コラム:シネマ映画.comコラム - 第17回

2022年9月22日更新

シネマ映画.comコラム

第2回サステナブル未来映画祭開催!

本コラムの第17回目は、9月22日から10月10日までシネマ映画.comでオンライン開催中の「第2回サステナブル未来映画祭」(https://cinema.eiga.com/sustainable2022_2nd/)の配信9作品をピックアップし、同映画祭について紹介します。映画.comの駒井尚文編集長、編集部&スタッフの松村果奈、岡田寛司、飛松優歩、蛯谷朋実、和田隆にそれぞれの視点から配信作品の見どころやポイントなどをあげてもらいました。

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「サステナブル未来映画祭」は、“「映画」を通して、世界を知る。そして未来を想い、行動するとき。”と掲げ、持続可能な地球環境と子どもたちの豊かな未来のために、環境問題や社会課題をテーマにした新たな映画祭です。第1回が今年1月28日から2月10日まで開催され、大きな反響を呼び、好評を得ました。第1回は、スウェーデンの若き環境活動家として有名なグレタ・トゥーンベリの素顔に迫ったドキュメンタリー「グレタ ひとりぼっちの挑戦」ほか、地球温暖化、フードロス、プラスチック削減、Z世代の社会起業家たちなどをテーマにした全8作品を配信しました。

第2回は、オスカー3部門ノミネートの快挙を成し遂げた「FLEE フリー」(※9月23日配信開始)をはじめ、本映画祭先行独占配信のドキュメンタリー「ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して」ほか、日本における難民申請の課題や、途上国を舞台に成長し続ける貧困産業、ファッション産業やシーフード産業が抱える問題などをテーマにした全9作品を配信します。作品ごとにチケットの購入が可能で、PCやスマートフォンで鑑賞できます。※作品を視聴するには「シネマ映画.com」の会員登録が必要です。

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■「FLEE フリー」(9月23日より配信開始)

2021年製作/89分/G/デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フランス合作
原題:Flee

20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年アミンの姿をとらえたドキュメンタリー。主人公をはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、アカデミー賞で史上初めて国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門ノミネートを果たしました。また、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞しています。監督は自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセン

▼駒井編集長

最近、ドキュメンタリー作品にアニメ描写を組み込むという手法が増えています。理由としては、まず「描きたい出来事についての映像が残っていないから」「当事者が故人である」など、再現性の問題が上げられます。例えばあなたの家系に「その昔、曾祖父が素手で虎と戦って倒した」などという逸話があったとします。あなたがその出来事に半信半疑であれ、それはアニメで映像化可能です。そしてもう一つ、「主人公の身バレを防ぐため」という理由もあります。本作のように、タリバンから追われている主人公について描きたい。しかし、その住処や身体的な特徴が判明してしまえば、身辺に危険が及ぶ可能性がある。こうした場合、主人公をアニメで創作し、声優をあてることによって危険度は格段に下がるでしょう。そういう作り方をした本作は、今年度のアカデミー賞でドキュメンタリー部門と長編アニメ部門にノミネートされました。さらに、国際長編映画賞にも。ジャンルの垣根を越えた映画製作の手法に注目してご覧になってください。

「FLEE フリー」
「FLEE フリー」

■「マイスモールランド」

2022年製作/114分/G/日本・フランス合作

在日クルド人の少女が、在留資格を失ったことをきっかけに自身の居場所に葛藤する姿を描いた社会派ドラマ。是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の若手監督・川和田恵真が商業映画デビューを果たし、自ら書き上げた脚本を基に映画化しました。自身も5カ国のマルチルーツを持つモデルの嵐莉菜が映画初出演にして主演を務め、「MOTHER マザー」の奥平大兼が共演。第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に出品され、アムネスティ国際映画賞スペシャルメンションを贈られています。

▼岡田寛司

難民申請の不認定→在留資格の喪失。この事態によって、一体何が起きるのか。本作では、主人公・サーリャの日常を通じて、その実態を知ることができるでしょう。遊ぶ、学ぶ、恋をする、そして、未来を思い描く。これら全てが、たったひとつの出来事を契機に、根底から覆されていくのです。私たちが当たり前のように享受している普遍的な日常を、改めて見つめ直すきっかけにもなるはず。サーリャは、決して遠い国の人物ではありません。映画は娯楽の一種でもありますが、「現実を知る手段」にもなり得ます。「クルド人少女の青春物語」としても、非常に素晴らしい出来栄えではありますが、さらに、あなたが見ている“世界”を拡張させる可能性を秘めた作品となっています。2022年、この作品を見逃してはいけない――そう強く感じた1本です。

「マイスモールランド」
「マイスモールランド」

■「ポバティー・インク  あなたの寄付の不都合な真実」

2014年製作/91分/アメリカ
原題:Poverty, Inc.

