コラム:若林ゆり 舞台.com - 第21回
2014年12月22日更新
第21回:佐々木蔵之介が「ロンドン版 ショーシャンクの空に」で劇場に奇跡を起こす!
この世界で映画ファンから最も愛されている映画の1つ、それが'94年に感動の嵐を巻き起こした「ショーシャンクの空に」。映画雑誌やサイト、ファン投票などでオールタイムベストが発表されるたびに、必ず上位(多くの場合、1位)に位置していることでも明らかだ。この映画と原作(スティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」)を同じくするロンドン発の舞台「ロンドン版 ショーシャンクの空に」にアンディ役で主演する佐々木蔵之介にとっても、「やってみよう」と思ったきっかけは「知ってる!」ということだった。
「まずいちばんのきっかけは、戯曲にとても魅力を感じたことでした。そして次に、映画でも多くの方が知っている作品だからこそ、やってみたいと思ったんです」
その言葉の根底にあるのは、佐々木が演劇を始めたころから抱き続けている「もっとみんなが演劇に目を向けてくれたら」という思いだ。
「僕は大学のときに演劇サークルに入ったんですね。一度大学をやめて、入り直した大学でサークルのオリエンテーションがあって、新入生歓迎公演をやっていると言われて。それを観て、『どう?』って誘われたんでふらっと入ったんです(笑)。入ってみたら1人でやるものではないので、みんなと一緒にやってて『面白いなあ、演劇って』と思った。でも、どこかで演劇はマイナーな世界だとも思っていました。公演のチケットを手売りで友人に買ってもらうんですが、軽音部だとカッコイイ! って感じですが、演劇となるとなんだか難しそう…みたいな(笑)。今回の作品は映画でも多くのファンを持つ作品で、初めて演劇を見ようかなというお客様にも間口は広く入りやすいかなと。だからぜひ参加したいと思いました」
ストーリーはもう説明する必要もないだろう。無実の罪でショーシャンク刑務所に投獄された元銀行家のアンディが、“調達屋”レッドの協力を受けながら、強い信念をもって静かな闘いを続ける。
「アンディは20年近く、刑務所の中で人として扱われないなかでも、希望の火種を人知れず灯し続けてきた。その抑圧をはねのけて痛快なラストが待っています。そこが本当に面白い。アンディが希望を捨てずにいられたのは、國村隼さんが演じられるレッドという男の存在も大きかったと思います。アンディの諦めない強靭な精神が、囚人たちや刑務所内部の環境も変えていった。そういう人と人との関係で、20年近くにわたって変わっていくものも見えればなあと思います」
映画とは違う、舞台ならではの表現だと感じるのは「言葉」だという。
「映画を観たときは、アンディはあんまりしゃべっていないと思ったんですけど、今回の台本を読んだらけっこうしゃべってるんですよ。あ、セリフ多いなと(笑)。そりゃそうですよね、演劇は話してナンボ、ですもんね(笑)。やっぱり言葉。雰囲気とかではなく、演劇は言葉が大切なんだなと思いました。セリフそのものに力があるんです。製作発表ではプレッシャーがあるようなことを言いましたけど、それはいつもと同等の、舞台に立つことのプレッシャーであって、映像化した作品を舞台化するというプレッシャーはほとんどないですね」
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka