パスト ライブス 再会のレビュー・感想・評価
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静かで綺麗な映画。たらればって別に悪いことじゃないのでは?
自分の中で映画ブームが来ていますが、いかんせん初心者なので、まずは今年のアカデミー作品賞ノミネート作品から順に見ています。パストライブスは、いろんなメディアでオススメされていて気になっています。
会話劇とそのストーリー性が特筆される作品だと思いますが、個人的には映像美を強く感じました。
2人が再会するニューヨークは、雨で始まります。そのシーンが美しいです。
2023年に渋谷で写真展が開催されていたニューヨークの写真家ソールライターの作品に似ていると感じました。ニューヨーク、雨、赤という個別の要素が勝手に繋がっただけですが、自分の記憶と映画がリンクするというような楽しみ方ができたのも嬉しかったです。
登場人物は、主人公のノラ、初恋相手のヘソン、夫のアーサーの3人で構成されています。そして会話は、3人中の2人で構成されます。
3人が使う言葉の違いが、ストーリーをより多層的にしていると思いました。
ノラとヘソンは、韓国語。ノラとアーサーは、英語。ヘソンとアーサーは、カタコトの韓国語と英語。
この言語の違いは、時間軸の差も表しているようでした。
ノラとヘソンの韓国語は、ノラにとってはifの世界で、リアルではありません。韓国語の世界には、ヘソンとの幼い頃の楽しい思い出がいっぱいあるし、寝言は韓国語になるくらいかなりパーソナルな世界です。ただし、その世界は過去です。
ヘソンにとっての韓国語は、時間軸は連続していて過去から現在に繋がっていて、ノラとの進展も望むための言葉で、時間軸は現在です。アーサーにとっては入れない遠い世界で、寂しさを感じる言語です。
逆に英語は、ノラにとって現実世界での言葉で、成し遂げたいことやりたいこと、そしてライターとして生きる自分とそのパートナーであるアーサーとの話す言葉です。アーサーにとては、英語で喋るノラを見ている。ヘソンは、英語を喋るノラは、少し遠い人に感じていたように思います。
劇中でノラがどの言葉で喋るかで、どの世界に、どの気持ちになるかが変わっているようで面白かったです。多くのタラレバが出てきますが、どれも後悔とか後ろ向きな話じゃなくて、それぞれの世界でみんなの幸せが残り続けているように感じました。
でもやっぱり切なくて、最後アーサーが軒先で待っているところ、そこに抱き止められるノラの涙は、ヘソンに戻りたい訳ではない、けどこれが最後かもと思う悲しさが溢れているようでした。
派手さは全くないですが、静かに、美しく、じんわり広がる映画でした。
移民の私が「ちょっと思い出しただけ」
子どもの頃、互いに好きだった人と12年後にオンライン上で再会し、また離れ、さらに12年後に本当に再会する。離れていた間に彼女のほうは結婚していた。
再会して、お互い相手を好きだったころを思い出し、ありえたかもしれない人生を思う。どうしようもなく切ないけれど、結局は今の自分の人生を肯定し、今後もそれを生きていく。この映画はそれをとてもリアルに細やかに描く。
これだけだと、日本でもどこでもありそうなラブストーリーにみえる。しかし、この映画ならではの個性となっているのは、二人が離れ離れになった理由が彼女の家族の「移民」であることだ。現代の韓国の人にとって「アメリカ(あるいはカナダ等)移住」は普通に取りうる人生の選択肢の一つなのだろうか、と驚きを覚えた。現代日本では、自分の意志で「移民」になろうとする人はそうそういない。
