られてきた「逆行する弾丸」を含む様々な残骸を見せられる。
女性科学者から「これは第3次世界大戦から世界を救うためのもの」といった説明を受ける。
「名もなき男」は、その「逆行する弾丸」の成分を調べるように要請し、インド産であることを突き止める。
そして「名もなき男」は組織に電話をし、「(ある有名な)インドの武器商人に会いたい」と伝え、インドでの合流場所が決まる。
【インド】
そこに「ニール」(ロバート・パティンソン)が現れ、「名もなき男」と合流し「パートナー」となった。
2人は正攻法で武器商人に会うことを諦めて、直接インドのムンバイの武器商人の高層マンションに忍び込む。
そこで「TENET」のことを知るインド人女性「プリヤ」と出会い、武器をロシア人の大富豪の「セイター」という武器商人に売ったことを伝えられる。
ただし、売ったのは、あくまで「普通の武器」であったとのこと。
その「セイター」というのは有名人で、ロシアとは仲が悪くなっていて、今はロンドンにいることが知られていた。
そこで「プリヤ」は「名もなき男」に「セイター」のことを調べてほしいとお願いし、「名もなき男」は「プリヤ」にロンドンの情報通を紹介してもらう。
【イギリス】
「名もなき男」はロンドンで「マイケル・クロズビー卿」(マイケル・ケイン)に会い、「セイター」についての情報を聞き出し、どうすれば会えるのかを聞いた。
「セイター」本人と会うのは極めて難しいので、「セイター」の妻と親しくなって、妻に紹介してもらう形を提案される。
「セイター」の妻「キャット」は美術品鑑定士で、「セイター」と「キャット」が出会ったのは絵画のオークションの時だという。
ゴヤの絵画の贋作をトマス・アレポという画家が2枚描いていて、アレポと親しくなった「キャット」は、それがゴヤの絵画の贋作だとは気付けなかった。
そして、それを本物として「セイター」に高額で売ってしまう(「セイター」は贋作と知っていたが「キャット」の弱みを握って操りたいため購入)。
そのため、「キャット」は「セイター」からは何かにつけ「警察に詐欺で訴える」と脅されていて、「セイター」に従わざるを得ない状況下に置かれている。
そこで、もう一枚のアレポによるゴヤの絵画の贋作を「マイケル・クロズビー卿」が用意していて、それを「名もなき男」が「キャット」に見せる作戦で接触することに。
計画通り「名もなき男」は「キャット」に会うことができ、「キャット」が一番大切なものは自分の一人息子であることを知る。
だが、「セイター」からは贋作の絵画の件を脅され続けて、ほとんど息子と一緒にいることができずにいた。
そこで、「名もなき男」は信用を得るために、その贋作の絵画を盗み出すことで「キャット」を自由にすると約束する。
【オスロ空港】
「セイター」の絵画は、オスロのフリーポートの倉庫にありそうだ、と「キャット」から聞き出し、「名もなき男」と「ニール」はオスロ空港に向かう。
しかも、「セイター」は何度もこのオスロ航空の倉庫に行くため、何か大事なものがありそうで、図面を見ると中央部分の大きめな部屋が正体不明で怪しかった。
そこで、この謎の大きめな部屋に「セイター」の大事な絵画などのコレクションがあると推察した。
ただ、オスロ空港の倉庫のセキュリティ対策は万全で、一つ一つの部屋はそれぞれ独立していて、カギとパスワードでブロックされていた。
もし火事が起きたらガスが充満し部屋が燃えないようになっていて、監視員は10秒以内に部屋から飛び出さないと部屋に閉じ込められ息ができなくなることを知る。
そこで、「ニール」はボーイング747を乗っ取り、その突入によって大規模な火災を起こし、謎の部屋に侵入し「セイター」が保管するゴヤの絵画の贋作を持ち去る方法を考える。
しかも、飛行機の突入に目が向きにくくなるように、その飛行機が「金塊を運ぶ日」に決行し、大量の金塊を飛行機から落とすことにする。
そして、大規模火災によって倉庫がロックダウンし、パスワードが初期化されるなど計画通りにいった。
「名もなき男」と「ニール」はカギを開けパスワードを突破し、いくつかの部屋を抜けて謎の部屋に向かっていく。
やっと2人は「オスロ空港の倉庫」にある、謎の部屋に辿り着いたが、そこには絵画がなく、回転ドアの「時間逆行装置」が置いてあった。
「順行」と「逆行」の2つの部屋はセットになっていて、ガラスで仕切られている。
「名もなき男」が入ったのは「青い部屋」で、「ニール」が入ったのは「赤い部屋」。
そこで、2人は仕切られたガラスに、複数の「銃弾の痕」を見つける。
「ニール」は知らずに触ろうとするが、「名もなき男」が「ウクライナのオペラハウス」での件を思い出して触らせないように注意する。
その直後に回転ドアが動き、それぞれの部屋の「時間逆行装置」から、マスク姿で「防御スーツ」を着用した“2人”が現れる。
青の「逆行の部屋」にいる「名もなき男」は、その謎の人物と戦い、銃撃戦となる。
そこで、窓ガラスにあった銃弾の痕は「逆行する銃弾」によるものだったことが分かる。
一方の赤の「順行の部屋」にいる「ニール」も、もう“1人”の相手を追いかける。
「名もなき男」は、逆行する不可思議な動きをする相手の腕に鋭利なもので刺し負傷させ、銃口を突き付けるが、「ニール」が「殺すな。何か知っているはず」と止めに入る。
そのすきに、謎の人物はシャッターの外に吸い込まれるように消えていく。
「名もなき男」が「ニール」に「そっちの相手はどうした?」と聞くと、「ニール」は「始末した」と答える。
こうして想定外の事態に直面し時間が経ってしまい、「名もなき男」と「ニール」は部屋を移動したが、警備員らが火災を心配して駆け付けてきたので(何事もなく)ガスでやられ床に倒れているような演技をする。
コラム
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
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Twitter:@masahi_hosono