落下の解剖学のレビュー・感想・評価
全253件中、61~80件目を表示
夫婦がライバル関係であることの難しさ
作家として成功している妻、作家になりたいがなれていない夫。そう考えると妻が夫を殺すのはないなあ。殺す理由がない。仮に衝動的に怒りがこみ上げたとしても、人が人を殺すことはそう簡単なことではない。あの激しいやり取りを見ても妻が夫を殺す?ないなあ。逆ならばあり得るけど。
小説の題材にと夫婦のやり取りをこっそり録音する夫。あの大喧嘩も予め夫が予想していたものかもしれない。だから妻に不満をぶちまける。妻の反応、反論、その後の妻との激しいバトルも創作のヒント、題材にもなると考えていた可能性もある。間違いなく夫は行き詰まっていた。いや、壊れていた。大音量の音楽、プライドもかなぐり捨てた妻への挑発。毎日の生活に追われ、余裕のない生き方を強いられる夫にとって妻は妬ましい存在だったに違いない。しかも不倫までしていたんだから赦せないだろうなあ。子供に障害を負わせてしまったことへの負い目、自分の地元に妻を住まわせている負い目だってある。妻は自分を訪ねてきた学生とのやり取りの最中に大音量の音楽で邪魔をされても不快な表情を一つも見せていないんだよなあ。
視覚障害のある少年は冷静に父と母を見(感じ取っていた)、そして父の死について判断したと思う。
解剖学してない
タイトルに騙された。
もっと殺人なのか?事故なのか?このことの証明が全く出来てない。フランスらしい緩い裁判にしか感じなかった。アメリカの裁判ものではどんでん返しやサプライズがあるのだが、この作品は曖昧な結幕で事故か殺人かを問う話ではなかった。
夫婦喧嘩はUSBメモリに記録しておくとよいという話
落下の解剖学
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2024年3月5日(火)
パンフレット入手
交通事故が原因で視覚に障害のある11歳 ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)がピアノ演奏するシーンが印象的です。
残念なことにパンフレット内に説明がないため、以下の2曲を解説します。
1エンリケ・グラナドス作曲 スペイン舞曲集Op.37-5 アンダルーサ
グラナドスはスペイン生まれの作曲家。アンダルーサは代表曲のひとつ。スペインのフラメンコダンスのような情熱的メロディー
ピアノ曲ですが、クラシックギターで演奏されることが多い。
2.エンニオ・モリコーネ作曲 映画「ニューシネマパラダイス」(1988年)で使用された曲
美しく、優しいメロディー ピアノ曲に編曲されたものをダニエルは演奏している。
-----------------------
本編
ドイツ人のベストセラー作家サンドラ(サンドラ・ヒュラー)は自宅で学生からインタビューを受けていた。屋根裏部屋のリフォームをしていた夫のサミュエル(サミュエル・タイス)が大音量で音楽をかけ始める。サンドラは取材を中断し、また別の機会を、と学生を帰らせる。
サミュエルが生まれ育ったフランスの人里離れた雪山に佇む山荘。
サンドラは、教師の仕事をしながら作家を目指す夫サミュエル、11歳の息子ダニエル、愛犬スヌープの家族3人と1匹で暮らしている。
事件が発覚したのは、ダニエルがスヌープの散歩から戻ってきたとき。山荘近くの雪の上で頭から血を流し、横たわる父親に気づいていたのだ。ダニエルの叫び声を聞いたサンドラが駆けつけると、すでにサミュエルの息は止まっていた。
-------------------------
検視の結果、死因は事故または第三者の殴打による頭部の外傷だと報告される。事故か自殺か他殺かー殺人ならば、状況から容疑者はサンドラしかいない。サンドラはかつて交流があった弁護士のヴァンサン(スワン・アルロー)に連絡を取り、山荘にやってきたヴァンサンにすべては自分が昼寝をしていた間の出来事だと説明する。
