淵に立つのレビュー・感想・評価
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過去を知る旧友が現れ、人生が変わっていく
まずは一言浅野忠信の不気味な存在感に感服。
白いワイシャツを1番上のボタンまで止めているだけであの律儀さと不気味な感情を共存させるのは凄いと思った。その朝のが1度赤いTシャツを着ているだけでこんなに恐怖を感じさせるのもすごい。
恥ずかしながら筒井真理子さんと言う女優さん初めて見たけどファンになってしまった。控えめな色気、ちょっと疲れた感じが出ているところが非常にリアルに感じた。
ストーリーの方では服役した人のその後の人生やまた家族の罪を誰が背負うのかと言ったテーマが非常に重く感じられた。
展開は違うが東野圭吾の手紙なんかも思い出される作品だった。
純粋無垢
人が大きな不幸に見舞われた時に思う罪と罰。あの時に罪を犯したから、罰となって返ってきたのではないか。もしかするとバチがあたったのではないか。
約束を守ることを命や法律よりも大切にしていたという八坂は、ある意味「純粋無垢」の象徴なのかと思いました。真白な出で立ちで現れたのも「純粋無垢」を表しているのかと。
鈴岡が無意識下で感じていた「純粋無垢」な存在に対する「罪」の意識が、八坂という姿になって「罰」として現れ、蛍という「純粋無垢」な存在を傷つける。戒めが薄れた現代社会に対する寓話の様な作品でした。
筒井真理子の8年経過の変わり様が凄い
3週間で章江の見た目をがらりと変えたとは驚き。
1時間で驚きの展開をみせたと思ったら、息子が絡んでくるとは。
娘を持つ親がみるのはキツそう。
黒沢清っぽいホラーなのかと思ったら違うかった。
脚本も担当している監督によると、家族とは不条理だと。
オルガンからのエンディング曲がきれい。
河原のロケ地は吉野梅郷
宗教の関わり方にはサル型とネコ型と2通りある。っていうのは特に伏線ではなかった。
どっちがいいか
八坂の不気味さは秀逸。罪を償って友達を恨むのと、罪を隠して家庭を築き、その幸せを壊されるのと、どちらがいいか。どっちにしろその子供は関係ないのに!八坂は息子の存在を認識していたのだろうか。その他のキャストもものすごーく良かった。
どうにもならないもの、、、
エゴを正面から見据えて描ききった傑作。
出演している方すべて隙がなかったです。
「こころ」(市川崑監督)も同じテーマを描いてたけど、本作品は露骨だした。その分ゾッとしました。怖かったです。
あがいてもどうするこもできない。
突き詰めて考えるとああなってしまうのです、、、、、。
くれぐれも御用心を!!!
面白くなかった
不気味さ、筒井真理子さんをはじめ、俳優陣の秀逸な演技は素晴らしかった。
だけどなぁ…監督が男性だからなのか?
非現実的なんだよ設定が。
年頃に差し掛かるお嬢さんがいる家庭で、父親自らが無防備に住み込みで仕事なんてさせるか?とか、そのお嬢さんが完全に年頃になり、ましてや自分の意思を伝えられず身体にも障害があるのに、部屋で同じく年頃の男と2人きりにするか?とか、自宅で仕事する夫がいて、家の中で浮気するかよ、とかね。
あの夫婦の思慮が足らずアホすぎるせいで、ストーリーがリアリティに欠けていて、恐怖より圧倒的な不快感と苛立ちに支配されてしまった。
町工場を経営する夫婦とそこに同居することになった男。 11年前に殺...
