松江監督&マエケン、“震災後の東京”で強固な信頼構築
2011年10月26日 13:49

[映画.com ニュース] 第24回東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門に出品された「トーキョードリフター」が10月25日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで公式上映され、松江哲明監督、主演したミュージシャンの前野健太が舞台挨拶に立ち、作品に込めた思いを語った。
松江監督は、前野のゲリラライブの様子を74分間ワンカットで撮影した前作「ライブテープ」が、第22回東京国際映画祭の同部門で作品賞を受賞。2度目の出品となった「トーキョードリフター」は、東日本大震災後の明りが消えた東京を前野がさすらい、今の街の表情を鋭くとらえた。ヘッドライトの明りや雨に濡れた街を目の当たりにすることで記録した映像では、日常の風景でありながら、これまでに見たことのない東京の姿が鮮やかに浮かび上がる。
震災発生時に韓国の映画祭に参加していた松江監督は、「日本に戻ってきたら韓国に行く前とは明らかに違っていて、東北だけではなく東京も被災地だと思ったんです」。しかし「そんな街の暗さがどこか魅力的に見えて、東京の暗さを肯定したかった」という思いから、製作に踏み切った。
わずか7人のスタッフで新宿、明大前、井の頭通り、渋谷、中野、埼玉・川口と各所をまわり、日没から日の出までの一晩で撮影を敢行。オートフォーカスを採用し、明るさを取り戻す前の“今の東京”を映し出すことに徹底的にこだわり、「描けるギリギリのものを集めた」作品に仕上げた。
前作に続きタッグを組んだ前野は、震災後の東京を描いた本作は「歌の聞こえ方に抵抗があった。でも(震災後の)こういう街で自分の歌がどう響くのかを見てみたい気持の方が強かった」と吐露。「当日は体調も悪くて、やりたくない気持ちが強かった」と複雑な心境で撮影に臨んだようだが、客席で松江監督とともに本作を観賞し「撮影しているときは本当にひどい人で嫌いだと思ったけれど、見終わって握手をしたくなった」と完成の喜びとともに、松江監督への信頼を語った。
前野の言葉に笑顔で耳を傾けていた松江監督も、「『ライブテープ』での信頼関係があったからこそ、今回壊すことができた」とこたえ、「東京国際映画祭は小さい映画を見つけて広げてくれる。ここからがスタートだと思うので、最初に生まれた場所がここでよかった」と感激しきり。次回作は「撮るとなったらまたこのメンバーですね」(松江監督)、「このメンバーじゃないとやれないです」(前野)ときずなの強さを見せた。
「トーキョードリフター」は、12月10日から全国で公開。同作の公開を記念し、「松江哲明 グレイテストヒッツ1999-2011」が11月19日~12月9日に東京・オーディトリウム渋谷で行われ、前作「ライブテープ」のメイキングドキュメンタリー「ライブテープ、二年後」をはじめ、全18作品が特別上映される。
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