コラム:若林ゆり 舞台.com - 第41回

若林ゆり 舞台.com

第41回:大人計画のぽちゃカワ俳優、皆川猿時が「あぶない刑事」におもしろオマージュ!

皆川猿時が故郷の福島県を出て役者を目指したのは、おニャン子クラブ渡辺美奈代に会いたかったからというのは有名な話。東京乾電池の研究生になったが、劇団員に残れず苦労していたころ、大人計画の舞台に衝撃を受けて入団を決意する。そのときのオーディションについて聞くと、細かいところまでよく覚えていた!

「水着審査っていうのがあったんですけど、そのときSMの女王様がいたんですよ、女性の受験者に。その人が、すごい高熱を出していたみたいでフラフラなんです。で、自己PRが終わって水着審査になりまーす、ってときに『すみません、水着忘れました』って言って、服を脱いで下着になったんですね。そのとき黒い下着だったっていうのをすんごい覚えてます(笑)。『やっぱ水着と下着って違うんだな』って思いましたね。『水着の方がいいな』って。あとダンスの審査があって、演歌をかけるから自由に踊ってくれっていうのだったんです。僕、そのオーディションの前に初めての海外旅行でタイに行って、現地の人と仲よくなったんですね。その人が『俺のセクシーダンスを見てくれ』って言ってずっと踊るんですけど、それが全然セクシーじゃない。スローモーションで、最終的にポーズを取る、みたいなので。面白いなぁと思ったので、それをやりました。僕1人だけ動いてない、みたいな(笑)。それはすごく覚えてますね」

合格したのはよかったが、入団してからずいぶん長い間「自分はどういう風に面白くなるべきなのか」がわからず思い悩んだという皆川。松尾スズキに「何でお前のこととったかな」と直接言われたこともあったとか。

「『ヒドいこと言うなあ』と思いましたけど、自分でもどっかで『そうだよな』って思いましたからね。まだ眉毛の手入れとかしてましたもん。まだどっかでカッコよくなれるんじゃないかっていうのがあったんでしょうね。面白くなるよりカッコいいのを追う比重が多かった。面白くなるためにはどうやったらいいのかがわからなかったもんですから」

そんな皆川に、大きな転機が訪れる。それこそ宮藤官九郎が与えた、「グループ魂」のMC・港カヲルというキャラクターだった。

「最初は僕ともう1人が、『キング・オブ・コメディ』ってコンビを組んでいる浅草の芸人っていう設定だったんですよ。それがグループ魂の前座でコントをやる、みたいな。それもすごくダンディな人っていう設定だったんです、港カヲルは。それがちょっと下品なことを言う。それがね、しょっぱなから、ものすごく受けたんです。自分の手柄じゃなくて、宮藤さんが書いてくれたキャラクターやセリフが面白いんだなってことはわかってたんですけど。こんなにダイレクトに笑ってもらえるのは初めてだったんで。それくらいから図に乗り始めたんじゃないですかね(笑)。まだ当時は痩せていたんです。それが宮藤さんに『太れ、太れ』って言われてだんだん太っていって、吹っ切れたら、もうカッコつけることもないから訛りも丸出しになって。ダンディ設定もどっか行っちゃって、ただ下品が残っちゃいました(笑)」

港カヲル役でまさに「水を得た魚」となった皆川猿時が、面白さにどんどん拍車をかけていったのはご存じの通り。どんどん進化する面白さの秘訣はどこにあるのか?

「やっぱりこの声の大きさと、無駄な動きですかね(笑)。本当によくないなとは思うんですけど、大声出しときゃなんとかなるって思ってるんですよ。で、ダメなときは2回言う。それでもダメだったら大きく動くっていうね(笑)。それはもう、テクニックとかじゃないですから。それを何歳までできるのかっていうところですよね。ほんとは僕、そんな人間じゃなかったんですよ。最近気づいたんですけど、僕、カワイ子ぶるんですよ(笑)。大声で二度言う、大きな動き、っていうそこに、さらに足されてきたんです、カワイ子ぶるってのが。なんだかゾッとしますけどね(笑)。45歳なのに、もっと落ち着けばいいのにって思いますけど、それだと面白くないし。まあ、なんとかいま自分がやっていけてるのは、このキャラを作ってくださったみなさんのおかげだなって思っています」

「あぶない刑事にヨロシク」は下北沢本多劇場で4月14~24日上演。詳しい情報は大人計画の公式サイトへ。
 http://otonakeikaku.jp/2016abunai/

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。