コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第36回
2015年10月5日更新
第36回:元気な魔女たちが楽しい「リトルウィッチアカデミア」 作品の成り立ちにも注目
2013~14年にかけてテレビ放送された「キルラキル」や今年4月からニコニコ動画などで配信された「ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン」といった話題作を送り出している気鋭のアニメーションスタジオ・TRIGGER(トリガー)のオリジナル劇場用作品「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」が、10月9日から2週間限定で劇場公開されます。この作品、成り立ちがちょっと変わっていて、内容も含めて面白い一作です。
物語の舞台は、ヨーロッパの魔女育成名門校「ルーナノヴァ魔法学校」。主人公のアッコは、幼い頃に見た魔女シャイニィシャリオに憧れて同校に入学したものの、いまだホウキにも乗れないばかりか、なにかと騒動を起こしてばかり。罰としてルームメイトのロッテ、スーシィと一緒に、街で行われる毎年恒例のパレードに参加させられることに。しかし、そのパレードは魔女狩りの様子を再現するというもので、魔女の扱いに納得のいかないアッコは、どうせやるなら魔女の良さをアピールするド派手なパレードにしようと計画を進めるが……。
制作会社のトリガーといえば、物語の展開や作画がダイナミックで熱い作風が特色。今作に関しても、主人公のアッコがとにかく勢いがあって元気いっぱい。動きが大きくケレン味にあふれた作画も、アニメならではの楽しさにあふれてます。黒いとんがり帽子でホウキにまたがるという、「ハリー・ポッター」以上にストレートな魔女像やファンタジーな世界観も逆に新鮮で、そんな世界で元気に動きまわるキャラクターたちが愉快な一作です。
今作は、2013年に文化庁の若手アニメーター育成事業「アニメミライ」で発表された短編「リトルウィッチアカデミア」の続編になっています。続編といっても、今回の劇場公開では、前作の短編も同時上映されるので初見でも全く問題ありません。
「アニメミライ」は、文化庁主導で2010年から行われている若手アニメーターの人材育成事業。毎年公募でアニメーションスタジオ4社が選定され、選ばれた各社は若手アニメーターをスタッフに起用し、それぞれ短編アニメーションを制作するというもの。完成した作品は劇場での上映やテレビ放送などで発表されています。初年度は「プロジェクトA」、11年度から14年度までが「アニメミライ」という呼称で行われ、15年度から新たに「あにめたまご」という名称にリニューアルされましたが、事業内容の基本路線は同じです。
「リトルウィッチアカデミア」は、12年度の同事業(アニメミライ2013)で発表された作品です。11年に設立されたばかりのトリガーが制作し、実力派アニメーターとしてアニメファンに知られている吉成曜が初監督。13年3月に他のアニメミライ作品と一緒に劇場で公開されました。
アニメミライで制作した作品は、著作権が個々の制作スタジオに帰属することになっており、トリガーはその後、期間限定で「リトルウィッチアカデミア」本編をまるまるYouTubeで無料公開。すると、日本はもとより、海外のアニメファンからも注目を集め、続編を望む声が多数寄せられました。
そこで、続編の製作資金を米クラウドファンディングサイト「Kickstarter」を通じて募ったところ、世界各国のファンから資金が集まり、目標金額の15万ドルはわずか6時間で達成。1カ月で目標金額の4倍となる総額62万5518ドル(約7400万円)を集めるに至りました。
官庁の人材育成事業をきっかけに生まれた作品が、ネットの無料配信で広く知られ、クラウドファンディングという手法を用いてファンに支えられて大きく育っていく――こんなかたちで作品が生まれていくというのも、なにかいまの時代らしくて面白いと思うのです。せっかくなので、「リトルウィッチアカデミア」には、今回の劇場版だけに終わらず、もっと続いてほしいと個人的に願うところです。
ちなみに、「アニメミライ」で制作された作品のうち、その後の続編展開までつながっていった作品としては、今春にテレビアニメ「デス・パレード」として放送された「デス・ビリヤード」(「リトルウィッチアカデミア」と同年のアニメミライで発表された1本)があります。
また、クラウドファンディングで製作が決まった劇場アニメといえば、来年公開を目指して製作が進む「この世界の片隅に」もあります。こうした従来にないかたちで作られていく作品が、今後も増えていくのか注目したいですね。
■「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」
2015年/日本
監督:吉成曜
声の出演:潘めぐみ、折笠富美子、村瀬迪与
10月9日から2週間限定公開
⇒作品情報