劇場公開日 2020年11月20日

Mank マンクのレビュー・感想・評価

全53件中、1~20件目を表示

3.5「市民ケーン」と共にクレイジーなハリウッド黄金期が蘇る

2020年11月23日
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鑑賞方法:映画館

デビッド・フィンチャーが今は亡き父親で作家だったジャック・フィンチャーの脚本を手に、30年来製作を目指してきた執念の作品は、ハリウッドのゴールデンエイジに正しく評価されなかった「市民ケーン」(41)に関わった、不遇の脚本家の才能を再評価し、その存在を救済しようとする。膨
大な台詞が吹き荒れる中、クレイジーだった時代の空気感が蘇り、観客は次第に混沌とした映画製作の闇へと引き込まれて行く。予想に反して、主人公の脚本家、 ハーマン・J・マンキウィッツと監督オーソン・ウェルズのガチ対決はラストの数分で、フィンチャーは主に、マンキウィッツを通してMGMの創設者、ルイス・B・メイヤーや、「市民ケーン」のモデルになった新聞王、ウィリアム・ランドルフ・ハースト等、映画の都の巨人たちの実像を詳らかにしていく。特に、輝くスターの宝庫と言われた自社MGMについて、「いや、スターは他社で輝いているだけだ」(お抱えだったジョーン・クロフォードがコロンビアで女優開眼したりとか)と切り捨てるメイヤーの怪物ぶりが笑える。メイヤーは「ジュディ 虹の彼方に」でも子役を食い尽くす悪魔のようだった。そんな風に、華やかなハリウッド好きの知識に新たなページをユニークなタッチで書き加えてくれたフィンチャーに感謝しつつも、繊細な明暗法を取り入れた風合いのあるモノクロ画像が、反面劇場では暗すぎて俳優の顔が判別できない恨みも。近く始まる配信ではどうだろう?

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清藤秀人

3.5「市民ケーン」製作裏話を脚本家を主役に、時代背景も描く

2023年2月2日
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鑑賞方法:VOD

ラストでパチパチパチパチっと拍手をしたくなりました。
だからそこに至る過程の分から難さは、帳消しになりました。

マンク(ゲーリー・オールドマン)がともかくチャーミング。
毒舌なお喋りにも愛嬌があり可愛い男性です。
(これはゲーリー・オールドマンによるところが大きいのですが、)
マンクは愛称で本名はハーマー・J・マンキウィッツ。
「市民ケーン」の脚本家(オーソン・ウェールズと共同ですが、殆どは彼)

当時は脚本家の名前をクレジットしない契約なんて多かったらしく、
ラストでマンクが、オーソン・ウェールズ相手に珍しく声を荒げる。
「クレジットに俺の名前を載せてくれ!!」
「分かった、そうしよう」
だが腹立ちは明らかで、怒ったオーソンは激しくどこかにぶち当たる。
でもマンクはどうしてもクレジットしてほしかった。
だからアカデミー賞脚本賞に輝いたマンクは珍しく素直に喜んでいた。
私のパチパチパチは、マンクさん良かったね、の気持ちです。

オーソン・ウェールズは190センチの大男です。
当時24歳で《映画を好きなように作って良い》と、
PKOの社長に任されるほどの天才。
飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
「市民ケーン」で主役の新聞王ケーンを自ら演じたのですが、
威圧感と貫禄・眼光の鋭さ、そして何よりそのカリスマ性に驚きました。

「マンク」では、
オーソンはラストの対決以外では、殆どが電話口に出るだけなのですが、
回りの大人が彼を天才扱いして畏怖しているのがよく分かります。
一方のマンク(H・J・マンキーウィッツ)は、アルコール依存性に、
ギャンブル狂でいつも借金を抱えている。
その大物ぶりは、看護師に秘書がついて牧場のホテルに、
2ヶ月以上こもる経費は映画会社持ち、
だから重用されているしVIPなのは確かですね。
(その缶詰状態は「市民ケーン」の脚本を60日で仕上げるためなのだが、

最初の部分も面白かったですね。
マンクは先立つ1ヶ月前に交通事故に遭い、大腿骨を骨折している。
(脇見運転でクラッシュしたのだが・・・)
半分寝たきりで秘書のリリー・コリンズに口述筆記を頼む身の上。

