クロエ : 映画評論・批評

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クロエ

劇場公開日 2011年5月28日
2011年5月24日更新 2011年5月28日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

リメイクの“人選”が功を奏した魅惑的な官能サスペンス

先頃の「ツーリスト」が一例だが、さほど知名度の高くないヨーロッパ映画のリメイク権を買い、わかりやすく派手にしつらえ直すのはハリウッドの十八番だ。そのパターンを踏襲すれば、2003年の「恍惚」が元ネタの本作は気恥ずかしい昼メロになりかねない企画。ところが製作者アイバン・ライトマンの絶妙なスタッフ&キャストの人選により、実にスリリングな仕上がりとなった。

アトム・エゴヤン監督率いるチームに、「セクレタリー」「毛皮のエロス」の脚本家が参加。何と“アブノーマル”な期待をそそる顔ぶれだろうか。案の定、序盤から鏡やガラスを用いたショットが頻出し、アマンダ・セイフライド扮する娼婦はまるで鏡の向こう側からやってきたかのように、もうひとりの主人公ジュリアン・ムーアの前に現れる。若く美しく謎めいた娼婦は、もしやミッドエイジ・クライシスの憂鬱に囚われた人妻の潜在願望的分身なのか。エゴヤン監督はそんな突飛な解釈の余地を残しつつ、エロティックな嘘と妄想がふたりの女の間を行き来し、膨張していく様を魅惑的に紡ぎ出す。

ファンタジーを渇望する女と、他人のファンタジーを叶える女。後者の娼婦が自我に目覚め、人妻の領域を暴力的に浸食していくクライマックスはいかにもハリウッド映画的だが、ここでもガラスの演出が冴えている。現実とファンタジーの境界をもガシャンと粉砕する破壊音こそは、この物語を締めくくるにふさわしい。まさに身も心も壊れゆくファムファタールに血を通わせたセイフライドのしたたかな演技も、ぜひご賞味あれ。

高橋諭治

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