町工場を経営する夫婦とそこに同居することになった男。
11年前に殺人を犯し服役した男は共犯者については一切話さず、それに怯える夫。
8年後に現れた若者は男の息子で、そこから少しずつ動き出してゆく。
夫婦の娘に障害を負ってから潔癖症になり、それが恐怖感をさらにあおる。筒井真理子の娘を思いながらも、恨み悲しみ絶望が見え隠れする演技に圧倒された。
最後のシーンで、夫がホントに誰を大切に思っているのかが露呈する。若者のその後はどうっだったのだろうと想像させるところは監督の手腕であろう。
ホラー映画である
厭な結末だと思った。決して驚きのあるものではないが、「家族」というのを、これほど否定したというか、あからさまに問題を張り付けてそのままにしておく・・みたいな、「希望の無さ」には、強い憂鬱感が沈殿する。
そして、この家族が決して特別なものではなく、ちょっとした仕草などは、もはや我々と同質であることが提示されているので、恐怖すら感じるのだ。
また、核心の「事件」については、具体的な描写が皆無であり、これについては観客にゆだねられているところももどかしい。
浅野忠信の装われた「白」の下に隠れる「赤」、筒井真理子が娘に着せる「赤」、筒井が見る「白い」シーツから覗かれる浅野の幻影などは、ホラーの領域に達しており、何かハネケの映画を観たような既視感に襲われた。
予想もつかなかった。
予告を見た感じで、浅野忠信が家族に侵食して壊して行く話やろと思っていたら、とんでもなく次に何が起こるのか予想も出来ずあっという間の2時間だった。
浅野忠信の存在感はやっぱり凄くて、高校生の頃に見てた若い頃の浅野忠信を思い出した。ただカッコ良いだけでなくて、怖さと掴み所のない感じ。二面性がある役をやると流石だなと思った。
川で急に本性を出すところも怖かったけど、白い繋ぎを脱いで赤Tシャツになるだけで、こんなにゾッとするか?とその演出にも驚いた。
だけど、一番の驚きというか、もはや畏怖?筒井真理子さんの8年に女優魂を見た。
幸せな時の方が家族のバランスが悪く、事件後に家族がまとまっているのが不思議だけどリアリティがあって面白かった。
一つだけ、何故あそこで終わるのだろうと言う疑問がまだ解決出来ずにいる。
罪の無い子供たちに救いの手を、罪深い親たちに赦しを
昨年公開された邦画の中でも特に高い評価を得た一作。
難解で見る者に考えも感じ方も委ね、決して万人受けする作品ではない。
結構覚悟して見たが、全てを理解出来たかとは別に、なかなかにじっくりと見応えがあった。
深田晃司監督の作品は恥ずかしながら本作が初めての鑑賞になるが、その深淵な語り口は見事だ。
小さな町工場を営む鈴岡家。幸せな家庭とは程遠いが、平淡で穏やかな生活。
ある日、父・利雄の旧友という八坂が住み込みで働く事になる。
突然の事に妻・章江と娘・蛍は困惑…。
八坂役の浅野忠信が登場しただけで何処か危険な雰囲気を感じる。
真っ白なシャツ。
腰低く、丁寧な言葉遣い。
実は八坂は前科者。
それを告白し、今は更正して誠実に生きる八坂に、蛍はオルガンを教えてくれる優しいおじさんと慕い、章江は親しみ以上の感情を抱く。
が…
皆で行った川遊びで、本心か冗談か、利雄に言い放った暴言。
別のあるシーンで、脱いだ作業着の下の真っ赤なシャツ。
八坂の中の何かの箍が外れた。
忌まわしい事件を起こして、八坂は姿を消す…。
いきなりだがここで、ドン引くくらいの自分なりの解釈を。
公式サイトやWikipediaなどでもそう説明されてるので、これは絶対間違ってる解釈だが、
八坂は本当にこの家族を破滅させたのか…?
