起終点駅 ターミナル : 特集
「人生を変える出会い」をあなたは経験したことがありますか?
見る者に《前向きな心》を与えてくれる、あたたかな感動作
佐藤浩市と本田翼、日本を代表する実力派俳優と、今をときめく新進女優の映画初顔合わせが話題を集める感動作「起終点駅 ターミナル」が11月7日に公開される。My Little Loverが11年ぶりに映画主題歌を手掛け、「第28回東京国際映画祭」のクロージング作品にも選出された同作が、見る者に与える力とは?
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■たどり着いた「終着駅」は、明日へとつながる「始発駅」でもある──
悲しみから立ち上がる2人の物語が、見終わった後、少しの幸せをくれる
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思いがけないほんの小さな出会いが、その後の自分の人生を大きく変えることになる──そんな、後から考えれば決して“小さく”はなかった運命的な出会いを、あなたは体験したことがあるだろうか。
本作「起終点駅 ターミナル」は、北海道・釧路を舞台に、人生を前向きに生きる術を失ってしまった男と女が偶然出会い、心を通わせ、再び一歩を踏み出そうとする姿を描くヒューマン・ストーリー。喪失感に見舞われていたふたりが孤独を分かち合い、21日間の交流を経て、少しずつ再生していくさまが、見る者にほんの少しの幸せとあたたかな勇気を与えてくれるのだ。
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ある出来事をきっかけに裁判官の職を捨てて、果ての街・釧路へとやってきた鷲田完治(佐藤浩市)。以来25年間、国選弁護専門の弁護士としてひっそりと暮らしてきた彼の前に、誰にも頼ることなく生きてきたひとりの女性・椎名敦子(本田翼)が被告人として現れる。当初は不安そうな表情を浮かべる敦子と、個人からの依頼は受けないという頑固な完治。そのやりとりに観客はハラハラさせられるが、ふたりの表情を柔らかくするきっかけは、長年のひとり暮らし故の、熟練した料理の腕前を持つ完治がふるまう家庭料理。スクリーンいっぱいに映し出されるザンギやイクラといった北海道ならではの名産物。美味しそうな料理の数々に、見る者の心もあたたかくなってしまうのだ。
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突然の訪問者に驚きながらも、人と笑い合うことの幸せをかみしめる完治。高熱に倒れ、完治の懸命な看病を受ける敦子もまた、空虚だった心が満たされていく喜びを感じる。同じ気持ちで互いを心配し合えるほど、幸せに満ちた状況はない。見る側もまた、自分にとって大切な人は誰か、そして日々、家族や友人に囲まれている状況を思わずにはいられなくなる。ふたりの固まっていた心がゆっくりと解きほぐされていく様子に、きっと優しい気持ちになれるはず。敦子が10年ぶりに訪れた故郷で目撃する悲しい光景に切なくなりつつも、彼女の中でわき上がる、明日へ進もうとする希望にも勇気づけられるはずだ。
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
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故郷で見つけた希望を胸に、敦子は新たな街へと旅立つことを決意する。鉄道の「終着駅」は、進む方向が変われば同時に「始発駅」にもなる。見送ってくれた完治を抱きしめる姿は名シーンのひとつであり、敦子の完治に対する感謝と、敦子を祝福する完治のどちらの気持ちにも同時に共感できてしまう。「次は先生の番」という敦子の台詞の通りに、見る側もまた、完治を自然に応援する気持ちが湧いてくる。心に罪を抱え、しょく罪の人生を過ごすだけだった男もまた、運命的な出会いをきっかけに人生の時計を再び動かそうとする。果たして、ふたりの先に待つものは……。完治と敦子が未来へ踏み出そうとする姿は、観客の心も勇気でいっぱいにするだろう。
■日本映画の王道俳優・佐藤浩市×ニューヒロイン・本田翼
“思いがけない”ハーモニーが生み出す「世代を超えた共感」
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本作の最大の見どころは、日本映画を代表する実力派俳優・佐藤浩市と、気鋭のニューヒロイン・本田翼という、魅力あふれる2つの才能が生み出すハーモニーだ。1981年にデビューして以来、見応えある骨太作からコメディ、エンターテインメント大作まで多くの話題作に出演し、日本映画を引っ張る看板役者のひとりとして存在感を放ってきた佐藤。そして、モデルから女優として11年にドラマデビュー、以後は数々の映画、ドラマで着実にキャリアと魅力を磨いてきた本田。このありそうでなかった“思いがけない”顔合わせが本作で実現したのだ。
