劇場公開日 2012年4月7日

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「映画本来の魅力に溢れた粋でキュートな小品」アーティスト 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画本来の魅力に溢れた粋でキュートな小品

2012年4月25日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

本年度アカデミー賞作品賞授賞作!
なぁんて囃し立てるほどにはアカデミー賞を信頼してる訳では無い僕です。
そりゃまあクオリティの高い作品を紹介してくれる意味ではありがたいが、
『トゥルーマンショー』のジム・キャリーを主演男優賞に
ノミネートすらしなかった連中を完全に信頼する事はできぬッ!(いつの話だ)

まあアカデミー賞に納得がいかなかった例を挙げればきりが無いが、
そんなのは作品自体が面白いかどうかにはまるで関係の無い話。

で、本作である。
2012年にまさかの無声映画である。
僕が今までに観た無声映画なんて『カリガリ博士』と『吸血鬼ノスフェラトゥ』だけですよ。
どちらもちょいと眠気に耐えながら観ましたよ。
本作も眠くならんかと不安だったが……(←オイッ)

『アーティスト』は面白かった!
物語自体に飛び抜けた部分は無いが、
観せる(魅せる)アイデアと役者の魅力に溢れた、
とても“粋”でキュートな映画でした。

普通の映画を小説と見立てるなら、この映画には短歌や川柳に繋がる“粋さ”がある。
表現形態に予め制限があるから、ひとつひとつのものが背負う意味も必然的に大きくなる。
暗示、遊び、仄めかし、ダブルミーニング。
時には心臓ド真ん中を直撃する豪速球のストレート。
そういった重みのある表現がどうしても要求される訳で、
だからこそ頭を搾りに搾って独創的なアイデアを産み出さざるを得ない訳で、
それがこの映画のような洒落っ気や粋さに繋がるのかも知れんですね。
『BANG!』という擬音の使い方や、“スーツで1人2役”のシーンなんて
とびきりロマンティック。

そして役者陣。
笑顔の素敵な主演2人は言わずもがな。
誠実な執事を演じたJ・クロムウェル、
利益優先の社長さんを演じたJ・グッドマン、
その他脇役に至るまでみんな魅力的で、頬を緩ませずにはいられない。

この映画は往年の無声映画の魅力を僕らに教えてくれるだけでなく、
(『カリガリ博士』で眠気に襲われた自分が言えた義理じゃないケド)
役者の魅力と優れたアイデアを引き出す努力さえあれば、
巨額の予算や高度なCGなんて無くても人を惹き付ける映画が作れると証明しているようだ。

以上!
アカデミー賞授賞おめでとうございますです。
個人的には『ヒューゴ〜』に採って欲しかったけどね……
あ、けど、名犬アギーのパルムドッグ賞授賞には納得!
わんダフル!

<2012/4/8鑑賞>

浮遊きびなご