コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第1回

2012年7月13日更新

編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番

第1回:細田守監督のホップ、ステップ、ジャンプ

今月から編集部が気になるアニメーション作品を毎月紹介していきます。

ひと昔前までは、劇場公開されるアニメといえば、「ドラえもん」や「コナン」「クレヨンしんちゃん」「ポケットモンスター」に代表されるような、少年コミック原作の定番アニメの劇場版や、宮崎駿監督(スタジオジブリ作品)といった一部の大物監督の大作が大々的に全国ロードショーされるほうが目立っていましたが、昨今、情勢はかなり変化しているように思います。

文字通り待望の細田守監督最新作
文字通り待望の細田守監督最新作

いわゆるODS作品として、映画ではなくOVAやTVシリーズとして製作された作品を先行上映する(最近では「機動戦士ガンダムUC」「宇宙戦艦ヤマト2199」など)形態が増えたこともありますし、数十館程度の小規模公開で高稼働を記録し、成功を収める作品が増えてきたことも背景にあるでしょう。

そうしたことも踏まえ、劇場公開される多数のアニメーション作品の中から、ぜひ注目したい作品をピックアップしてお届けしていきます。

前置きが長くなりましたが、第1回の今回は、細田守監督の最新作「おおかみこどもの雨と雪」です。

細田監督といえば、映画ファンには「時をかける少女」「サマーウォーズ」でおなじみ。宮崎監督らに続く、日本を代表する新世代のアニメ監督として注目されているクリエイターです。東映アニメーションでアニメーターとしてキャリアをスタートさせ、その後、演出方面へ転向。1999年に東映アニメフェアで公開された20分の短編「デジモンアドベンチャー」が劇場監督デビュー作となり、翌年の「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」は、インターネット上に出現したデジモンがコンピュータを暴走させるという時代の先端を行く内容で、子ども向けアニメながらもクオリティの高さが話題に。この頃から業界人や批評家、目の肥えたファンに注目される存在となりました。

その後、「ワンピース」劇場版の監督を経て、06年に「時をかける少女」を発表。テアトル新宿を中心にわずか6館の小規模公開で、大々的な宣伝活動もなかったにもかかわらず口コミで評判が広がり、最終的には上映館数のべ100館、約40週のロングランとなりました。この作品で細田監督の存在が広く認知されたと思います。

おてんばな雪と引っ込み思案な雨 どちらをとっても愛らしさ満点
おてんばな雪と引っ込み思案な雨 どちらをとっても愛らしさ満点

09年にはワーナー・ブラザース映画配給の下、「サマーウォーズ」を約130館で全国公開。少年少女が体験するひと夏の出来事や、ネット上で発生した問題が現実社会の脅威となるという内容は、「デジモン」や「時かけ」を経た細田監督の当時の集大成ともいえる作品でした。さらに、監督にとって初のオリジナル長編作という大きなチャレンジでしたが、国内外で多数の映画賞を受賞するなど高い評価を受け、観客動員126万人、興行収入も16.5億円と成功を収めました。

新作「おおかみこどもの雨と雪」は、「時かけ」から3作連続となる脚本・奥寺佐渡子、キャラクターデザイン・貞本義行とのタッグ。制作にあたり、新たにアニメーションスタジオ「スタジオ地図」も設立。「時かけ」や「サマーウォーズ」が少年少女のごく限られた時間の物語だったのに対し、今回はこれまでになかった「母と子」というテーマに挑戦。さらにその母子の13年間におよぶ時間を丹念に描いています。一見すると長いような13年という時間が、2時間という映画の時間の中でごく自然に流れ、それだけの年月を描くからこそ、より大きく感じられる母親の愛、子どもの成長、人生の岐路といった、誰もが経験する普遍的な人生のテーマを見事に描いています。細田監督がまた一段ステップを上り、新たなステージに達した作品といえるでしょう。

ちなみに、タイトルにもなっているおおかみこどもの雪(お姉さん)と雨(弟)の幼少期は、“キュン死”間違いなしの愛らしさ。序盤は、そんな2人のかわいらしさに目を奪われつつも、後半ではいつの間にやら成長して大人になっている2人にハッとさせられるのも見どころです。

細田監督が描く母子の絆に注目です
細田監督が描く母子の絆に注目です

配給は、スタジオジブリ作品も手がける日本最大手の東宝。すでに30以上の国と地域での公開も決定し、6月下旬にはパリでワールドプレミアが開かれるなど、注目度はワールドワイド。「時かけ」でホップ、「サマーウォーズ」でステップ、そして本作でジャンプとさらなる飛躍を期待したいところです。

もう8年も前になりますが、04年に宮崎監督の「ハウルの動く城」(細田監督が手がける予定でしたが頓挫し、宮崎監督作に)、押井守監督の「イノセンス」、大友克洋監督の「スチームボーイ」が同年に公開され、アニメ映画の3巨匠がそろい踏みということで話題になったことがありました。監督の名前が大々的に取り上げられる、監督の名前で観客が呼び込める……そんな存在といえば、現在は細田監督や「カラフル」の原恵一監督、そして今年新作が公開される神山健治監督などでしょうか。

新世代監督たちの筆頭・細田監督の「おおかみこどもの雨と雪」は、この夏必見の一作です。

筆者紹介

映画.com編集部のコラム

映画.com編集部・あさかよしあき。編集部のアニメ好き。若手女優やアイドルのチェックにも余念がない。もちろん普通に映画も好き。

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