12歳でいきなりアメリカに連れて行かれて、最初に学校に行く日のノラの不安そうな表情。その後、(恐らくさんざん苦労した末)みごとにアメリカで希望する仕事にも就き、アメリカで自立して生きていく人生をつかむ。その途中で彼女はアメリカ人と結婚し、グリーンカードを取得して名実ともに「アメリカ人」になる。
自分はアメリカで生きていくのだ、アメリカ人になるのだ、ということはもう、大人になるまでには決めていたはずだ。最初のオンライン再会の頃にはまだ、国に帰る可能性を完全に排除してはいなかったが、やり取りを終える頃には決意を固めていた。
アメリカ人・アーサーとの結婚は、書類上も「アメリカ人」になるために必要不可欠なステップの一つとして迷いはなかったのだろう。相手は、普通に良い人で自分を愛してくれて、「アメリカの国籍をもった人」であれば良かったのだ。そういう人なら誰でも良かった・・?いや、何かの「縁(イニョン)」があったのだ、と彼女は考える。この広い地球上でその時その場所で出会ったこと自体がほとんど奇跡なのだから。彼女はその縁を信じ、選んだ自分の人生を生きていく。
だから彼女にとっては、どれだけヘソン(と彼が体現する祖国)が懐かしかろうと魅力的だろうとそこに帰る選択肢はない。アメリカ人として生きていく人生を選んだ以上、アメリカ国籍の夫を手放すこともない。彼は単なる「良い夫」ではない。移民である彼女に、アメリカ人として生きて行く文字通りの「パスポート」を保証してくれる人なのだ。
最初から・・少なくとも24年後の再会の最初から、彼女は全部痛いほどわかっていた。だからそれこそ「ちょっと思い出しただけ」(注)。一生忘れない思い出になる再会だけれど、選んだ人生を変えることは決してない、そういう再会だった。
夫、アーサー(ジョン・マガロ)はまた、それを全部わかってなお、彼女を愛している。ユダヤ人(ユダヤ系アメリカ人)という設定だけれど、それこそ民族全体が「移民」として世界あちこちで生きてこざるを得なかったユダヤ人の血を引く人だというのが象徴的である。
移民した国で生きる困難さ、移民の現実的な生きる知恵(結婚もその一つ)、祖国への郷愁と諦念。アーサーは、移民であるノラが抱えるそれらをみな包み込んで愛している。
現れたヘソンがまっとうで魅力的な男なので心穏やかではないが、ノラの感情も、アメリカ人として生きていくという揺るがぬ決意も、手に取るようにわかるから、二人に黙って寄り添い、彼女を抱きとめる。
移民の国アメリカには、ノラの物語を自分のことのように感じる人々がたくさんいるだろう。この映画も、『ミナリ』も、韓国人(韓国系アメリカ人)が、普遍的な「移民の物語」の主人公になっている。「韓国特有」あるいは「アジア人(非白人)特有」の要素はあまり強調されておらず、どこの国から来た移民でも共感できるだろう物語だ。あえてそうしたのか、意識せずともそうなったのかわからないが、その点は、世界中で公開することが前提の現代の映画らしい、と言えるのかもしれない。
キャスト:
ユ・テオ、多少優柔不断かも知れないがまっとうな良い人の感じがよく出ていた。でもヘソンは韓国を離れることなんて到底考えられない、という人。日本にこういう人はよくいそう。「鍛えまくっている」感じがない体型が、なんとなく安心感を醸しだしていた。
注:「ちょっと思い出しただけ」は、松井大吾監督の素敵な映画のタイトル。
期待外れ。
勝手に泣ける感動話かと思いきや、リアルでごじゃった。
想像の範囲内。つまらん。
もっとおっさん、おばはんになってから再開したら良かったね。
すっきり気持ちの整理ができたはず。そしたら映画にならないか。
突き放す距離で
Past Lives
両側からの片思いを長く続けた。否定をしたいが、時間は経ち過ぎていた。その期間にも人生は続いていて、再会を一口に言葉に表すことは難しい。
