コラム:Celeb☆Graphy セレブ☆グラフィー - 第67回
2017年10月19日更新
【vol.67】“恩人” ハーベイ・ワインスタインのセクハラ騒動に男性スターたちの反応は…
ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ行為が報じられてから早2週間。事態は収束に向かうどころか、余波が広がるばかりです。被害を公表する女優たちは後を絶たず、その人数は45人以上にも上ります。そして非難の声は女性だけでなく、男性からも。今回は、セクハラや性的暴行に「NO」を突きつけた男性の中でも、ワインスタインとのつながりが強かったスターたちの反応にフォーカスします。
デイモンの盟友ベン・アフレックも、セクハラ疑惑が降りかかった1人。被害者の1人ローズ・マッゴーワンが、ワインスタインの行動の責任の一端はアフレックにあると名指ししたからです。アフレックは騒動に胸を痛めている様子で「姉妹や友だち、仕事仲間、そして娘たちをしっかりと守らなければならない。性的被害を告白した人たちをサポートし、権力のある立場に就く女性をどんどん増やしていくべきだ」とツイート。しかし、マッゴーワンは「うそつき」とまだまだ怒り心頭のようです。
ミラマックスの全盛期をけん引したロバート・ロドリゲス監督とクエンティン・タランティーノ監督も、“恩人”のスキャンダルを遺憾に思っている様子。ロドリゲスはDeadlineに声明を発表し、性的暴行とその隠蔽工作を非難しつつ、「職権乱用は非常に不愉快な行為。さいわいにも、彼は本当の権威がどんなものか、今わかりはじめたようだ」とフォロー。一方のタランティーノ監督は、そのショックを引きずったまま「胸の痛み、さまざまな感情、怒り、そして記憶を整理するためにもう数日ほしい」と正式な声明の発表を保留しています。
その影響は映画界だけにとどまりません。ワインスタインは民主党に多額の献金しており、政界とハリウッドの架け橋の役割も担っていました。そして、オバマ前大統領が声明を発表する事態に発展。「このような方法で女性を卑下する男性は、富や地位にかかわらず裁かれ、責任をとるべきだ」と特別扱いが許されないことを主張し、「私たちがみんなで、女子の社会的地位を高め、男子に礼儀や尊敬を教えることで文化を築いていったなら、将来こうした行為は廃れていくだろう」と政治家らしい提言。ちなみに、オバマ前大統領の娘マリアはワインスタイン・カンパニーでインターンシップ経験があるんです。国の元トップが声明を発表したことで、ワインスタインの顔の広さと影響力の大きさが再認識させられました。
最後に今回の騒動に奇妙な縁のあるウッディ・アレン監督の発言を見てみましょう。実は、告発記事を書いた記者の1人、ロナン・ファロー氏は、アレン監督とミア・ファローの息子(父親はフランク・シナトラ説もある)。アレン監督が養子の女の子たちに性的虐待を加えたと主張していることでも知られるジャーナリストです。
「誘惑のアフロディーテ」や「ブロードウェイと銃弾」でハーベイと仕事をしたアレン監督は、英BBCに対し、「巻き込まれた女性たちにとって悲劇だし、ハーベイ・ワインスタインは人生がめちゃくちゃになってかわいそう」。ワインスタインをかばうような発言が物議をかもしましたが、「かわいそうだと言うのは、彼は心の病んだかわいそうな人間だという意味のつもりだった」と後に弁明。さらに「これが魔女狩りのムードにつながるのは望まないはずだ。男性が職場で女性にウィンクしただけで、弁護士に電話して弁護してもらわなきゃいけないようなね」とチクリ。今回のスキャンダルがよりよい未来につながることを願っていました。
このほかにも、レオナルド・ディカプリオやライアン・ゴズリング、ベネディクト・カンバーバッチら多くの男性スターたちが、今回のスキャンダルについて声明を発表したり、ツイートしたりしています。どのメッセージも基本的に、セクハラ行為や性的暴力を非難し、被害を告白した女性たちの勇気を称えるという2本柱。そこへ、職権乱用に対する批判や、セクハラ行為を知らなかったことに対する後悔、状況改善への訴えといった要素がプラスされていました。内容はもちろんですが、コメントを発表することで「問題意識を持っていますよ」と表明する意味合いも大いにありそうです。
60~70年代に大人の社会に足を踏み入れ、セクハラは「当時の文化」と言い訳したワインスタイン。彼の凋落で、セクシャリティに関する「時代遅れ」が「罪」になったハリウッドでは、これまで絶対的に優位だった男性たちが、女性や性的マイノリティの地位向上にどれだけ貢献できるのか試されるのかもしれません。