コラム:若林ゆり 舞台.com - 第67回

2018年5月10日更新

若林ゆり 舞台.com

第67回:不器用な「アメリ」に共感しまくりの渡辺麻友が、初ミュージカルで殻を破る!

ミュージカルにおける演技については?

「私はまだ役を深く掘り下げて演じていくのが得意ではありませんが、(演出の)児玉明子先生がそんな私にわかりやすく、事細かに教えてくださっています。たとえば台詞の中で“パリ”という言葉が出てくるとしたら、その“パリ”というものに対してアメリが持っている気持ちというか、記憶というか。そういう背景をふまえた上で、その言葉への気持ちを込めるものなんだって。“ああ、なるほど”と思いました。そんなところまで自分では考えられていなかったので。1人の人間を自分の中に作ってなりきるということを、深くやっていかなきゃ、と思っています」

もともと渡辺は、かなり熱烈なミュージカル・ファン。しかしミュージカルと出合ったのは、さほど昔のことではない。

「私は舞台を見ることが全然なかったのですが、2011年に宝塚を見て、初めて舞台に触れたんです。それまで見てみたいとは思いながらも、なかなか行く勇気がなくて。たまたま姉と話していたときに姉も行きたいと言うので、2人で行くなら心強いなと。それで朝、東京宝塚劇場の当日券窓口に並んで、2階の最後列から見たのが、蘭寿とむさん主演の『ファントム』。そこからドはまりしました。とにかく美しいし、あの非現実的な世界観に浸れる感覚が、たまらなく好きになりました。そうして宝塚ファンになってから2、3年後、今度は帝国劇場の『レ・ミゼラブル』を見る機会があって。さらに衝撃でした! 台詞のすべてが歌でつながっていくという作品を観るのも初めてでしたし、胸を打たれて“なんなのこれ!?”と(笑)。そこからいろいろミュージカルを追いかけるようになって。『ミス・サイゴン』と『キンキー・ブーツ』はとくにお気に入りで、ブロードウェイまで見に行きました」

稽古場で。
稽古場で。

では、ミュージカルへの出演は夢だった?

「いつかミュージカルをやってみたいとは思っていましたが、それほど近い将来とは思っていなくて。もっともっと修行を積んで、10年後とかのイメージだったんです。だから『アメリ』のお話しをいただいたときは驚きました。もちろん、いつか叶えたい夢ではあったのでほんとうに嬉しかったです。それが1年半前くらいで、まだまだ先だと思っていたんですけど、だんだん近づくにつれて“これは大変なことだ!”と焦ってきました(笑)」

渡辺にとっては、WOWOWで福田雄一監督のミュージカル・コメディ「トライベッカ」「グリーン&ブラックス」でミュージカル俳優たちと共演した経験も大きかった。

「とくに『トライベッカ』は、私の人生の中でもめちゃくちゃターニング・ポイントです。一流ミュージカル俳優のみなさんとご一緒して、改めてそのすごさを実感することができました。歌もダンスもお芝居もお上手だと知ってはいましたが、現場での要求にすぐ対応して、すぐ100%でお届けできる力があまりにもすごくて。“なんてすごい人たちなんだろう、この方たちに比べて私は何もできない”と、もう消えたくなるほど、どん底まで落ち込みました。あれがあったから私はいま、がんばれているんだと思います」

個性豊かな共演者たちと渡辺(最前列左から2人目)
個性豊かな共演者たちと渡辺(最前列左から2人目)

この秋には次のミュージカル作品「シティ・オブ・エンジェルス」への出演も決まっている渡辺にとって、この「アメリ」は記念すべき第一歩。自分自身が舞台との出合いで「目から鱗」の経験をしたように、1人でも多くの人が「アメリ」で舞台に出合ってほしい、と願っている。

「私自身もなかなか舞台を見に行こうと一歩を踏み出すのが難しかったんですけど、踏み出してみると新しい世界が広がりました。舞台を見ることで新しい感情を受け取ったり芽生えさせたりできるし、新しい感覚を得られると思うんです。だからぜひ、1人でも多くの方にこの作品でミュージカルに触れてほしいと思います。とくにこの作品は、周りと馴染めなかった女の子が、周りを幸せにしていくことによって世界と調和が取れたような感覚を得て、自分自身もみんなもハッピーになっていく。それがすごく温かくて素敵なんです。私も今回、アメリみたいに人とつながることで自分を変えられたら、アメリみたいに誰かをハッピーにすることができたら幸せだな、と思っています」

アメリ」は5月18日~6月3日 天王洲銀河劇場、6月7~10日 森ノ宮ピロティホールで上演される。詳しい情報は公式サイトへ。

http://musical-amelie2018.com

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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