内に秘めた欲と狂気でこの家族に一生消えない暗い傷痕を残した事はまず確か。
だが、しかし…、解せなかった点が二つ。
お互い邪な感情を抱いた章江と八坂。が、土壇場になって章江は八坂を拒絶。
この時章江はかなり強く突き放したのにも関わらず、八坂は「このクソアマ!」なんて言って(幼稚な発想でスマン…)殴るなどしなかった。
その抑えきれない衝動を蛍に向けた事になっているが…
蛍を怪我させたのは八坂だったのだろうか。
状況やその時の彼の感情から見ればまず間違いない。
が、ひょっとしたら怪我した蛍の傍にただ佇んでいただけかもしれない。
八坂が蛍に乱暴したというシーンは描かれない。それを思わせる“後の”シーンがあっただけで、勝手に忌まわしい何かがあったと思い込んでるだけかもしれない。
一方的に八坂を拒絶し、憎み、自分たちで勝手に苦しみと悲しみの泥沼へ…。
…と、まあ、これは本当に愚かで馬鹿な自分の解釈なので、ご勘弁を。
8年後。
蛍は事件の後遺症で車椅子の障害者に。
章江は蛍の介護に追われ、異常な潔癖症に。
利雄は探偵を雇い八坂を探していたが、何の手掛かりも掴めず。
もはや家族とは呼べないこの家族に、従業員として働く青年・孝司の存在が、静かな荒波を立てる…。
孝司はあの忌まわしい八坂の息子。
が、生まれて一度も父に会った事は無く、父に愛情と呼べる感情は抱いていないが、今ここで働いているのは、ちょっと父を知りたいという興味本意から。
彼は潔白だ。
彼の告白を機に、利雄と章江の心の闇があぶり出される…。
八坂とは共犯者であった事を告白、妻が八坂とデキていた事も知っていた利雄。今の蛍は自分と妻への罰だと言う。
昔聖母の如く迷える八坂に救いの手を差し伸ばしたのに、罪深い八坂に触れたせいで穢れ、その穢れた手の汚れを落とそうと必死の章江。終盤八坂と思われる男の居場所が分かり、孝司を同行させたのは、八坂の目の前で孝司を殺す為…。
二人共人の親なのに、何故こんな事が言える?
八坂は忌まわしいが、この二人こそ罪深い。
「俺、殺されてもいいッスよ」
子供に親の罪は無い。
子供にこんな事を言わせるな。
章江は蛍と共に終わらせようとする。
子供を道添にするな。
“人違い”は滑稽な迷走。
迷い、疲れ果て、行き着き足ったのは、絶望の淵。
最後の最後、罪深い親に一筋の赦しが。
どうか、子供に救いを…。
監督がなぜこの映画を撮りたかったのか
上手い映画と思います。ありきたりでない。役者も、リアリティがある。よく出来ていると思います。
でも、そもそも映画ってなんなのかを考えてしまいました。家族、友情、愛、信頼、優しさ、努力、思いやり等々、善や美徳と思われているものが、実はカタチだけ、上っ面なものもある。本音と建て前、自己中心、無関心、支配欲。本能を理性が飼いならしたつもりが、突発的なリビドーで起こる不条理な事件は、世間に溢れています。普通な人にだって闇があるだろうし、怖い、不気味。そんなことは普通に生きている人の多くは、イチイチ言わなくてもわかっていると思うのです。自分の胸に手を当ててみれば。完璧なものはない。うさん臭い。
だけどだからと言って全部が全部、嘘で偽善、とも言い切れない。少しは人間にもいい面があろうよと、前向きに生きていくエネルギーを貰うために、映画だって観るんだと思います。その意味では、この映画は、オカネを出してネガティブなエネルギーを買うようなもの。才能はあっても、何を伝えたいかポジティブな目的がないと、ブラックホールみたいな怖いものが生まれてしまいます。不用意に覗くと闇に落ちかねない。要注意。淵に立ってはいけません。
辛口ですみません。
家庭・人生、翻弄される
最初から最後まで息苦しかった。
八坂が一家に到来してからもうすでに嫌な予感がする。
なんだろう。
確かに「家族ゲーム」を想起させるがそれもまた違う。
最初からお母さんの昭恵おかしかった。
こういう家庭って自ら崩壊への道を歩いていく。
当然元々そういう「罰」もありうる。
蛍の悲劇が発生した後さらに重くなったこの映画だが、
最後どういう話か主旨を掴めにくいという一面もある。
八坂の友達を裏切らないという信念も最初からいい糸になってるが、その人が消えることにつれ、あんまり意味のないことになる。
だから、
どういう話だろう。
しかもエンディングも好きじゃない。
どういうこと?
