劇場公開日 2020年11月20日

「「市民ケーン」製作裏話を脚本家を主役に、時代背景も描く」Mank マンク 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「市民ケーン」製作裏話を脚本家を主役に、時代背景も描く

2023年2月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ラストでパチパチパチパチっと拍手をしたくなりました。
だからそこに至る過程の分から難さは、帳消しになりました。

マンク(ゲーリー・オールドマン)がともかくチャーミング。
毒舌なお喋りにも愛嬌があり可愛い男性です。
(これはゲーリー・オールドマンによるところが大きいのですが、)
マンクは愛称で本名はハーマー・J・マンキウィッツ。
「市民ケーン」の脚本家(オーソン・ウェールズと共同ですが、殆どは彼)

当時は脚本家の名前をクレジットしない契約なんて多かったらしく、
ラストでマンクが、オーソン・ウェールズ相手に珍しく声を荒げる。
「クレジットに俺の名前を載せてくれ!!」
「分かった、そうしよう」
だが腹立ちは明らかで、怒ったオーソンは激しくどこかにぶち当たる。
でもマンクはどうしてもクレジットしてほしかった。
だからアカデミー賞脚本賞に輝いたマンクは珍しく素直に喜んでいた。
私のパチパチパチは、マンクさん良かったね、の気持ちです。

オーソン・ウェールズは190センチの大男です。
当時24歳で《映画を好きなように作って良い》と、
PKOの社長に任されるほどの天才。
飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
「市民ケーン」で主役の新聞王ケーンを自ら演じたのですが、
威圧感と貫禄・眼光の鋭さ、そして何よりそのカリスマ性に驚きました。

「マンク」では、
オーソンはラストの対決以外では、殆どが電話口に出るだけなのですが、
回りの大人が彼を天才扱いして畏怖しているのがよく分かります。
一方のマンク(H・J・マンキーウィッツ)は、アルコール依存性に、
ギャンブル狂でいつも借金を抱えている。
その大物ぶりは、看護師に秘書がついて牧場のホテルに、
2ヶ月以上こもる経費は映画会社持ち、
だから重用されているしVIPなのは確かですね。
(その缶詰状態は「市民ケーン」の脚本を60日で仕上げるためなのだが、

最初の部分も面白かったですね。
マンクは先立つ1ヶ月前に交通事故に遭い、大腿骨を骨折している。
(脇見運転でクラッシュしたのだが・・・)
半分寝たきりで秘書のリリー・コリンズに口述筆記を頼む身の上。

この映画は1930年〜1943年のアメリカ。
禁酒法時代の末期、
世界大恐慌で景気が悪く、
しかも第二次世界大戦が勃発、
ヒトラーも台頭しているが、アメリカがナチスの脅威を
感じるのはもう少し先。
そんな情勢の中で不況に喘ぎつつも夢を追っている映画会社、
パラマウントやMGMのお偉いさんや監督・脚本家も次々と、
登場するが、私は殆ど名前を知らない。
うーん、難しいというか、
頻繁に回顧シーンが入るんだけれど、もう少し話のポイントを
整理して枝葉を切り揃えてもらったら良かったけれど、
(多分のアメリカ白人のお年寄りには懐かしくて楽しいのでしょう)。

カリフォルニアの知事選の話も、新聞王ハスラーは候補シンクレアに
恨みがあって、フェイクニュースを流す。
ここはトランプの手法そっくり。
いつの時代も選挙戦は情報操作に踊らされるんですね。
この知事選。
市民ケーンでは、
新聞王ハスラーが自ら知事選に出馬します。
(ちなみにハスラーは民主党員)。
マリオンとの不倫を対立候補に新聞にデカデカと書かれます。
不倫報道で立候補を取り下げる。
この展開、
ハスラーの野望は政界進出して、行く行くは、大統領を
目指していたらしい。
しかしこのスキャンダルでハスラーの野望は絶たれたのかも
知れません。
ハスラーの愛人で女優のマリオン・デイヴィスを
アマンダ・サイフレッドがとても魅力的で可愛かったです。

マンクは飄々としているようでその実、
高見を目指して苦悶しつつ
映画史に燦然と輝く『市民ケーン』を書き上げた。

この映画の脚本はデヴッド・フィンチャー監督の実父
ジャック・フィンチャーが30年前に執筆して、映画化を夢見つつ
2002年に死去。
息子が父の夢を叶えた恰好ですね。

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「市民ケーン」を終わりまで観ました。
ケーン氏の死にはじまり死で終わる。

成功して昇り詰め、ザナドゥ(城で美術館ので博物館で動物園)
更なる野望のために政治家を目指すも、対立候補に
愛人スキャンダルを暴露されて、候補を辞退。
(不倫スキャンダルにより政治生命を絶たれたし、
ケーンは市民=ブルジョアジー=ために生きる、との理念も失う)
後世は屍のように孤独。

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「市民ケーン」の脚本を書くために苦悶し四苦八苦したマンク。

ラストはアカデミー賞脚本賞を受賞して、
目出度、目出度。

それにしてもフィンチャー監督。
親孝行しましたね(笑)

琥珀糖
caduceusさんのコメント
2023年2月2日

こちらこそ、いつもありがとうございます!私もナオミ・ワッツはダイアナとしてはハマリ役ではないかなと思いました。スペンサーのクリステン・スチュワートの方がはまってましたかね。
あっ、これはマンクでしたね(笑)Netflix系はなんとも難しい。どんな感じで定着していくんでしょうか。スクリーンで観ても十分なクオリティですが…。

caduceus
talismanさんのコメント
2023年2月2日

フィンチャーと親孝行は結びつけ難いけれど、親孝行ですね!

talisman