途上国を舞台に成長し続ける貧困産業の実態に迫ったドキュメンタリー。営利目的の途上国開発業者や貧困産業が成長する一方で、先進国から一方的に押し付けられる援助により、受け手の途上国側の自活力が潰されているという実態がありました。貧困産業を取り巻くさまざまな問題に光を当て、援助のあり方を問いかけていきます。

▼松村果奈

善意の寄付が、途上国の経済活動を破壊していた――。そんなショッキングな事実を伝え、“途上国を救う”という大義名分で、開発を請け負う欧米の慈善団体や大企業がかつての植民地政策のように、現地の労働者から利益を搾取するようなシステムを構築していたことを明らかにするドキュメントです。セレブのチャリティも、例えばアフリカ諸国には実際は豊かな資源や労働力があるもののいつまでも貧しく飢饉にあえいでいるという印象を大衆に与え、自国で“余った”ものを押し付けることになっています。善意が余計なおせっかいとなり、施しを受ける側の自立を妨げることになるということを知り、何かアクションを起こすとき、その善意は自己満足ではないか?と立ち止まって考えることを促す映画です。

「ポバティー・インク  あなたの寄付の不都合な真実」
「ポバティー・インク  あなたの寄付の不都合な真実」

■「1日1ドルで生活」

2013年製作/56分/アメリカ
原題:Living on One Dollar

アメリカから4人の若者たちが中米グアテマラの田舎の貧困地域に赴き、実際に1日1ドルで生活して、貧困から抜け出す方法を探る実践ドキュメンタリー。通常のアメリカの若者にとって、この直面する現実は想像を絶することですが、世界中に貧困で苦悩する人々が存在するのです。

和田隆

大学の机の上で考えていてもわからない。ということでアメリカの若者4人が、中米グアテマラの田舎の貧困地域に行って、実際に1日1ドルで生活し、貧困から抜け出す方法を探ろうという試みの記録です。はじめは裕福なアメリカ人の学生生活の思い出作りではないかと、ちょっと疑って見てしまいますが、彼らはいたって真剣。節約するだけでなく、現地の人々と交流しながら、現金を生み出すためのビジネスアイデアも実践したりします。でも、寝泊まりする家での生活は予想以上に厳しく、ダニに刺されたり、空腹や腹痛に苦しみ、時に仲たがいしながら、貧困の現実にぶち当たります。そんな時、現地で比較的自立している家族の家に招かれ、彼らの視野は広がります。貧困から抜け出す効果的な方法のヒントみたいなものは見えてきますが、それよりも彼らの試みにより、貧困生活の現実を追体験できるような作品です。本映画祭で配信の他の作品で記録されている問題ともつながっていることがわかるでしょう。

「1日1ドルで生活」
「1日1ドルで生活」

■「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」

2018年製作/90分/アメリカ
原題:Ghost Fleet

東南アジアで「海の奴隷」として働かされている人々の救出活動を行うタイ人女性を追い、シーフード産業の闇に迫ったドキュメンタリー。2017年にノーベル平和賞にノミネートされたタイ人女性パティマ・タンプチャヤクルは、脅迫など数々の困難に直面しながらも、タイの漁船からインドネシアの離島に逃げた人々を救出するべく命がけの航海に出ます。

▼蛯谷朋実

秋の味覚サンマは手軽でおいしい魚でしたが、昨今は値上がりが激しくなかなか手を出せないと嘆いていました。ただ安くなればいいと願っていた私に右ストレートを放つ本作。

水産物産業が国の産業の大きな位置を占めるタイや東南アジア諸国でそれを支えているのは、「海の奴隷」と呼ばれる人々。職があるといわれて連れ行かれたのは、陸に降りることなく、叩かれながらただひたすらに漁を続けさせられる海の監獄。そこを出るには死ぬ以外にはないのではと思うような環境で、何年何十年も無報酬で働かされた人々の目はどこか深い深い悲しみが宿っています。目の前にあるものが一体どうやってここにたどり着き、なぜこの金額で買えるのか、世界的にみても安価でモノが買えるといわれている今の日本、そこに住む我々こそ、目を背けずに考えなければならない問題です。

「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」
「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」

■「グリーン・ライ エコの嘘」

2018年製作/97分/オーストリア
原題:The Green Lie

スーパーの店頭で目にする「環境にやさしい」商品に疑問を抱いた監督が、専門家と2人で世界一周をしながら「エコの嘘」の実態に迫っていくオーストリアのドキュメンタリー。ベルナー・ブーテ監督とグリーンウォッシングの専門家カトリン・ハートマンが最初に向かったのは世界一のパーム油生産量を誇るインドネシア。そこで2人が目にしたのは、かつての熱帯雨林だった土地が、パーム油農園拡大のために企業によって不法に焼き尽くされた姿だったのです。

▼飛松優歩

環境に配慮しているというイメージ戦略と、利益追求を両立するため、実に曖昧な基準で、商品に耳触りの良い言葉を並べる企業。そして、情報や選択肢の多さに惑わされ、嘘を鵜のみにし、商品を購入する消費者。まさに、環境問題に対して、日常レベルでできることをしようとした消費者の行動を、企業が利用しているのです。