イニョン(縁)を自分に良い方に捉えて、それ一つで挑むのは、ニューヨークで活躍する作家相手では無謀な気もしたが、少し間延びした問答でも意外と心を動かせている、と印象を受けた。思えばやり取りから文化が違う、妻の昔を良く知る知人に、夫が焦燥感を抱くのは自然だ。
テーマに比べて、いい意味で突き放した撮り方をしていると感じた。再会の絵とかつて遊んだ彫刻の一瞬の重ね合わせ、12年前ですらまだ子供だった。今は、前世の何回目だろうか。
観終わると、初恋の人やかつて別れた恋人に会いたくなる
何と言うんですかねぇ、心の機微と言えばいいのか、それとも心のひだと言いましょうか…
ちょっとした表情、しぐさ、言葉、間のすべてがふたりの何とも言えない気持ちを表した映画なんです。
だって、そもそも付き合ってもいない幼馴染。
近づくチャンスはあったのに、お互いの人生を考えると気持ちだけでは越えられない。
せつなくて良い映画です。
ネット時代のお気軽ラブロマごっこ
正直、大人のラブストーリーだの共感できるだの言われてもまったくおもろないものはおもろない。小学校時代に好感をもってた女の子を、大学ぐらいになってネットで検索してやっと連絡をとりスカイプで交流していい雰囲気になるけど、お互い外国に会いにいくまでの気合なく、そうこうしているうちに女が距離を取り出す。
それで終わりの話を、男がさらにすでに既婚者となった女にあいにNYまでいくってもう半分ストーカーですね。それで話が進めばともかく、どちらも煮えきらないだけの男女が「前世の縁がなかったのよ」の結論で終わるだけのつまらん話。
あと現代の韓国の英語教育からみて、主人公の韓国人の男があそこまで英語が喋れないとは思い難いんだが。
海外で生活し、他国籍のひとと結婚し生活するアジア系のひとびとの生活実感はとてもよく表現されていたし、カメラワークや構図など映画技法的には優秀だな作品だと思うがこのプロットは呑み込めませんでした。ネット時代のお手軽再会ラブロマごっこものですね。やっぱラブロマものは苦手だ。
映像と間と秒速
まず特筆すべきは写真家ソウルライターを想起させもする美しい映像。ところどころ長回しで間を取る演出も持たせられる。筋はなんともやるせない気持ちにさせるものだが、大人が見るのに適した良い作品だと思う。
子供の頃好きだった相手をずっと引きずる男といい思い出ではあるが男ほど引きずってはいない女。新海誠の「秒速5センチメートル」を思い出したりする。二人の感情には東洋と西洋の違いや、別れた後の人生の充実度なども影響している。またそれでも女は別れたあとに、夫に抱きついて嗚咽も漏らす。一面では語れない。
ちなみに主役のグレタ・リーはAppleTV+の傑作ドラマ「モーニングショー」で顔なじみだったことも鑑賞の動機なのであった。
「視線」を見つめていた映画。 最初のシーンは、NYのバーにいる物語...
「視線」を見つめていた映画。
最初のシーンは、NYのバーにいる物語の主要人物3人を、たまたま居合わせた他人の視点で3人の関係性をあれこれ予想する場面から始まり、その視点は女の視線と交わった瞬間に切り替わる。
交わりそうで交わらない視線、そして一度交わると離れられない視線。
シーンとシーンの間、時間や距離を、緩やかに繋いでいくような音楽がかなり好み。
後半、男がやっとNYに来た場面のシークエンスは、ギターの音色が旅情を誘う。
男は終始女々しくて、見た目もダサいけど、くしゃっとした笑顔やその実直さが憎めない。
2人とも結論は最初から出ているのに、感情は揺れ動き、しかもラベリングできない。
ラスト2分間の長尺、たまらない緊張感。
廻る回転木馬。蛇足に見えた邦題も、込められた意味が分かると、悪くないかなと思えた。
エンタメ的な事件が全く起きないのが凄い!
悪い人が一切居ない映画!