この映画は1930年〜1943年のアメリカ。
禁酒法時代の末期、
世界大恐慌で景気が悪く、
しかも第二次世界大戦が勃発、
ヒトラーも台頭しているが、アメリカがナチスの脅威を
感じるのはもう少し先。
そんな情勢の中で不況に喘ぎつつも夢を追っている映画会社、
パラマウントやMGMのお偉いさんや監督・脚本家も次々と、
登場するが、私は殆ど名前を知らない。
うーん、難しいというか、
頻繁に回顧シーンが入るんだけれど、もう少し話のポイントを
整理して枝葉を切り揃えてもらったら良かったけれど、
(多分のアメリカ白人のお年寄りには懐かしくて楽しいのでしょう)。

カリフォルニアの知事選の話も、新聞王ハスラーは候補シンクレアに
恨みがあって、フェイクニュースを流す。
ここはトランプの手法そっくり。
いつの時代も選挙戦は情報操作に踊らされるんですね。
この知事選。
市民ケーンでは、
新聞王ハスラーが自ら知事選に出馬します。
(ちなみにハスラーは民主党員)。
マリオンとの不倫を対立候補に新聞にデカデカと書かれます。
不倫報道で立候補を取り下げる。
この展開、
ハスラーの野望は政界進出して、行く行くは、大統領を
目指していたらしい。
しかしこのスキャンダルでハスラーの野望は絶たれたのかも
知れません。
ハスラーの愛人で女優のマリオン・デイヴィスを
アマンダ・サイフレッドがとても魅力的で可愛かったです。

マンクは飄々としているようでその実、
高見を目指して苦悶しつつ
映画史に燦然と輝く『市民ケーン』を書き上げた。

この映画の脚本はデヴッド・フィンチャー監督の実父
ジャック・フィンチャーが30年前に執筆して、映画化を夢見つつ
2002年に死去。
息子が父の夢を叶えた恰好ですね。

………………………………………………………………………………………………………………………

「市民ケーン」を終わりまで観ました。
ケーン氏の死にはじまり死で終わる。

成功して昇り詰め、ザナドゥ(城で美術館ので博物館で動物園)
更なる野望のために政治家を目指すも、対立候補に
愛人スキャンダルを暴露されて、候補を辞退。
(不倫スキャンダルにより政治生命を絶たれたし、
ケーンは市民=ブルジョアジー=ために生きる、との理念も失う)
後世は屍のように孤独。

……………………………………………………………………………………………………………………

「市民ケーン」の脚本を書くために苦悶し四苦八苦したマンク。

ラストはアカデミー賞脚本賞を受賞して、
目出度、目出度。

それにしてもフィンチャー監督。
親孝行しましたね(笑)

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琥珀糖

1.0わからん

2022年5月1日
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元ネタを知らん

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aaaaaaaa

3.5私には難しかった…

2021年10月14日
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笑える

悲しい

難しい

「市民ケーン」の脚本執筆の過程を描く作品。本作を観る前に、まず「市民ケーン」を視聴し作品を理解しておくことを強くお勧めします、、その事前準備を怠ったために本作を3割くらいしか楽しめなかった気がする…。時系列や固有名詞や社会情勢が難しいが、おそらく傑作ではある!

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みな

3.0予習して見れば良かった

2021年5月19日
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知的

難しい

女性陣が全員魅力的だった。
モノクロ映画は見にくくて苦手なんだけど、女性陣がさらに素敵に見えた。

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ふわり

3.5一向に書かない脚本家の毒舌

2021年5月17日
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笑える

興奮

難しい

物書きであるはずの脚本家が、ペンも持たずタイプも打たないでよく書けたものだが、才能を認める会社が、メイド付きの高価なホテルに高級酒まで提供して書かせる厚遇にも、皮肉と揶揄を撒き散らせずにはおれない作家の性分が周りを混乱に陥れ、仕事は一向にはかどらない。そんなやつの本を買う気になったオーソンウェルズとの顛末やいかに。

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ezu

3.5フィンチャー監督のフィルターを通した市民ケーン

2021年5月13日
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21053.ソーシャル・ネットワークと対を成す

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movie

3.5「バラのつぼみ」の意味がわかった!

