劇場公開日 2015年8月8日

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「戦時下の女達」この国の空 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0戦時下の女達

2017年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

萌える

戦時下の庶民の暮らしはこんな感じだったのかなぁと、興味深く見させてもらいました。
終戦間近の東京とあらば、もっと無残な光景を想像していましたが、この映画の舞台となった杉並辺りは、劇中を見る限りでは思いのほか空襲を免れることができていたのでしょうかね。
そんな普通では無い状況ながら、普通では無いなりに、つつましやかな暮らしがあったんだなと、まあ当たり前のことではあるのですが、なかなかこう言うことを知る機会も無いもので、地味な内容ではありましたが最後まで興味深く見ることができました。
まあちょっと場所が違っただけで、また劇中とは全然違った生活状況ではあったのでしょうけどね。

しかしこの映画は、とにかく食べるシーンが印象的でしたね。
やはり生きることは食べること、ってことなんでしょうか、意外と戦時下でも淡々と、思ったよりは悲壮感に苛まされることなく暮らしている中で、でも食べることに関してだけは、いろいろとあったようで・・・。
特に食料を巡った里子の母親と伯母のいがみ合いは、なかなかのインパクトでした、あんな状況下でも、人間ってああ言った行動とってしまう生き物なんだなと、妙に生々しさを感じた一コマでした。

そして戦時下であっても、やはり女は女、そんな女盛りの歳に・・・一番綺麗な時に、誰も周りに男がいない、そんな切なさ・焦燥感が、二階堂ふみの演技によって、思いっ切り見る側にも伝わってきましたね。
劇中とは違って男の人を知ることもなく焼け爛れた方が多くいたのだろうと考えると、胸が苦しくなります。
しかし化粧をしてなくても美しく艶っぽい二階堂ふみはさすがの存在感、説得力がありました、後姿ヌードも綺麗でした、言葉遣いもまるで当時の人がそこにいるようで、素晴らしかったなと思いました。
母親役の工藤夕貴もいい味出してましたね、あの時代ならではの複雑な母親としての心情と女としての心情に、思わず共感でした。

近隣で唯一戦争に行かなかった若い男、と言ってももうすぐ40なのに若いと言われるその状況が、どれだけ男がいなかったのかを如実に表していましたが、長谷川博己演じる市毛と里子の恋模様は、まさしく時代を象徴するような恋模様で、昭和のエロティックさを醸し出した艶かしさがとても印象的な関係性でした。
しかし長谷川博己が妙にエロかったなぁ、逆に彼だけリアルじゃない感じではありましたが、映画的にはOKですね。
それにしてもラストがそう来るとは、まいりました、今後どうなっていくのやら・・・。

スペランカー