ヴァンサンは「サミュエルは窓から落下して物置の屋根に頭部をぶつけた」と申し立てることに決める。さらに窓枠の位置の高さから、事故ではなく「自殺」だと主張するしかないと説明する。サンドラは「息子の目の前で自殺するはずがない」と異を唱えるが、半年ほど前、夫が嘔吐した際、吐しゃ物に白い錠剤が混じっていたことを思い出す。
捜査が進み、検察はサンドラを起訴する決断を下す。起訴理由を聞いて驚き、サンドラに「なぜ僕に黙っていたのかと」詰め寄るヴァンサン。サミュエルの死の前日、夫婦が激しく口論し殴り合う音声が、サミュエルのUSBメモリに残されていたのだ。
--------------------------
夫婦喧嘩の録音が再生される。サミュエルはサンドラを批判する。お前のせいで自分には執筆する時間がない。自分の小説の構想を奪われた。ダニエルが事故で失明しセックスレスになった時、お前は他の女性と不倫していた。話し合いにも応じてくれない。サンドラは激しく反論する。執筆時間は家事の合間にも作れる。小説のアイデアをもらうことも不倫もあなたの了承すみだった。書けないことを私のせいにしないで。激高しついに壁に投げつけ、サミュエルを殴打。リベラルな良識作家という外見をかなぐり捨てて、上から目線で夫を罵り、一切の妥協を受け入れようとしないサンドラの冷徹で強靭なエゴがサミュエルを圧倒する。
----------------------------
だがそれは夫婦の謎に満ちた関係が暴露されるとっかかりのひとつにすぎないのである。
裁判が始まると証人や検事から次々と夫婦の秘密や嘘が暴露され、彼らを知る人物の数だけ真実が現れる。審理は混沌を極め、真相が全く見えない中、
一度は証言を終えた息子のダニエルが「もう一度証言したい」と申し出る。ダニエルは自殺ではと。
はたしてその結果 -サンドラは無罪となった。最後に抱き合うサンドラとダニエルがそこにいた。
監督:ジュスティーヌ・トリエ
いいですね、フランス映画
どんでん返し物では無い、って触れ込みだけを念頭に観賞。吉と出るか凶と出るか…退屈せず法廷劇を楽しめた。
判決後のくだりいるかなぁ。なんとか2時間に収めてほしいわ。エンタメだけが映画じゃないって再認識させられた。
主観から客観への見事な転換
この作品の夫殺害の容疑をかけられた作家を演じたのは、サンドラ・ヒュラー。
彼女は、「ありがとう、トニ・エルドマン」というドイツ映画で、女性コンサルタントの役柄だった。気丈な面とエクセントリックな面のギャップがとても印象的だった。
この作品でも、そのエクセントリックな面は健在だ。
ドイツ人だから、フランス語は苦手なため、ほとんど英語で会話する。実はバイセクチュアルで、同性同士の不倫経験あり。作家として目が出ない夫の原稿をアレンジして、ベストセラー作家に昇り詰める。
法廷で次から次へと不利な証言が飛び出しながら、彼女は自分を偽らず素直に表現する。「ありがとう、トニ・エルドマン」と同じキャラに感動。
圧巻は、法廷で披露された、殺害直前の夫婦喧嘩の録音テープ。
うまくいかない自分をいつも妻のせいにする夫。貴方がだめなのはいつも人のせいにするから、とののしる妻。夫婦なら身に覚えがある平行線の感覚。法廷は客観性を失い、自我のぶつかりあいに豹変する。
アカデミー賞脚本賞受賞は、この夫婦喧嘩の迫真のやりとりに負うところが大きいのではなかろうか。
主観から客観への見事な転換は、視覚障害の息子の証言。一番冷静だったのが10代の少年いう驚き。
真実のカギを握るのは、飼い犬とアスピリン。そして母への切なる思い。あとは観てのお楽しみ。
見て損のない法廷劇&ワンちゃんの演技!
予想以上に、どっしりとした法廷劇。容疑者の弁護をつとめる弁護士役の役者さんの美しさと、容疑者の息子の盲導犬役のワンちゃんの演技力からも目がはなせなかった!何が真実で何が嘘か。それは結局、誰にもわからない。本人以外にしか。しかしだからこそ、余韻の残る映画。とにかく、観たあと、誰かと語り合いたくなります。観てよかった!