あと色々と凄いんですがCGが凄いとかアクションが凄いとかでは無い演出やセリフの裏での心の声とかの表現が見事でとても良さを表現しずらい凄い作品ですよ!
あと恋愛モノでしょ、予告の感じからしてどうせ泣かせに来るコテコテの内容なんだよねって先入観あるから全てを覆えされてビックリしましたよ。
だからこそ変な事態にならない故にかえって厄介な話になるのでそこが重大ポイントになっています。
更に言うと大人の恋愛映画で略奪愛にもらならなければ今の旦那が昔のボーイフレンドを妬んでキレたりしないし 浮気だったり過剰なセリフや演出も無く淡々と進む作品ではあります。
言葉以上にボディランゲージや目線で語る部分も多くて
余白の作り方が上手いし映像や音楽も綺麗だし凄い作品を見たなあーってつくづく思いました。
これ感情移入する相手によって色々感想も変わるし 昔からの運命的な繋がりがあったとしてもちょっとした選択の違いで結ばれなかったり 些細な事がきっかけで結婚までする場合もあるけど どちらも間違いでは無いし正解が無いから もしあの時こうしていればどうなっていたのかっていう たらればの話になってくるので 結局それが人生なんだよってなるんですが切ない話ではありますよね。
嫌いで離れた訳でも無いし 今の旦那がめちゃくちゃ良い人だから余計に辛いだろうし(イヤなやつでDV夫とかなら略奪ってパターンもあるでしょうがそんな普通の作品にしてないところが凄いんです)今のままモヤモヤしててもしょうが無いから次に進む為に結婚してる好きだった彼女に会いにいくのも分かるし 各人の状況の設定が上手いのよな、今の旦那も物分かりが良いから昔のボーイフレンドが会いに来てるのに断りもしないし(逆にこれが本当にこの映画の一番の厄介ポイントです)全員が一線を超えない絶妙なラインで会話などをしていてみんなの本心の部分をあえてセリフで極力語らない演出なのでそこが上手いんだよなあ!
飲み屋で最後のほうで二人で韓国語で話をしているシーンは(オープニングの三人の関係性を他人が話ししてる場面からのここのシーンていうのも上手い演出っすね)旦那が可哀想でそっちが気になり過ぎて自分は会話に集中出来なかったですよ!
ここが凄かったって場面の話をしますが
ラストの2人で歩いてる時の沈黙(あんな状況だったらペラペラ話する感じな訳ないですよね)と見つめ合ってからの間が凄くてセリフ無いのにこちらが色々と考えさせられる演出が神レベルで車の来るタイミングもあと少し遅かったら〇〇してたやろ(つうかもう抱き合えよ もう我慢しなくていいからって思っちまうし)ってくらいの超絶絶妙なタイミングだし そこから顔のアップとか一切しないで歩いて戻ろうとしたら家の前の階段で旦那待って居てノラが号泣しながらのアーサーとハグとかオチとしては完璧だと思います!(案外彼女は冷静で冷めていた訳でも無いってのが分かるし今の生活が幸せだけど昔気のあったボーイフレンドだって嫌いな訳無いしだからといってそのあと今の旦那を捨てて結婚する訳にもいかないし選択権なんて無いのでどうにもならない状態からの号泣ですから)
更に言うと家の前でまって居たアーサーの気持ちを考えると待って居てハグしただけだけど、内心は妻は普通に好きだし昔のボーイフレンドと会うとか内心良くは思って無いけどそこまで長い期間の繋がりのある人なんだから合わせてやりたい気持ちもあるし最後見送るんだからノラだって嫌いで別れた相手では無いから複雑な感情になるのを理解した上で泣いてしまった妻に対して旦那としての最大限のサポートってあの場面では旦那としてはどうシュミレーションしてもベストだと自分は思います(盗み聞きしていない時点でノラを絶対的に信頼しているのも分かるし信頼してるからこそヘソンと合うのも許した訳だしそういうのを説明するセリフのシーンが無いからここまでこっちが頭の中で考えるという事が出来る仕組みになってる)最後のシーンがセリフほとんど無いのにも関わらず情報量がめちゃくちゃ多いし(感情を全部セリフにしてたら相当な会話量になります!)この手法は映画としては相当難しい事やっていて凄えってなりました!