本作では「グリーン・ライ」というタイトル通り、サステナビリティを謳い、「環境に優しい」イメージを抱かせる“緑”のパッケージに包まれた商品の、“真っ赤な嘘”を暴いていきます。断固とした姿勢で、サステナビリティの重要性を語る有名企業のCEOの言葉や、CMの美しい映像の直後に映されるのは、パーム油農園拡大のために焼き尽くされたインドネシアの熱帯雨林、石油掘削施設の火災が引き起こしたメキシコ湾の原油流出事故、露天採掘をするドイツ最大の炭鉱など、この世の終わりのような光景。嘘と欺瞞だらけで、見せかけの環境対策と決別しなければならない、と強く思わせてくれる作品です。

「グリーン・ライ エコの嘘」
「グリーン・ライ エコの嘘」

■「ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償」

2015年製作/93分/アメリカ
原題:The True Cost

大量生産・大量消費が問題視されるファッション業界の闇を浮き彫りにしたドキュメンタリー。バングラデシュで1000人以上の死者を出した縫製工場の倒壊事故をきっかけに映画制作を決意したアンドリュー・モーガン監督が、世界中のファッション業界をめぐる真実を探り、途上国での人権侵害や環境汚染の上に成り立って来たシステムに警鐘を鳴らすと同時に、人類が今後向かうべき未来を考察します。

▼松村果奈

今、あなたが着ている洋服はどこの国で作られたものですか? 安価なファストファッションが台頭し、例えばアメリカの場合、被服製造の97%を発展途上国に外注しているとこの映画は伝えます。2013年にバングラデシュでは裁縫工場が入るビルで、1000人以上が死亡する事故が起こり、カンボジアでは月給160ドルの最低賃金を求める労働者の暴動がおこり、警察に撲殺される悲劇が。世界的なアパレルブランドによる搾取と劣悪な労働環境が明らかになります。また、ファストファッションで用いられる服の原材料についても、インドでのモンサントの遺伝子組み換え綿種子ビジネスや安価な皮革工場から出る六価クロムによる環境汚染など様々な問題を取り上げます。安価な洋服が流通すればするほど、世界が貧しくなっている現状を分かりやすく解説してくれ、今着ている洋服を、どのような人がどのような環境で作っているかと考えさせられる一作です。

「ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償」
「ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償」

■「私は白鳥」

2021年製作/104分/G/日本

傷ついて北に帰れなくなった1羽の白鳥と、その白鳥に自身を投影するかのように見守り世話をする男性の交流を4年間にわたって記録したドキュメンタリー。2019年5月に富山のチューリップテレビで放送され反響を呼んだテレビ版に、2年以上の追加取材の映像を加えて映画化。テレビ版に続いて槇谷茂博が監督。天海祐希がナレーションを担当しています。

▼蛯谷朋実

翼の折れた白鳥、その存在は痛々しくもどこか美しく、手を差し伸べてしまいたくなる人も多いはず。そこで実際に手を差し伸べたのが、この映画の主役となる澤江さんです。自然淘汰の波を断ち切るような行為は果たしていいのかと憤る人もいるかもしれません。彼もその葛藤の中で、けれども過去に経験した悲しい現実を断ち切りたい思いと目の前で弱っていく白鳥と自分を重ね、手を差し伸べてしまうのです。人にはそれぞれの人生があり、白鳥にも様々な鳥生がある。正解なんてわからないけれど、彼の目に映る白鳥たちの美しさを見ていただきたい、そんな映画です。

「私は白鳥」
「私は白鳥」

■「ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して」

2021年製作/92分/G/フランス
原題:La panthere des neiges

チベット高地の過酷な自然の中でたくましく生きる動物たちの姿を捉えたフランス発のドキュメンタリー。世界的に知られる野生動物写真家バンサン・ミュニエと作家で地理学者のシルバン・テッソンが、手つかずの自然が残るチベット高原の野生動物保護区を旅する様子を記録。シルバンがつづるエモーショナルな言葉の数々を、バンサンが撮影する動物たちの愛らしくも力強い表情と大自然の雄大な風景で彩っていきます。

▼駒井編集長

今回の「第2回サステナブル未来映画祭」で、「どれか1本だけ見たいんだけど、オススメは?」と聞かれたら、私は迷わず本作を全力で推します。普通の旅行では、まず見ることのできないレベルのチベットの絶景。そして、そこに現れる野生動物たちの、時に可愛らしく、時に不気味な姿。映画の登場人物も語っていますが、まさに「魔法ののぞき穴から、野生動物を見ているような映画」なんです。フランス人クルーの芸術的かつ哲学的な、これまで見て来たものとはレベルの違うネイチャードキュメンタリーの傑作です。自然や動物への畏怖、撮りたい対象に対する渇望が見事にバランスしています。……痺れました。チケットは200枚限定です。どうか、この機会を見逃さないで。

「ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して」
「ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して」

今回も気鋭の映画作家が、世界の社会課題や地球温暖化問題などに鋭く切り込み、人々に問いかける優れた作品ばかりですので、この機会に是非ご覧ください。

>>【第2回サステナブル未来映画祭はこちら!】

筆者紹介

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