犯罪ミステリーというより裁判ドキュメント
前者を期待して行ったのですが、後者でした。
予告がね、滅茶苦茶煽ってきてたんで。なんか予告が良すぎる映画ってやっぱり要注意ですね。
もともとドキュメンタリー出身の監督のようで。撮り方や演出などは独特ですごいですね。脚本も演出もよくできてますよ。素晴らしいです。
ただ私は基本的に「真剣に考えさせられる映画」を求めていないので。映画は息抜きなので。そういう意味では少し評価が下がりますが、それは作品のせいではないです。
滅茶苦茶良くできてます。映画としての品質は間違いないですが、息抜きにはならないです。
ちょっと疲れました。
違和感のある会話・音楽・犬・少年・ロケーション、、、
すごく巧いプロットだなあと思った。全てに必然性がある。英語とフランス語のチャンポンも。
最後まで観る人にクリアな真実を明かさない。そういうのが許せない人には無理な映画かも。いやいやそもそも真実って何? 所詮観客が見せられているものは、恣意的に切り取られたカットの集積体なのだから。想像の余地は無限大だ。
ある意味密室のような山荘。事故か自殺か殺人か。事実があるとすれば、そのうちの一つが必ず事実なのかな。どうなんでしょう。組み合わせもあるのかな。現実の世界の捜査はどうなんでしょう。どれほど理に適っているのか、弁護士の腕次第なのか、、、。
それにしても、主演女優さん、のりうつったみたいに完璧になりきっていて、ドキュメンタリーかと錯覚する場面も。
おそらく白眉は「録音されていた夫婦喧嘩」。ともかく全編通じてセリフの応酬が多く、演劇の舞台みたいだった。
暴かれる人間関係
最初退屈だなと思っていたらサスペンスは本筋ではなく、明らかになる事実がなかなか気持ちの良いものではない。夫婦間の関係性、仕事間格差…しかもそれが夫を殺したのは妻なのかどうかを決めるために裁判で明らかになっていく、、プライベートがどんどんバラされていくのは溜まったもんじゃないよ。あの夫婦喧嘩はもう辛すぎるもう勘弁してぇと夫の立場になりながら観てしまった笑。
妻ザンドラのグレーな感じと見せる弱さがうまい。
それと癖強検事も印象深いがあのイケオジ弁護士は何者なんだい!2人の舌戦は目が離せない。
息子も知りたくない事実の数々にこの後本当に幸せなのかと不安だけど、葛藤しながらも自分で決めた証言はとっても立派だと思った!
あのイケオジとワンコの名演だけで観る価値はある笑
それと、心象次第で決まる裁判ほど後味の悪いものは無いんだなと実感。
簡潔評価は、力作だが面白い作品ではない。
いかにもアカデミーが好みそうな作品で、一般の方には冗長かなと。自宅視聴なら、間違いなく再生速度アップ作品♪
まず短く良い点。
過剰演出や不思議描写は全くなく、事件を詳細に追って理屈の合う細かい点で裁判シーン等も描写している。 いい加減さが全くない力作♪
が、
私が映画評価の最重要視する点は、"時間を忘れさせてくれるパート"が、「その作品の何%をしめるか」という点。
ラストで大感動しても、前半ほとんどが睡魔に襲われた様な作品は、★評価が大きく下がる。
今作は作品時間中、見入ったのは約10%位しかない・・。
主には現場を図解解説しているシーンと、音声証拠シーン等くらい。
他の方もレビューしている、「スティーブン・キングは実際の殺人鬼か・」という台詞は唯一声を出して笑ったが♪
裁判シーンに見入ったと高評価してる方もいる様だが、私はかなり疑問も湧いた。 それは殺人容疑を掛けるには、最重要ポイントを2点も追求してないから。
1 動機
2 金銭損得
これらを争わず、状況証拠や二人の人間関係ばかりを追求し、説明しようとしている。
前日の喧嘩に争点がかなり向けられているが、夫婦喧嘩などあって当たり前。 私は子供時代に両親にもっと酷い夫婦喧嘩を何度も見せられた。 (まあ晩年にはしなくなったので、あの世ではお互いを気遣ってくれていると思うが♪)
特に口の悪い大阪のおばちゃんなら、夫に「あんたなんか死んだらええねん!」ぐらいの売り言葉を怒鳴る方も多々いるだろう。
が、実際に殺してしまう方はいない・・。
殺人までに至るには、耐えがたいDVを何度も受けたり、家計費を持ち出し自身の遊興費に使われ、借金まみれ等、もっと切実な動機があるはず。
次に今作は夫婦の金銭関係が一切描かれてない。(お互い作家だが、妻の方が多く作品を執筆しているというぐらい) すなわち、夫を殺した方が妻が経済的に得をするという説明もない。
本当の裁判なら、上記2点も争わなければおかしい。
さらに作品に感情移入出来る重要点、登場人物の魅力がほとんど描かれてない。 主演女優ノミネートになった、ザンドラ・ヒュラーは作品時間の8割ぐらい出ずっぱりで、そのシーン毎の感情はかなり巧く表現してるが、その人物の人となりが、ほとんど分からない・・。
これは彼女の演技でなく、脚本にそういう描写がないのだ。
(これは、「TAR/ター」や「哀れなるものたち」も酷似している。 逆に「ナイアド 〜その決意は海を越える〜」のアネット・ベニング やジョディ・フォスター は痛いぐらいに二人に性格が伝わっている)
と、マイナスに感じる点が多く、総じて自身平均点の★3.5の平凡評価に。
自分が配偶者殺しの容疑者になったら
もし自分に、サンドラのように配偶者の殺人容疑がかけられたとき、無罪をかちとれるだろうか? 互いに相手への何らかの不満はあるし、夫婦間にいざこざはつきものだ。不利な状況証拠を集められればいくらでも集まるだろう。それに比べ有利な証拠は乏しい。子供は誘導尋問に素直に引っ掛かりそうだ。私の場合は有罪になってしまいそうな気がする。
ハマらなかったなあ〜
メッシくん(犬)の演技が凄い&かわいいのと
弁護士(スワン・アルロー)がセクシーでよかったです。
が、あんまり面白くはなかった
フランスの法廷ってあんな感じなんでしょうか?