オープンして意味あるのかあー
せっかくいい演技を見せたキャストが集まったのに、
作品自体意味主旨不明。
こんな作品どこから意義を見出すべき?
残念ながら4点以上無理。
親の罰
色の中では、僕は白色が一番嫌いである。
白色というのはとかくキレイ過ぎる。
自身を真っ白く着飾るのは、私は清廉潔白ですよと
殊更にアピールしているようで嘘臭くて信用ならないし、
でなくても「汚れる余地がある」という不安感を覚える。
(まあ学生時代の約2年間、真っ白な服を着て
真っ白な部屋にカンヅメで、早朝から深夜まで
独り黙々作業し続けたのが若干トラウマなのも大きい)
なので、浅野忠信演じる八坂には、登場時から
不穏な空気を感じずにはいられなかった。
綺麗過ぎる白シャツと作業着、綺麗過ぎる言動。
主人公やその妻子に優しく丁寧に接する姿を
見ても、どこか底が知れず不気味なのである。
その白々しいほど整った身なりが変化し始めるのは、
川の淵で主人公・利雄に侮蔑の言葉を吐いてから。
あそこから彼の言動は少しずつ助長し始める。
それに合わせるかのように作業着には汚れが
目立ち始め、終いには彼はその作業着を脱ぎ、
強い衝動を連想させる赤色のシャツをあらわにする。
* * *
いや、僕は彼が最初から赤い本性を隠していたとは思わない。
最初の彼は本気で更生しようとしていたんだろうと思う。
けれどきっと、利雄の妻子と親しくなるにつれ、自分が
(あんな小さな男の為に)犠牲にした年月の重さを
思い知らされ、怒りを蓄積させていったのだと思う。
そして、もう決して手に入れられないもの、
他人に取られてしまったものを叩き壊したい
という衝動に突然駆られたのだと思う。
* * *
まあ、そんな行為を正当化できる訳もない。
僕に言わせれば親の罰はあくまで親の罰で、
その罰を子どもが背負うなんてのは間違ってる。
利雄はテメエ可愛さで妻子を八坂へ差し出したようなものだ。
おまけに娘の不幸は自身が招いた事態だと自覚していながら、
「事件のお陰でやっと家族になれた」だと宣うなど、
もはや愚劣ですらある。どうしてお前が罰を負わず
妻子が苦しむのかと横っ面を張り倒したくなる。
一方で八坂が罪を犯したばかりに、その息子は
復讐の為にお前を殺すと脅される。
「いいっすよ、自分、死んでも。それで気が済むんなら。」
そんな台詞を息子に吐かせる立場に追い込んじゃ駄目だよ。
映画の最後に、利雄は全てのツケを支払う羽目になった。
だが、それよりもっと大きなツケを支払ったのは周囲の人々だ。
娘が泳ぎ去る幻は、彼女がようやく自由になれた
姿だったのだろうか。それが唯一の救いだろうか。
中盤の4人で寝そべる姿がそのまま写真黎明期の
遺体記念写真のようになってしまうカットは、
悲劇と言うべきか皮肉と言うべきか。
* * *
映画のタイトルにある淵とは何だったのだろう。
自制を失い衝動的に罪を犯すその境界?
平穏な日常からドン底へと落ちるその境界?
気付かない内に人は淵のスレスレを歩いているの
かもしれないし、あるいは思いもよらぬ誰かから
手を引かれて、淵に引きずり込まれるのかも。
八坂はきっと映画の初めからそういう淵に立っていて、
そして最後、同じ淵に立ったあの妻を嗤ったのだろう。
* * *
相当に救いの無い物語なので万人にオススメは
できないが、静かで不気味な緊張感が充満する
サスペンス作として見応えがあった。
ただ、現代的であれ全時代的であれ、何かしらの
テーマが心に残る作品というよりは、人間心理を
主軸としたミニマムなサスペンス作に終始した
印象が拭えず、その点が不満点といえば不満点かな。
雰囲気が似て感じた『葛城事件』と比較して
そこでやや落とすが、観て損ナシの3.5判定で。
<2016.11.19鑑賞>
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