T2 トレインスポッティング : 映画評論・批評

T2 トレインスポッティング

劇場公開日 2017年4月8日
2017年4月4日更新 2017年4月8日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

前作とは異なるテーマで、より成熟したドラマへ。20年後ならではの重み

おそらくこの続編を誰よりも渇望しながら、誰よりも恐れていたのは監督のダニー・ボイル自身ではないか。20年というインターバルがそれを物語っている。1996年、ブリットポップ撩乱期に生まれた「トレイン・スポッティング」は、アンダーワールド、ブラーといった英国ミュージックを盛り込み、「人生を選べ」と言いながら無節操にドラッグに明け暮れる若者たちを描いていた。アーヴィン・ウェルシュの原作自体がすでにカルトだったが、映画はその世界を斬新なスタイルと弾けんばかりの熱量で映像化し、イギリスで社会的な現象となるヒットに繋がった。

だが今回はその20年後。まったく同じキャストが再結集したキャラクターたちはオッサンになり、かつてのような能天気なエネルギーも、あっけらかんとした楽観性も持ち合わせていない。むしろ人生に失望し、こんなはずではなかったという悔いを抱えている。そこをどう描くか、というのが本作の最大のポイントであっただろう。

結果から言うと、ボイルは賭けに勝った。これはたんに彼らのその後を写した続編ではなく、まったく異なる角度からみつめ、異なるテーマを描いたものだ。むしろインパクトで勝負していた前作よりもドラマとしてはより成熟したものになっている。

画像1

前作で金を持ち逃げしたレントンが、久しぶりに故郷に戻る。裏切った仲間たちにそれでも会わずにはいられないのは、他に行くところがないからだ。だが、更正するどころか相変わらずキレまくっている仲間たち。そんな彼らの男として、父として、人間としての痛すぎるあがきがしかし、感傷的になることなく、どこかに希望を残しながら描かれる。

音楽ファンが思わず膝を打ちたくなるような、新旧まざったサウンドトラックの使い方も巧い。とくに絶妙なのは、前作でテーマソングのように印象的だった曲を、現在のキャラクターの心情に合わせ重々しいリミックスに変えていること。さらに前作ファンなら“あの曲”がいつ響くのかとつい期待するところだが、レントンが20年ぶりに実家の自分の部屋に戻りかつてのレコード・コレクションを手にとったとき、思わずそれを掛けるものの一瞬でやめる。若い頃の思い出が蘇ることに対して、はたと怖くなるのだ。こんなディテールも、さすがボイルと納得させられる。

果たして、人生でまだ一度も負けを味わったことのないようなティーンたちが本作を観たらどんな感想を抱くのかはわからない。だが少なくとも、この懲りない男たちのパワーに圧倒されるだろうし、主人公たちと同世代ならなおさら、彼らの咆哮がぐさぐさと心に突き刺さるだろう。

佐藤久理子

関連コンテンツ

関連ニュース

関連ニュース

フォトギャラリー

DVD・ブルーレイ

映画レビュー

平均評価
3.8 3.8 (全98件)
  • 前作の狂気じみた妄想は半減し、年老いた若輩の坊が如何に現実に向かっ... 前作の狂気じみた妄想は半減し、年老いた若輩の坊が如何に現実に向かっているかが現れているのでは。 しかし舞台はかつて悪名高きリース。隠し扉の向こうの栽培やオビワン・ケノービよろしくなパブでのアクシ... ...続きを読む

    なべたく なべたくさん  2017年6月16日 00:07  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • ある意味、過去に勝っている 20年たって多少はダンディーさ身につけた大人の男の犯罪映画になるのかな?と思いきや、全然落ち着かずオッサンがドタバタすることによりドーショモナイ感がパワーアップ、これを観たことにより前作の若く汚... ...続きを読む

    クレナイナラ クレナイナラさん  2017年6月7日 09:25  評価:3.5
    このレビューに共感した/0人
  • 相変わらず もう20年も経ったのかと思うと感慨深い。 歳月は人の容姿を否応なしに変える。でも、人の本質や性分みたいなものは変わらないということを見せつけられる。20年前もこのどうしようもない不良達に少しだけ... ...続きを読む

    yshige yshigeさん  2017年6月3日 08:32  評価:3.5
    このレビューに共感した/0人
  • すべての映画レビュー
  • 映画レビューを書く
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

新作映画評論

新作映画評論の一覧を見る
Jobnavi