コラム:若林ゆり 舞台.com - 第74回

2018年12月27日更新

若林ゆり 舞台.com

第74回:神田沙也加は当たり役、「キューティ・ブロンド」のエルとは真逆!?

初演から2年。この間には結婚もしたし、女優としても充実の経験を重ねている。今回の再演は、2年前とはどう変わりそう?

「それほど『変わった!』というところはないんですけど、引き出しの内容量として、少しだけこの2年の経験が加わったかもしれないですね。たとえば、結婚に憧れる気持ち。幕開けでみんなが『わー、結婚する結婚するー』って騒いでいるんですけど、そのときに『結婚というものをすごく嬉しく思う気持ち』は、より現実的に実感できる気がします。私はこの初演が終わる頃に結婚を発表したんですが、最後にカンパニーのみんなが祝ってくれたのが、本当に『キューティ・ブロンド』みたいだったんです。芝居の中でも『おめでとう!』って言ってくれて、ステージの外でも『おめでとう!』って言ってくれて、舞台と現実がガチッとリンクして。あれを知っているということが、もっと活かせると思います」

撮影:若林ゆり
撮影:若林ゆり

さて、ここで舞台女優としての神田の足跡を振り返ろう。初ミュージカルは赤ずきんちゃんを演じた「イントゥ・ザ・ウッズ」。

「あのときは全然『ミュージカル女優をしよう』とは思っていなかったんです。舞台で演じているときも、恐いものが何もなかったんですよ。あの17歳のときは。むしろ冷静にお客様の反応を見ている余裕さえあって。『次はどんな風に芝居を変えてもっと笑わせてやろうか』とか、企みがすごくあったんですよね。いまはそんなこと、恐くてできない(笑)。無知っていうのは強いですねー(笑)」

舞台版「風と共に去りぬ」を見て以来、大地真央に憧れてきた。そして2018年、大地真央の当たり役だった「マイ・フェア・レディ」のイライザを経験した。

「この役を真央さんを通して見たときに『本当に、なんてかわいい!』と思ったんですね。『いつかやれたら』とは思っていましたが、こんなに早く叶うとはまったく予想外で。それまでの自分にとってはご褒美みたいな機会でしたし、これからの自分にとっては『もっとがんばらなきゃ』って思う機会で。ターニング・ポイントになったな、と思います」

初演の舞台より。撮影:若林ゆり
初演の舞台より。撮影:若林ゆり

舞台女優として勢いがついたのは、「アナと雪の女王」でアナ役の吹き替えをしてからではないだろうか。これまで、とくに舞台では「やりたい」と願った役を次々に手にしてきた神田。彼女にとって、いまの夢とは?

「確かに私、やることが決まってインタビューを受けるときに、何でも『やりたかった!』と言っている人なんじゃないかと疑われるくらいに(笑)、やりたい役が叶ってきています。エルは逆に、やりたいとは浮かびもしなかった役なんですけれどね。『マイ・フェア・レディ』が終わったとき、考えたんです。イライザは私にとって『やりたい役のラスボス』みたいなものだったので、『じゃあ次は何の役をやりたいですか?』と言われたときに何て言おうかと。それで、具体的な役を挙げるのではなく、『自分が見たことがなかったり、知らない役と運命的な出会いを果たしたい』という夢にシフトチェンジをしようと思ったんです。私もなかなか海外まで足繁く舞台を見に行けていませんし、これから来る新作などで、プロデューサーさんや観客の方が『これを神田がやったらはまりそうだ』と思っていただくというのが役者にとって価値のあることだと思うんですね。だから次は、『まだ見ぬ役と、本当に出会うべくして出会った!』ということを期待してがんばります!」

「キューティ・ブロンド」は2019年2月11~28日 シアタークリエで上演される。以後、大阪ほか全8都市でツアー公演あり。詳しい情報は公式サイトへ。
 https://www.tohostage.com/cutieblonde/

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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