2021年5月5日
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鑑賞方法:映画館

 こだわりがいっぱい。モノクロ撮影のみならず、フィルム作品のようにチェンジマーク(黒い点、パンチマーク)がつけられていたことに驚き。その他、物語の構成にも『市民ケーン』と同じく過去のエピソードに舞い戻ったりする技法が使われていた。ただし、残念ながらオーソン・ウェルズ作品のような光と影のバランスは感じられなかった。

 ザナドゥと呼ばれる新聞王の城。やっぱり動物園のようにゾウやらキリンやらサル(マンクじゃなくモンキーだよ!)がいっぱい登場する。せっかく5月5日こどもの日に鑑賞したのに、観客はお一人様でございました。おーい、動物いるよ~

 それにしてもマンクの会話が面白くて、メモを取りたくなるほどウィットに富んだ切り返しが素晴らしかった。やっぱり伊達に脚本家やってるんじゃないのね・・・頭が下がります。新聞王の愛人アマンダ・セイフライドもよかったけど、それよりリリー・ジェームスの可憐な姿に惹かれました。夫の行方不明という一報が届き、慰めてあげたくほどなのにマンクときたら・・・てな感じ。

 驚くべき展開というものがほとんどなく、序盤でマンクが交通事故に遭ってたことくらい。まぁ、最後にはクレジットに載せるどうのこうのでウェルズと葛藤があったこともそうか。個人的には「バラのつぼみ」のくだりですかね。いつもクビになってるってのも痺れるわぁ。

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kossy

3.5マンクの魅力

2021年5月4日
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楽しい

脚本家マンクはアルコール依存症だが、「市民ケーン」の脚本を引き受けていた。それまでの機知に富んだ行動や正論を吐く姿などマンクの視点から紹介する。
マンクの魅力が存分に楽しめる作品。

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りあの

3.0まあ予想通りでしたが、何度も観たい映画ではないな

2021年5月1日
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鑑賞方法:映画館

デビッド・フィンチャー&トレント・レズナーの作品ということで、イオンシネマが公開してくれたので、観に行ってきました。
難解との前評判もありますが、事前に「たまむすび」だったと思うのですが町山さんの簡単な解説を聞いていたので、何となくは理解できた感じ。
でも、イマイチのめり込めず、玄人受けする映画だったなという感想。次回は、シカゴ7裁判を観る予定。

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矢吹 貴

4.0美術賞!撮影賞!

2021年4月27日
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知的

モノクロなのに、とても映像が綺麗でした!

第93回アカデミー賞
美術賞 撮影賞
受賞おめでとうございます🎉🍾

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H1DE!

3.5「市民ケーン」を超えられるのか楽しみ

2021年4月25日
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楽しい

興奮

知的

あの「市民ケーン」の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツにスポットを当てた物語。
「市民ケーン」がアカデミー9部門にノミネートされながら
脚本賞のみの受賞となった理由に・・・なるほどね、とうなずいちゃいました。
新聞王ハーストに気に入られながらも最終的に敵に回して脚本を完成させ
ある意味命がけで仕事をやり抜いた姿に惚れ惚れしちゃいました。
30~40年代のハリウッドをモノクロで映し出して
「市民ケーン」のシーンがオーバーラップするような映像。
さすがデビッド・フィンチャー監督ですね。
「市民ケーン」の9部門を超える10部門にノミネートされたけど
結果はいかに・・・楽しみです。

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tom

3.5金かかってる!

2021年4月24日
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鑑賞方法:映画館

2021年4月23日
映画 #MANKマンク (2020年)鑑賞
@福岡中洲大洋映画劇場

Netflix入ってないので、Netflixの映画は初めて見ました
テレビ用にこのレベルの映画を作るのか!と驚くのはもう古いんでしょうね
かつてのMGMが今やNetflixなんだろうな

今や伝記映画と言えば、#ゲイリー・オールドマン ですね

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とし

3.5市民ケーンもう一度見なくては!

2021年4月11日
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知的

幸せ

市民ケーンもう一度見なくては!

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Yoshi K

3.0今年は「市民ケーン」公開されてから80周年

2021年4月4日
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寝られる

1 著名な脚本家・通称マンクの「市民ケーン」の創作や30年代におけるハリウッドでの活動の一端を描く。

2 映画界の裏面史モノとして期待して観たが、やや期待外れであった。良くなかったのは①メインストーリーが平板で弱いこと②回想が効果的ではないことに尽きる。

3 メインストーリーは「市民ケーン」の創作過程。冒頭の執筆のキックオフ場面やその直前に起きたハプニングの場面は《つかみはok》で良い感じでした。
しかし、その後は執筆の進捗が語られても産みの苦しみなどオリジナル脚本特有の場面が描かれていません。また、クレジットタイトルにおける名前の扱いについてオーソン・ウェルズとの確執、モデルとなったメディア側からの強烈な圧力などの食い付きが弱い。火星人襲撃のラジオドラマを実況中継風に流すなど、常に話題性のあるドラマづくりをしてきたウェルズ。彼が関わった「市民ケーン」の完成稿とマンクの初稿との違いも知りたかった。