あと韓国では友達と会った時に日本と一緒でハグとか普通にする文化ではないけどアメリカなどは平気でハグとかする文化だから
24年ぶりに会った時にノラがアメリカ慣れしているから普通にヘソンにハグするんだけどヘソンはハグされて困惑するってシーンからの最後の別れの時にヘソンはそれがしたいのに出来ないで別れる絶妙なシーンへ繋がるのでそこも上手く出来てるなあと思いましたよ!
この作品クローズやアフターサンや市子近いような自分で考えないとダメな部分も多いのでセリフで全てを説明してこちらに考える余地とかいらねえ教に入信してる人には向かない内容なのでそこで意見が思い切りわかれるとは思いますが逆に映画祭などでノミネートされてる理由はそういう事だったりしますから。
あといちいち良いシーンだらけだったとは見ていて思いましたね!
あと見る人の性格次第であの女の強気な性格が気に入らないとか旦那が優し過ぎて自分なら絶対幼馴染のボーイフレンドに絶対合わせないとか小さい時に好意を持っていた女子をネチネチ思い続けるとか気持ち悪いとかって意見も出るだろうしそこも含めて面白い作品だとおもいますよ。
最後に年齢が30オーバーとかだと人生の経験が多い分 過去に あの時こっちを選択していたらどうだった?とか考えたりして あーそれ分かる分かるってなるのは理解できますが 20歳くらいの人が見るとこの作品どう感じるのかが知りたいと思ってしまいますし 見る年齢によって感じ方が全く違う作品になってるある意味感想が偏らない色んな意見が出る作品なのでそこも面白いと思いました!
結論ですが今年見た作品で上位間違い無しの作品です。
アメリカを選んだ女
もしも経験値のある映画監督だったら、ラストあんな不粋なエンディングには持ち込まなかったことでしょう。ウディ・アレンの『マンハッタン』のように雨に濡れるNYを舞台に、24年ぶりに再会した幼なじみの韓国人男女を、リチャード・リンクレーターの『ビフォア・シリーズ』のような演出で描いてみせた本作は、アングロ・サクソン系の評論家筋にはなぜかすこぶる評判がよろしいのです。
確かに現在の韓国映画界は才能ある女流作家がてんこもり状態なのですが、アメリカ配信ドラマのシナリオに多少携わった程度のキャリアしかない本作監督セリーヌ・ソンを、それと同列に考えるのは無理があると思うのです。過去の恋愛映画から部分的にいいとこ取りをしただけで、本作にはオリジナルの演出やシナリオの捻りをまったく感じなかったからなのです
ではなぜ、他の映画祭ではほとんど無視された本作がアカデミー作品賞にノミネートされるまでの評価を受けたのでしょうか。本作が公開された2023年度は、コロナ開けをまって巨匠系がこぞって賞狙いの作品を出してきたため、アジア系の著名監督がバッティングをおそれ出品を控えたといいます。多様性を何よりも重んじるアカデミー賞にあっては、対面的にバランスをとるために仕方なく、ほとんど経験値のないアジア系女流作家のデビュー作品を無理やりノミネートに押し込まざるを得なかったのではないでしょうか。
そしてもう一つ、本作にはあざといプロパガンダが隠されているのです。本作は基本的に、韓国系アメリカ人のノラが、ユダヤ系アメリカ男アーサーと韓国人男ヘソンの間で揺れ動くメロドラマなのですが、そのヘソンのファッションのダサさ、ならびに、ヘソンがアメリカよりも中国にビジネスチャンスを見出だしていることにまずは注目したいのです。つまりこのノラに未練タラタラの優柔不断男ヘソンを北朝鮮または中国のメタファーと考えると、本作はまったく別の見方をすることが可能なのです。
つまり、過去(Past Lives)に8000のイニョンによって結ばれた北朝鮮または中国(ヘソン)ではなく、現世のパートナーであるアメリカ(アーサー)との友好関係を選んだ韓国(ノラ)のお話に置き換えることができるのです。映画としてはラスト、長い間見つめ合った2人が動いた瞬間にカットする、余韻を遺すエンディングがベストだったと思うのですが、政治的にはっきりと韓国=ノラがアメリカ=アーサーを選択したことをみせる必要があったのでしょう。
見終わった後、いろいろ考えさせられる。
会ってみたい気持ちはわからなくもない。
何もならないとわかってはいても、会って終わらせたかったのかも……
せつないね。
時間は戻らないし、
良くも悪くも、今の自分を認めて生きていってほしい。
映像が綺麗。音楽も好き。
俳優さんたちの繊細な演技が素晴らしい。
高評価!
