師と仰ぐS・マーティンのコメディで川平慈英が19年ぶりに「僕を認めて!」 : 若林ゆり 舞台.com

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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第78回

2019年4月24日更新

第78回:師と仰ぐS・マーティンのコメディで川平慈英が19年ぶりに「僕を認めて!」

スティーブ・マーティンといえば、アメリカのコメディ界では右に出る者のいない鬼才。「サボテン・ブラザース」や「大災難P.T.A.」などで王道のコメディ演技をしているが、実は一癖も二癖もあるユーモアセンスを持った知性派で、脚本家、演出家としても活躍。そんな彼が舞台のために書いた傑作の1つが、日本では1997年と2000年に「ラパン・アジールに来たピカソ」の題名で上演された本作。今回、「ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~」として約19年ぶりに再々演!

これは、パリにあった実在のバー“ラパン・アジール”を舞台に、「若き日のピカソとアインシュタインがもし出会っていたら?」という発想から生まれた奇想天外なコメディだ。今回は、初演・再演でピカソとアインシュタインを演じた岡本健一川平慈英が19年ぶりに同役を演じるほか、Wキャストで三浦翔平村井良大が登板。しかも、相手チームが主役を演じる公演で、もう一方の2人は発明家シュメンディマンと“未来から来た訪問者”という別の役にも挑戦する。演出も初演・再演と同様、スティーブ・マーティンの盟友、ランダル・アーニー。19年ぶりにアインシュタインを演じる川平にとって、この作品は特別な存在なのだという。

撮影:若林ゆり 撮影:若林ゆり

「役者って『1つ1つの作品がすべて勲章』なんて言うけど、なかには自分が『やらかしちゃったな』と思う作品だってありますよ。でもこれは僕にとって、役者根性が試された作品でした。当時、僕に来るオファーはミュージカルが100%だったなか、非常に稀なストレート・プレイ。踊りにもタップにも歌にも逃げられない。僕はダンサーならぬ“顔(ガン)サー”の異名をとってますけど(笑)、顔で踊ることもできない。だからスティーブ・マーティンのセリフをひたすら信じて、あがき、もがいたことを覚えています。僕にとっては間違いなく、僕という俳優史上“ストレート・プレイ”カテゴリーの中で燦然と輝く“勲章”そのものなんです!」

その取り組み方は正しかった。なぜならこの作品に出てくるアインシュタインは、まさに「あがき、もがいている若者」だからだ。

「初演のとき悩んでランディ(ランダル・アーニー)に『どうやったらアインシュタインになれるのかな?』って訊いたんです。するとランディが『アインシュタインになろうなんてまったく思わなくていい。『僕を認めて!』というエネルギー満載で、もがきあがいている20代の君、そのままでいいんだ』って言ってくれたんです。『アインシュタインが見たいわけじゃない。ただ『なんとかして認められたい』と思いながらフルストットルで生きている若者の生きざまが見たいんだから。それはジェイ、君だろ』って。そう言われて鎧が脱げました。最初は『スティーブ・マーティンのこの世界、日本では誰にもわからないんじゃないか?』と思ったんですが、意外とお客さんが喜んでくださって、自信がつきました。だから再演はすごく楽しかった。『いままでにないストレート・コメディ・プレイとして、日本の演劇界でエポック・メイキングしてるんじゃないか』という自負と楽しみが生まれましたね」

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もう1つ、この作品が川平にとって“特別”な理由がある。それは彼が、マーティンを「師と仰いでいる」からだ。

「そうなんです! 僕がアメリカの大学に行っていた頃、コメディ番組の『サタデー・ナイト・ライブ』が大好きだったんですが、そのときのホストがスティーブでした。最初は『むむっ?』って感じで彼のおかしさが理解できなかったんですが、そのわかりにくさが面白くなってきた(笑)。ランディに聞いたらスティーブは『俺の笑いなんか誰もわからなくていいんだ』というスタンスでやっているんだって。普通できない。ウケるかウケないかっていうのは、コメディをやっていたらいちばん大事なところでしょ? でもスティーブは違うんです。この作品にも『冷凍笑い』というのが出てきますが、そのときは笑えなくても後から『ん? なんかアイツ面白かったな』って笑いが解凍されたら、スティーブとしては『してやったり』。僕はそういう姿勢がすごく好きで、映画も全作、むさぼるように見ました。とくにお気に入りは、彼が脚本も書いた『2つの頭脳を持つ男』。あの発想はすごい! 『ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ』の演技もクゥー、最高なんです! 真犯人の名前が思い出せないあの40秒! 普通だったら無言で40秒はもたせられません。僕は落ち込んだりすると見直してるんです。もう、みんなにも見てもらいたい!」

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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