愛と希望の街

解説

ある小都市の駅前。靴磨きの女たちに混じって一人の少年が鳩を売っていた。そこへ会社役員の令嬢京子が通りかかり、その鳩を七百円で買う。少年はお金が要るから鳩を売るのだと言う。京子は同情するが、実は鳩の帰巣本能を利用した巧みな金儲けだった……。「鳩を売る少年」のタイトルで書かれた大島オリジナルのシナリオで、若干27歳で監督に抜擢された大島渚監督の記念すべき長編デビュー作。

1959年製作/62分/日本

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映画レビュー

5.0鳩、 もらったことがあります。 逃げちゃいました。

2023年10月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

·

鳩、
もらったことがあります。
逃げちゃいました。
2ヶ月経って、もうそろそろ良いかなーと小屋の扉を少し開けてみたところ、あっという間に大空に飛び去ってしまいました。小学生の頃の懐かしい思い出。
元の飼い主さんからは半日後に電話がありましたよ
「鳩、逃げたでしょ?笑」って。

・・・・・・・・・・・・・

1959年
大島渚
27歳

アーティストの作品、特に音楽のCDアルバムを選ぶとき「一番最初に出したものを買ってみる」と言った友人がいた。
それは多分に荒削りだし、未完成なところもきっとあるのだけれど、そのミュージシャンの一番良いところが原石の形ではっきり現れているからなんだ、と。

先日このサイトで、是枝裕和の監督初作品「幻の光」への拙レビューに、フォロアーさんから共感を頂いた。
あの「幻の光」は、そういえば是枝さんの最初の映画だったのだ。

それで今回は大島渚も、その初仕事を見せてもらいたくなり、DVDを借りて観てみることにしたわけだ。

27歳の大島渚、
本人の手によるオリジナル脚本とメガホン。長編初作品。
原題は「鳩を売る少年」。

松竹株式会社が興行封切りしたときの邦題が、本来の脚本から改題されて「愛と希望の街」とされてしまったことから、あの頃のアイドル=坂本九や吉永小百合出演作のような、朗らで爽やかな青春ドラマなのかと思いきや
・・とんでもなかった。
題名に“騙されて”、この映画から黒い衝撃を受けた映画ファンたちは、世の中に五万といたことだろう。
社会派ネオリアリズモの重厚な不条理劇であった。

秋山先生が、掘っ立て小屋に教え子正雄を訪ね、正雄の詐欺まがいの「ハト売り行為が就職試験の不合格の理由だった」と告げるところでの、
あの教師の言葉
・今夜わたし一人で思い詰めることは出来なかったので事実をあなたに告げに来た
・でも明日は元気に学校で会いましょうね
が大変胸を打った。
立場も年齢も超えて、貧困にあえぐ教え子と一緒に苦んだ彼女。
ここまで担任する生徒のことを思いやってくれるあり得ない姿だ。
「私だって生活に困れば、ハトではなく、自分の体を売ることだろう」と、悲しみと怒りのこもった静かな啖呵をきって、ブルジョアの恋人をたじたじとさせたシーン。

眞鍋理一郎のBGMが沈鬱で、冒頭からこれは「青い山脈」ではなかったことを我々は思い知らされるのだ。

ちなみに本作品の2年後には大島は「日本の夜と霧」を発表。「鳩を売る少年」のシナリオを高く買い、大島渚を監督に抜擢した松竹の社長城戸四郎自身によって、上映が4日目にして停止され、
大島は松竹を退社している。

情動に流されて二つの階級を仲直りさせるとか、しんみりと心に温かいものが流れるとか、そんなハッピーエンドとは無縁の、告発映画だ。

切れ者大島渚は、
その誕生からして、原石の鋭利な形状で、手に取る者に殺傷を与える凄物だった。

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きりん

4.0ルールはルール

2023年6月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

難しい

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tabotyoko

3.0ずれた価値観

2023年4月20日
Androidアプリから投稿

貧しさからの工夫より根拠の無い取り繕った社会正義が、貧富の差より行き過ぎた倫理観が世の中を狂わせていると気付かせた作品、それが大島監督の狙いかは分からないが。

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なんてこった

0.5長い

2023年4月3日
PCから投稿

何てクソ真面目な事をクソ真面目に書いてる映画なんだ。これだから頭がいい人が書いた作品は面白くない。それともこれは社会問題を扱ってるのでなくて男と女の優位な立場を獲得するための争いを描いているのか?どっちにしても頭がいいやつの書く話は面白くないわ。

と思った。

ついでに書くと、この少年は甘い。先生も高望みしすぎ。母親が病気で働けないなら学校から帰ったらすぐに工場で働くべきだ。俺のいとこはそうしていた。家で1分も勉強することなく学校の成績は常にトップクラス。しかし中学卒業と同時に小さな町工場に就職。高校は当然のごとく夜学だった。

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タンバラライ
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