女神の自由の裏側
「パスト ライブス 再会」素晴らしすぎて動揺。私たちがたどり着いた場所は正しい場所なのかと幼なじみの2人が言葉と目で語り合う。それはどちらも本当のことなんだけれど、あまりにも切なくて苦しい。新しいラブストーリーの傑作。
あと、一部の人に伝わればいいけど、あのシーンのアーサーって、惣一郎さんのお墓参りから帰ってくる響子さんを一刻館の玄関で待っている五代くんだよね。ヘソンはもうノラの一部で、それもひっくるめてノラを愛するという。
過去は生きている。
過去は過去。今は今。ただ、過去が無意味ということではない。過去があるから今ここに辿り着いている。過去は生きている。
そんなことを感じました。ラブストーリー…というより人生の歩み方を考えられるような良質な大人の物語。イニョン、縁についても大切にしていきたいですね。
撮り手が観客を信頼している。それが嬉しい。
私的年テン上位当確。
最適量の物語と最効率の台詞で生れる余白を
観客に委ねた。
観客は映画内に静かに同席し、
主役三人の心情を何とか汲まんとする
心地好い緊張感。
この余白の緊張感が遂に幕切れ迄途切れない。
映画が撮るべき機微心情は未だあると
知らされたのが何より嬉しい。
後戻りできないことを確認するが如き
これは結構好きだった。
韓国、ソウル、12歳の少女ノラと少年ヘソン、互いに恋心を抱く幼なじみの二人。ノラが家族と海外へ移住し離れ離れになった。
ずっと一緒にいたんだろうなぁ。
二人でどれだけの時間を過ごしたことだろう。
12年後の24歳、ニューヨークとソウル、偶然SNSで再会したが「距離」を克服する術はなかった。連絡は途絶えた。
ノラは間もなく結婚し、ヘソンにも彼女ができたようだが、、、
更に12年後の36歳、ニューヨークで24年ぶりの再会。愛おしくもクールな再会だった。決して後戻りすることができないことを確認するが如き。
観る自分は何故か涙が流れた。
清々しい涙だった気がするが果たして?
ノラの旦那さんがナイスガイ過ぎて。そう、「ファースト・カウ」、「ショーイング・アップ」に続きジョン・マガロが美味しいところを持ってった感じ。
いろんな種類のイニョンがあるよね
抑えのきいた渋い大人な映画だった。イニョン(縁)という言葉の響きが可愛い。ラブストーリーと言われてるけど24年後の再会、すごく嬉しいけど、なんか…話すことない…みたいな空気を二人の間に感じたから今の夫アーサーに「大丈夫だよ。君が運命の人よ」と言ってあげたくなった!
ビバ!アーサー!
めったに観ない恋愛映画だが、抑制の効いた演出やセリフがとても心地よく、日本人にもわかる縁(イニョン)という概念をわかりやすく伝えていた。
ラストが秀逸で、オレをこういう気持ちにすんのかい!と思いました。ビバ!アーサー!!