4 メインストリーの途中で、回想という字幕を出してからフラッシュバックする場面が何度も出てきます。大不況時代での映画産業の状況や映画作りの舞台裏が興味深いところ。また、共和党と民主党の選挙戦や上流階級の食事会のシ−ンが描かれ、マンクの思想的立ち位置や内心の鬱積が示されました。こうした点が「市民ケーン」の底に流れる批判的精神の源になったのかもしれません。いづれにしても、回想シーンは面的にまとめて挿入したほうがマンクの人物像を語る上で効果的だったと思う。

5 全編を通じ、台詞回しやシ−ンのテンポがはやく現代的。モノクロ映画にしたのなら、台詞回しや動きをもう少し落ち着かせスタンダードな作りにした方が完成度があがったと思います。

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ショコワイ

3.0こだわり抜いたモノクロ作品

2021年3月24日
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市民ケーンを観てからの本作ではあった。
もちろんフィンチャーとオールドマンのダックなので、期待はしたのだけれど、楽しめたか?の観点からすると、個人的には全くダメだった。

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Iwarenkon

3.5名作と謳われる市民ケーン。誕生秘話を楽しみにしていたのだが「成る程...

2021年3月22日
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名作と謳われる市民ケーン。誕生秘話を楽しみにしていたのだが「成る程、そうだったのね!」というほどの感慨は得られなかった。当時のハリウッドの香りは漂っているし、退屈することはないけれど、何か物足りない、そんな印象で終わってしまった映画だった。

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tsumumiki

3.5モノクロ映像が「市民ケーン」の世界観を彷彿

2021年3月21日
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映画史に残る名作「市民ケーン」の脚本家ハーマン・マンキウィッツの苦闘と人間像を描いた作品。「裸足の伯爵夫人」などで弟のジョセフは知っていたが、脚本家である兄の存在は、これまで全く知らなかった。
ハーマンはアル中で、おしゃべり、皮肉屋である一方、内心には強い正義感を持っており、演じるゲイリー・オールドマンがとにかく上手い。
モノクロ映像の質感や撮影技法が、題材である「市民ケーン」の世界観を彷彿とさせる。なかでも、新聞王ハーストの城の動物園(キリン!)、庭園、食卓などのキッチュさが印象的。
ルイス・マイヤー、アーヴィング・ダルバーグ、デヴィッド・セルズニック、ベン・ヘクトなど実在人物が次々に出てきて、予備知識がないと分かりづらいが、1930年代のハリウッド黄金期の舞台裏を覗き見している面白さもある。
デヴィッド・フィンチャーが、父の残した脚本を、念願叶って映像化したものとのことで、題材であるハーマンとともに、「忘れられた人々」にスポットを当てる心意気に、大いに賛同する。

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山の手ロック

4.0パンチあり。

2021年3月17日
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知的

難しい

まず語るべきは古き良き映像美ではないだろうか
銀幕の世界に映える白黒の映像
オーソン・ウェルズの代表作の一つ
『第三の男』は光と影の美しさが評判であった事はご存知のことと思います
それに勝らずとも劣らず素晴らしく光と影の演出がなされ画面の背景はわざとマットペイントと分かるような撮影処理され細かなところではフィルムチェンジの印のパンチまでもがしっかりと映し出されていて映画ファンとしてはこの演出に唸りを上げております
淀川長治さんがご覧になったらどんなに絶賛されたでしょうか
憎たらしいマンクの台詞はホントに面白い、面白いと同時に言われた相手はたまったものではないだろう、私なら最後の言葉までとてもではないが聞いていられないと思う、逃げるか腕尽くで黙らせるかだろうが多分逃げます
腕は折られたくないのでね

それにしてもゲイリー・オールドマンはこのような役をやらせたら天下一品ですね、『トゥルーロマンス』から要素はたっぷりとありますよね
『バットマン』の時の誠実で真面目な役よりこちらの方がハマってる『チャーチル』もなかなかでしたしね
ホントに好きな役者さんです
今度はどんな映画でどんな役を見せてもらえるのか楽しみでなりませんよう
政治や映画会社の話がよく分からなくても楽しめて見れたいい作品でした

あのパンチが出た時は「マジ! パンチじゃんか!」と声が出てしまいましたよ。

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カルヴェロ

3.5黄金時代

2021年3月9日
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80年代や90年代、評論家や文化人が、公開中映画を批評するコラムや、自選映画ベスト10などの特集は、映画情報誌だけでなく、さまざまなメディア系ファッション系雑誌に組まれていた。映画の情報を、紙の媒体から得ていた時代──の話である。

