転々

劇場公開日:

解説

「時効警察」のオダギリジョー&三木聡監督が再タッグを組んで放つロードムービー。幼い頃に両親に捨てられた孤独な青年・文哉。現在大学8年生の彼は、いつの間にか84万円もの借金を抱えていた。返済期限が迫ったある日、彼は借金取りの福原から奇妙な提案を持ちかけられる。それは、吉祥寺から霞ヶ関まで福原と一緒に散歩するだけで借金がチャラになり、100万円の報酬までもらえるというものだった……。

2007年製作/101分/日本
配給:スタイルジャム
劇場公開日:2007年11月10日

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(c)2007「転々」フィルムパートナーズ

映画レビュー

4.0転々としてみたくなる作品

2023年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

三浦友和さんといえば二枚目路線というイメージが強かったんだけど、これは全く違う。
不思議な役柄がとても良かったです。
引き出しの多い役者さんだったのですね。

オダギリジョーさんは良くも悪くもいつもどおりという感じがしました。
(決して嫌いではないんですけどね・・・。)
彼らが回った散歩ルートを同じように転々としてみたいです。

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ゆの

4.0【”幸せは知らないうちに、じんわりとやって来る・・。”寂しさを抱えた年の離れた男二人が、東京をブラブラと散歩する物語。】

2022年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作は、三木聡監督作の中でも、特に好きな映画である。-

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・幼き時に、父親に捨てられた男、竹村(オダギリジョー)は大学生だが、借金を抱えている。彼には、父と遊んだ記憶がない。動物園にも行っていないし、ジェットコースターにも乗った事はない。

・そんな、竹村の所に、ある日、福原(三浦友和)という借金取りの中年男がやってくる。彼は”俺が満足するまで、歩く”ことに、付き合えば借金はチャラにすると言い、二人はオカシナ散歩に出かける。
ー 劇中でも、語られるが福原は、愛した妻が浮気をしていた事に気付き、”殺してしまった”と淡々という。竹村は、
一度だけホテルに誘われた人妻が、福原の妻ではないか・・、と恐れる・・。-

・二人が歩く”想いでの場所巡り”
 福原が妻と喧嘩した後に訪れたという”愛玉子(オーギョーチ)の店”のシーンや、思い出の神社を訪れるシーン。

・福原が、以前結婚式の時に”疑似夫婦”を演じたマキコ(小泉今日子)の家に転がり込むシーン。そこにやってきたふふみ(吉高由里子)は、マキコと福原が本当の夫婦だと思っている。
 そして、竹村は福原と念願のジェットコースターに一緒に乗り、徐々に彼らは疑似家族の態を成していく。
 ある日、福原が”カレーが食べたい”と言い(福原は、霞が関の警視庁に出頭する前にカレーが食べたいと言っている。)、4人で食卓を囲むシーンで竹村は”カレーが辛い”と涙を流す・・。

<今作は、三木監督のシュールな笑いを随所にバラまきながらも、竹村と福原の疑似親子にも見える散歩シーンが、とても良いのである。>

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NOBU

5.0じわる

2022年7月31日
PCから投稿

日本映画の課題としてどやの払拭があると思う。
どやとは承認欲求のようなものだ。

たとえばテレビドラマのSPECはさいしょのころは面白かった。
だが、だんだん疲弊して、やがてあざとさを感じるようになった。

『(中略)一方、今井舞は同じく『週刊文春』のドラマ記事で「今期ワースト」「全てが『これ、面白いでしょ』の押しつけ」などと批判している。』
(ウィキペディア「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」より)

どやとは謂わば「『これ、面白いでしょ』の押しつけ」のことだ。

“奇”をえがくとき、あるいはバイオレンスやSFやはっちゃけたorぶっとんだ設定を表現するばあい、日本映画ではつくりての勝ち誇り=どやがかならず見えてしまう。──ばかりか、それに価値をおいていることさえある。

たとえば北野武のアウトレイジには“威嚇”の目的がある。
北野武はバイオレンス映画の製作をつうじて「おれはこわい奴なんだぞ、なれなれしくすんなや」と言いたいわけ。

北野武のみならず、多くの日本のバイオレンス映画において、作家はかならずしもそれをつくりたかったわけではない。
過剰なバイオレンス描写をつうじて、じぶんの立場に箔をつけることが目的なのだ。とうぜんどやは丸見えになる。
たとえば園子温の映画ではどのカットにもずっと監督の得意顔が見えてしまう。

よってどやの払拭は日本映画の課題といえる──のだが、むろんそれは観衆の側からみた課題であって、つくり手であるほとんどの監督方々はそんなことは考えていないだろう。

ところで三木聡監督の映画にはどやを感じない。
唯一無二のへんな映画をつくる作家だが、“奇”なことを「どやっている」気配がない。

三木聡映画の特長として、暴力や性や差別的表現のなさがあげられる。というか、登場人物には社会性がまるでない。どうやって生きているのか、解らない。意識的に、人間臭を排除している。その頑なな態度は作家性だと思う。三木聡映画は三木聡がつくったことがわかる意匠をもっている。

とはいえ形容するのはむずかしい。
新劇や小劇場に親しんでいるひとなら演劇的と思うのかもしれない。
ストーリー上に無数の小ネタが展開される。
その小ネタが、陳套なあるあるではなく、ねらっている気配が希薄で、過激/卑猥/差別がなく、どやがない──から安心して面白い。

亀は意外と速く泳ぐ(2005)、インスタント沼(2009)、なんど見ても楽しい。

本作も同等に楽しいが、たわいもないストーリー上を小ネタが波状に連射される亀やインスタントにくらべて、“家族”という比較的どっしりしたテーマが(転々には)あった。──ような気がしている。

『ジャンル分類は困難な作品で、非常に深刻な背景を持つ物語が、明るく淡々としたコメディ風味で綴られる。』──と転々のウィキペディアには書いてあるが、あらためて思い返すと転々は是枝裕和のような“家族”のはなしだったと思う。

家で集ってカレーを食べるほどなのに、オダギリジョーも三浦友和も小泉今日子も吉高由里子も、みんな赤の他人。なのに四人は家族のように温かかった。

それが狙ったペーソスなのか、ぐうぜんに醸し出されたペーソスなのかは解らないが、転々には万引き家族やベイビーブローカーとおなじ、お互いを思いやる仮家族の姿があった。

だから終局で三浦友和が去っていくところはさびしい。
たとえ短いあいだでも家族のふりをした者どうしは、ばあいによっては本物の家族よりも居心地がいい“家族”のぬくもりをおぼえてしまう──。
とはいえ転々には感動へもっていきたい気配がなかったし“どや”もなかった。にもかかわらず、じわりときた、とてもめずらしく、きわめて大人な映画だった。

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津次郎

4.5クズ男達の間に芽生える愛しき感情

2022年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

オダギリジョーと三浦友和という、ダメ男を演じさせたらトップ2の二人が、まさにいい味を出してくれています。
特に三浦友和。『台風クラブ』で観たクズ男ぶりとは、またひと味違うクズっぷりがたまらない。
他にもクズ男で何本か出演してましたね。
すぐに思い出せないけれど。
オダギリジョーも、ドラマ『おかしの家』につながるクズ男ぶりが素敵すぎます。
このドラマ『おかしの家』は傑作だと思うのだけど、今はParaviでしか観れないのね。
いずれにせよ、僕はクズ男を観るのが好きなのです。
また、脇を固める小泉今日子、吉高由里子、ふせえりら共演陣もコミカルで素晴らしい。
おまけに僕の大好物の、ロードムービー。
ああ、濃密な100分間であった。

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まこべえ
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