キートンの栃面棒

劇場公開日:

解説

「海底王キートン」に次ぐバスター・キートン氏主演映画でロイ・クーパー・メグルー氏とジョー・ミッチェル氏との合作舞台劇を骨子として例の如くジャン・ハヴェズ氏とクライド・ブラックマン氏とが書き卸した台本によりキートン氏が監督した。キートン氏の相手役はルース・ドワイヤー嬢で、T・ロイ・バーンズ氏、スニッツ・エドワーズ氏等が助演している。1973年6月16日より開催された特集上映「ハロー!キートン」(フランス映画社配給)にて邦題を「キートンのセブン・チャンス」と改題して公開。

1925年製作/56分/アメリカ
原題:Seven Chances
配給:ヤマニ洋行
劇場公開日:1926年7月15日

ストーリー

ジェームズ・シャノンの伯父さんは風変わりな男だった。そうして奇抜な遺言状を残して死んだ。その遺言状によると伯父さんが指定した時間にジェームズが結婚すれば700万ドルの遺産を譲り受けるのだった。ジェームズには恋人があった。彼は結婚をしてくれと頼んだ。しかし虫の居所でも悪かったのか彼女は承諾しなかった。それでもジェームズは更に7度結婚を申し込んだ。そうして7度肘鉄砲を食った。彼は考えた。かくては700万ドルをみすみす失わねばならぬ。彼は意を決して「求妻」の広告を新聞に出した。財産狙いの花嫁候補者は雲霞の如くジェームズに迫った。そうしてジェームズは危うく八つ裂きにされようとした。振り切って逃げ出した女たちは追いかけて来た。彼は命掛けで回った。そうして最後に恋人に会ってその承諾を得た。結婚式は指定時刻に行われた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0まさかこれを生身でやったのか???

2023年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

派手な映像技術に慣れきった昨今、改めてサイレント映画を観るとなんと面白いことか。
断片的なシーン走っていたが「セブン・チャンス」を通してみたのは初めてだ。

CGも合成技術もない時代に、まさかこれを生身でやったのか?というような正気でないとしか思えないシーンが続く。話の内容はたいした筋じゃないのだが、クレーンに吊り下げられたり、本物の汽車の前を轢かれる寸前で横切る映像などまさしくそれだ。
そこまでさせる「映画」というものの魔力を改めて考えさせられる。デイミアン・チャゼル監督が「バビロン」で描いたサイレント映画時代の狂気は決して誇張ではなかったのだ。

サイレント映画は台詞もモノローグも映像技術ないだけにひたすら動きに特化して伝える必要がある、果たして現代の役者でここまで動きで魅せられる役者がいるだろうか。

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Jax

4.5繊細かつ大胆な傑作活劇

2023年1月14日
iPhoneアプリから投稿

女が大挙し岩が転がりキートンが全速力で逃げる。それだけでもうアクション映画としては及第点なのに、キートンは見せ方やプロセスにもしっかりこだわる。

たとえばキートンが教会で花嫁候補を待つシーン。カメラは壇上から座席全体を一望する位置にセットされ、その向かって右側の座席にキートンがちょこんと腰かける。左から後方にかけて広がる決定的な空白は、それが何物かによって満たされる未来を予感させる。そして予感の通り、花嫁候補の女が一人また一人と教会に入ってきて、空いている席を埋めていく。ほどなく画面は女で埋め尽くされる。しかし教会の入り口にはまだまだ女が集まってくる。いよいよ混沌が最高潮に達したとき、場にわだかまったフラストレーションの矛先が一斉にキートンに向けられる。そして壮大な追走劇が幕を開ける。静から動へのこのなめらかで鮮やかな発展。キートンには映画的力学なるものが手に取るようにわかっていたのだと思う。

他にも瞠目すべき箇所がいくつもある。キートンが7人の女に次々フラれていくシーンは、そのどれもがギミックとバラエティに富んでいる。無声映画において、セリフ=字幕の挿入はそれ自体が画面運動の連続性を断ち切るスポイラーになる。ゆえにキートンの告白もそれに対する女たちの返答も極力言葉を排して行われる。中でもキートンが2階にいる女に「好きです」と書かれた紙を投げたのに対し、散り散りの紙吹雪という形で「NO」が返ってくるくだりは見事だった。

またキートンが車に乗り込むシーンで、キートンと車の位置はそのままに背景だけがディゾルヴで切り替わることで場所の移動が示されるというのも面白い。車での複数回の移動という、プロット上は必要不可欠だが映像的には魅力のないシークエンスをバッサリ斬り落とす勇気もすごいし、そこをウィットに富んだ演出で穴埋めできる技量もすごい。

あるいは序盤こそ弱々しげな青年に過ぎないキートンが終盤になるとジャッキー・チェンも泡を吹いてひっくり返りそうな空前絶後のアクションを披露してくれるというギャップも見所だ。キートンが全力疾走してるときのあの爽快感というか、風の抵抗を微塵も受けてなさそうな感じは本当に何なんだろう。いつ見ても清々しい。

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因果

4.0邦題が最悪。セブンチャンスだろう!

2022年10月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ
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