推測でべらべら喋るので苛々しました…。
夫婦こそサスペンス
フランスの雪山で暮らす夫婦と視覚障害のある子供に犬。
ある日、夫のサミュエル(サミュエル・タイス)が転落死する事件が起こる。
自殺なのか、他殺なのか、事故なのか、その真相を探る物語。
アウトラインはサスペンスそのものだが、いかにもな怪しい登場人物もいないし、他殺だとした場合の証拠も何もない。
そんな中、状況証拠だけで妻のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)が殺人容疑で起訴されてしまう。
映画の中心は妻は夫を殺したのか、その謎を解明する法廷シーンだ。
当事者の夫婦以外の第三者は第一発見者でもある視覚障害のある息子のみ。(それと犬)
ただ、目が見えないので音だけでしか証言ができないところがポイントだ。
前半で夫婦の関係性は詳しく描かれないが、この法廷で夫婦の関係性があらわになっていく。
夫が息子を見ていた時に起きた事故で視覚障害になってしまった事の負い目。
夫婦共に作家であるが、妻はベストセラー作家で夫は落ち目の作家。
家事分担の話し。
どれもこれも夫婦あるあるで、身につまされる話だ。
そう、事件など起こらなくとも、育ってきた環境も違う他人の2人が同じ屋根の下で長い人生を共に暮らす、夫婦こそサスペンスそのものでないのか。
そんな関係性を炙り出すこの映画はサスペンスでも法廷劇でもない人間ドラマだ。
ドイツ人でフランス人の夫と結婚し二人の会話は英語で、法廷ではフランス語を喋らないといけないという複雑な役を演じるザンドラ・ヒュラーの演技がすばらしい。
また、犬のスヌープ役のボーダーコリーの「メッシ」の名演も見もの。
先日のアカデミー賞授賞式にも出演し、話題になっていた名犬。
最後にこの映画を夫婦で観ることはお勧めしない。
解剖
真実はいつも一つ!という言葉があるけれど、大人になって思うのは真実って一つかもしれないけれど認識の仕方は複雑だという事。
たった一つの真実も見る人、見る角度、時代、立場、法律、タイミング、さまざまな要素によって意味が変わってくることがある。
今回の作品で個人的に素晴らしいと感じたのはスピーカーの字幕の訳し方のシーン。
主人公はドイツ人で英語とフランス語が使える。舞台はフランスだが話しやすいのは英語。なので、スピーカーの言葉が出てこない。それを確認した時、まずカタカナでフランス語の音表記になる。それから主人公が話すと"音声再生器"と字幕が出て、ルビにスピーカーと出る。(一瞬だったので見間違いがあるかも)
一つのことを伝えるためにも、伝える相手、状況によって多面性が見えてきたり、惑わされてしまうといった本作の核になるところが表現されていてとても良い字幕だなと感じました。字幕:松﨑弘幸さんでしたので今度から覚えておきたいと思いました。
物語は宣伝の感じより、シンプルだと感じたけれど裁判の進み方、物語の展開の仕方はとても興味深く、おもしろかった。
特にすごかったのは息子ダニエルと、わんちゃんのスヌープ。この男の子とわんちゃんの演技力がこの物語の骨格を強固なものとしていて本当に素晴らしすぎた。今年の個人的主演男優賞と主演動物賞は決まったかもしれません。
カンヌのパルムドール、アカデミー賞の脚本賞を獲った作品なだけありまして見応え抜群でした。ラストも見た人の解剖の仕方によって見え方が変わってくるでしょう。
生々しい夫婦関係が浮き彫りに
仕方ないけど裁判というのは容赦ないですね。
録音されてた夫婦喧嘩が再生されても堂々としている妻の姿に、フランス(ドイツ)女性の芯の強さを感じます。
少し長いけど飽きずに鑑賞出来ました。
全253件中、61~80件目を表示