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
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年齢はかなり違うが、ふたりが演じるのは、暗い過去を背負ったために心を閉ざし、孤独の中でいわば「人生の時計」を止めてしまった点で共通する男女。ストイックかつひっそりと生きる完治役の佐藤は貫録の演技力を発揮、本田はハツラツとした等身大の役が多かったイメージを覆し、影のある女性・敦子として登場する。敦子の人生の迷いを大きな包容力で包んでいく完治の姿は、若手女優が胸に抱くエネルギーを、全身で受け止めようとするベテラン俳優の姿と重なる。佐藤の持つ経験とスキルによって、これまで披露されたことのない本田の表情が引き出されているのはもちろん、佐藤自身もまた本田の若き感性によって刺激され、これまでとは異なる雰囲気をまとった演技を見せている。
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父親と娘のようでもあり、ひかれ合う恋人同士のようでもあり、また、そのどちらでもないかけがえのない関係性。役柄と同時に、日本映画の代表的俳優と次代のニューヒロインの組み合わせから生まれる化学反応が、本作を他にはない唯一の作品にしているのは確か。かたくなだったふたりが徐々に心を通わせていく姿が、あらゆる性別と世代を超えた共感を生み出し、観客の心を大きくつかむに違いない。
■My Little Loverの主題歌&小林武史の音楽に加え、
原作、キャスト、東京国際映画祭クロージング作など《注目すべき4つの要素》
佐藤浩市×本田翼のダブル主演以外にも、本作にはさまざまな注目のポイントが存在。My Little Loverが11年ぶりに手掛けた映画主題歌や、音楽プロデューサーで作曲家の小林武史が手掛ける映画音楽、原作が直木賞作家・桜木紫乃の作品であること、そして尾野真千子、中村獅童、泉谷しげるなど豪華俳優陣の出演が、本作をさらに魅力的な作品へと昇華させているのだ。
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30代から40代の女性たち──「マイラバ世代」の心をグッとつかむのが、デビュー20周年、11年ぶりだというMy Little Loverの映画主題歌「ターミナル」だ。完治の前から、何も語ることなく、人生の一歩を踏み出していく敦子が、その胸に秘めた想いを見事に歌い上げている。同ユニットの元メンバーでありプロデューサー、そして本作の映画音楽を務めた小林武史が書き下ろしたナンバー。「作品の世界に凛(りん)とした姿で寄り添いたい、そんな思いで主題歌を歌いました」というakkoの言葉通り、小林の楽曲とともに作品世界により深みを与え、その物語は、主題歌「ターミナル」によって完成された。
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美しさと悲しさをたたえながらも、力強さも感じさせる情景──デビュー以来、一貫して北海道を舞台に、人々のあたたかい思いを描いてきたベストセラー作家、桜木紫乃の物語が心に染み入る。13年に「ホテルローヤル」で第149回直木賞を受賞した桜木の短編集「起終点駅 ターミナル」。その6編のうちの表題作が、自身初となる映画化となった。「原作はあくまでもきっかけで良い。ひとつの物語が次の表現を求めて走り出す瞬間に立ち会えましたことに感謝します」と本人も語る通り、文字で表現された原作が、映画という映像になり、「起終点駅 ターミナル」の新たな魅力が引き出された物語が完成した。映画と原作では物語のラストが違うことも、それぞれを楽しむポイントのひとつだ。
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脇を固める実力派キャストによって、物語がより見応えのあるものになっている。完治が今なお思いをはせる存在として登場するのが、さみしさをたたえた眼差しが印象的な尾野真千子。過去に完治の弁護を受け、その言葉に支えられた会社社長とは名ばかりのヤクザ役の中村獅童、完治の開業を支えたベテラン弁護士役の泉谷しげるなど、個性的な顔ぶれにも注目だ。また、演劇ユニット「TEAM NACKS」の音尾琢真、NHKの朝ドラ「ごちそうさん」の和田正人という若手実力派陣も出演。
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本作は、10月22日から31日まで開催される「第28回東京国際映画祭」のクロージング作品に選出。国内外の話題を集める注目作として、華やかな映画祭のトリを飾ることになっている。同映画際のクロージング作品における日本映画といえば、2014年・第27回の「寄生獣」、13年・第26回の「清須会議」などが挙げられるが、映画的なクオリティと話題性が両立した作品ぞろいとなっている。クロージングへの選出は、幅広い観客層が楽しめる作品というお墨付きともいえるのだ。