コラム:韓国の人がぶっちゃける、made in KOREA - 第8回
2011年8月23日更新
私がおばさんになっても
「韓国には、3種類の人が住む」と言われています。女性、男性、そして「おばさん」を意味する「アジュンマ」です。「アジュンマ」という生き物は、女性という分類に入りきらないくらい強い。市場での値切りパワー、地下鉄での座席確保パワー、家族内でのパワー。どれをとっても、「アジュンマ」に勝る生き物はこの世に存在しないだろうと思えるくらいです。韓国だけでなくどの国でも、「おばちゃん」は最強の存在と言われていることでしょう。
しかしすべての「アジュンマ」が生まれながらにして、「アジュンマ」になるわけではありません。女性に生まれ、思春期を迎え、いろいろな人生経験を経て、年齢とともに自然と進化するのです。今、「アジュンマ」の称号を持つみなさんも、70~80年代には多感な少女時代を過ごしたに違いありません。そこにはさまざまな甘ずっぱい思い出や、色あせないたくさんの記憶が残っていることでしょう。
今年最大のヒット作になるであろう映画「サニー」は、80年代を少女として過ごした「アジュンマ」たちのお話です。観客動員800万人超という今年の韓国映画史上最大の数字には、多くの思いが詰まっているのではないでしょうか。
先日、削除カットがいくつか追加された「監督版」が劇場公開されるなど、いまだに観客を逃さない大ヒット作と名高いこの作品。大半の人が気楽に笑えるコミカルな作りと、人生の教訓をもたらす感動要素。そして前回のコラムで触れた、韓国でのレトロブームと重なった絶妙なタイミングで公開されたこともあり、時代を反映した納得のヒット作といえます。母親連れで見に行った若者が多かったようで、「アジュンマ」が映画の大ヒットに貢献したことが伺えます。
とはいえ、「アジュンマ」パワー以上に私の目をひきつけたのは、おばちゃん出演者よりもむしろ少女役のシム・ウンキョンでした。映画「サニー」の魅力を、100%引き出した真の主役といって過言ではないでしょう。おばさん役と少女役のうち、どちらのキャスティングが先だったのかはわかりません。しかし演技力、表現力、魅力のどれをとってもベテラン女優陣に劣らない将来有望な役者が、今回のヒット映画を通して世間の注目を集めました。ぜひ、彼女が「アジュンマ」役をこなす日まで末長く見守りたいものです。
「若くて青くて美しい少女の時代ばかりが、女性の人生のすべてではない」というメッセージを投げかけた本作。私が「アジュンマ」になったとき、ウンキョンならばいくつになっても人生の中心に立って生きていけるということを、どこかで見せてくれることでしょう。