田舎の高校生だったわたしは、それらを感心しながら読んだものだが、大人になるにつれ、評論家の権威主義に嫌気してきた。むかしは映画評論家なる職業があったのだ。淀川さんや水野さんなど、ひとにぎりのテレビ解説者を除けば、御用記者か学閥系だった。
いま紙の映画情報誌があるとすれば、そこにしがみついているのはその流れを汲む権威主義者だけだ。ゆめゆめそんな連中の映画批評を信用してはいけない。(この発言には偏見があります)

それはいいとして。
80年代や90年代に、それらの雑誌のなかで、評論家や文化人が映画ベスト10をやると、かならず市民ケーンが1位になった。
この「かならず」に誇張はまったくない。
かならず市民ケーンが1位になった。

その種の選に参加する評論家や文化人はたいてい壮年から上の人々だった。まず40歳未満ということはない。学者、大学教授、政界、財界、芸能界、放送界、劇界、操觚界、梨園・・・全員が50以上の人々で、とうぜん年齢の影響が選にあらわれた。申し合わせたように市民ケーン天井桟敷の人々第三の男がワンツースリーになった。
たった30年前だが、あの当時のベスト10に多様性はまったくなかった。──つまり権威主義がまかり通っていた。

とはいえ市民ケーンが、いい映画であることに異論はない。
ただ今思えば、選ばれやすい皮相を持った映画だと思う。
知的な人たちの自尊心をくすぐることに加え、人生がぜんぶ入っている感じがする。
本編のセリフにも『2時間で男の一生は描けないが、一生を見たように思わせる』とあった。ほんとである。市民ケーンを見た誰もが、その一生を見たように思った。のである。

この映画は、自動車事故に遭い足を骨折し、オーソンウェルズの依頼でモハービー砂漠の一軒家にこもって市民ケーンの脚本を書くHJマンキーウィッツ通称マンクの、いわゆる「ハリウッド内幕もの」である。
白黒であることに加え撮り方も音楽も往年の方法をもちいていた。
それはいい雰囲気だったが、話が解りにくい。
映画の構造は、巣籠もりして脚本を書いているマンク役ゲイリーオールドマンと速記係のリリーコリンズとユダヤ人の世話係Monika Gossmannが現在の事象で、あとはぜんぶ回想になっている。回想は、市民ケーンを書くに至るまでにマンクに何があったのかを断片で拾っていくが、じぶんは映画の理解力がわりとあるほうだと(勘違い)しているのだが、登場人物が多く、相関も過多で、誰が誰かさえ掴みにくかった。
その解りにくさが、もっと躍動していいはずの内幕を、鈍重にしている──気がした。

おそらくハーストとマリオンが有名な年の差カップルとして周知ならば、違う見え方をするのかもしれないが、こんにち市民ケーンの背景を知っている人は、そうそう多いとは思わない。
そこで、個人的に感じた、この映画の起と結を案内しておくと、起は速記係リタ(リリーコリンズ)の旦那(イギリス空軍に所属する戦地の旦那)の空母が漂流したという手紙で、結は旦那が生きていてオークニー諸島に漂着したという手紙である。回想ではない進行形の話は(簡単に言えば)マンクはアル中だけどいい奴だったという話である。とうぜん移住させてくれたと述懐するユダヤ人世話係の話にもマンクの人柄はあらわれている。それを捉えることが出来たならば、映画は8割補足したも同然だと、個人的には思う。

もちろん興味をもって調べれば選挙や赤狩りやMGMとの主従など、さまざまな歴史上のイベントや命題にぶつかって、より一層楽しめる映画だと思う。

この映画を見たことで確信を深めたのは長すぎるスクリプトを尺に収めたことで、独特のスピード感が(市民ケーンに)生まれていること──である。あの畳み掛ける感じは、マンクの書いた叙事詩が長すぎたから──ではなかろうか。ウェルズはそれを短いカットを重ねていく手法に見せているが、むしろつづめる必要に迫られてフラッシュバックのような映画になった──ような気がしたのである。
ちなみにRKO281(1999)という、やはり市民ケーンの内幕(TV)映画があった。それはマンキーウィッツでなくウェルズが主役で、Liev Schreiberがウェルズ、ジョンマルコビッチがマンキーウィッツだった。
ところで本編ではTom Burkeという人がウェルズ役だったが、声がすごく似ていた気がする。

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津次郎