この物語、僕には刺さった
映画を観る前に眺めたレビューの評価は今一つでどうかなと思いながら映画館に足を運びました。で、僕には…見事に刺さりました。
僕もそれなりに長く生きているので、自分の体験やら昔感じた心の動きやらを思い出しながら映画を観ることが多いのですが、実際この映画では過去のいろいろなことが思い出されました。過去に関わりがあった女性に会ってみたい、また相手の気持ち(自分の気持ちも)を確かめてみたい衝動(実際に行動に移したかは別として)やら、妻の元彼(夫)や初恋の人の存在が気になったり(これはアーサーの心の動き)など。また関わりのあった女性と長い時を経て再会したときの感覚、感情の高まりとか。
優等生だったはずのヘソンのあの拙い英語(韓国の人って日本人より英語に強いんじゃないの?)はヘソンという男の今を表現している。野心ある強い女のノラからすれば物足りなさを感じたんじゃないかな。アーサーはノラを深く理解しようと韓国語を勉強しているのとは対照的。結局ヘソンは韓国という枠から出ることのない平凡な男。ニューヨークで自分の人生を切り拓こうとしているノラには合わない。
最後にヘソンがタクシーに乗り込み別れるシーンで12才の二人の階段での別れの場面がフラッシュバックする(映像)、強い女を演じていたノラが泣きながらアーサーの胸に飛び込む。二人の永遠の別れ(少なくとも結ばれることはない)を暗示していて胸が締め付けられた。
✡️最後のノラの涙をどう考えるのかはこの映画の理解の仕方に関わるんじゃないかな。
久しぶりに出逢えた、大人っぽいビターなラブストーリー
ダイナミックで美しいニューヨークの街並み、そして雑多でエネルギッシュな韓国の街並みをバックに綴られる、切なくてほろ苦くて、すごくロマンティックな作品
セリーヌ・ソン監督、これが監督・脚本デビュー作でしかもオスカーの作品賞と脚本賞ノミネートとは、またとんでもない才能が生まれました、素晴らしかったです
ノラを演じたグレタ・リーさん、全身から出る雰囲気が何とも魅力的、特に表情が良くてすごく素敵でした
そんなノラが偶然facebookで幼なじみのヘソンと12年ぶりに再会するも、ニューヨークとソウルの距離は遠く直接会うことができず、想いがつのり過ぎて辛すぎて、本音とは裏腹に引き裂かれる想いで自ら関係を断ち切ってしまう、たぶん自分も同じタイプなのですごく共感できて、観ていて一番 辛かった展開です
ノラのアメリカ人の夫アーサーの存在がまた切なすぎる、演じるジョン・マガロさんがめちゃくちゃ味があって良かったです
妻の幼なじみへの想いを感じ怯えるも彼女の全てを受け止めて優しく接しようとするアーサーが観ていてとても辛かった
韓国語で寝言を言うノラに“自分には君の中で永遠に理解できない部分があるんだと不安になる”と伝えるシーンは涙ものでした
ノラとアーサー、そしてヘソンの3人がバーカウンターで話すくだりは何だか緊張感たっぷりで、観ていてものすごく疲れました・・・
本作、ノラとヘソンの関係に目が行きそうな所ですが、私はどちらかと言うとノラとアーサーの関係、特にアーサーの心持ちの方に感情移入してしまいました、やけに辛かったです
ラスト、夜のニューヨークの住宅街、ノラがヘソンをウーバーに送って行くロングショットがとても切なくて印象的
さらにノラが1人で同じ道を帰って行くロングショットがもっと切なくて、最後に家の前で待つアーサーが泣いてしまったノラを抱き締めるまでの一連の流れが自分の中で久々に忘れられない名シーンとして刻まれました
観てよかったなと思えた秀作でした
全200件中、61~80件目を表示