トミー・リー・ジョーンズ : ウィキペディア(Wikipedia)
トミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones, 1946年9月15日 - )は、アメリカ合衆国の俳優。1993年の『逃亡者』でアカデミー助演男優賞を受賞した。
経歴
テキサス州出身。父親は油田で働き、母親は警察官。
高校卒業後、家計を助けるために父親の働く油田会社に就職。傍ら寝る間も惜しんで独学で勉強し、1年後、奨学金でハーバード大学英米文学部に進学。この時点の夢は文学と演劇の教師になることで、大学では演劇部に所属していた。寮のルームメイトに後の副大統領となるアル・ゴアがおり、その後も親交が続いている。
文学と演劇を教える教師を目指していたが、次第に舞台に立つ事を夢見るようになる。大学卒業後、ブロードウェイに憧れてマンハッタンへと出る。そこでは小さな食堂で皿洗いの仕事をしながら、稽古に励んだ。そんなときに友人と受けた映画のオーディションに合格し、1970年『ある愛の詩』で映画デビューした。しかし、同映画の製作元パラマウント映画の上層部から「顔つきがキツい」とクレームがつき、映画自体は大ヒットしたものの苦い映画デビューとなった2008年4月号「日経エンタテインメント!」(日経BP社)。
その後はしばらく役に恵まれず、下積みが長く続き、『ある愛の詩』の次の出演作は『ライフ・スタディ』という低予算作品だった。同作まで3年間、映画の仕事がなく、その間は最初の妻であるジャーナリスト、ケイト・ラードナー(リング・ラードナーの孫)に養ってもらっていた。
1980年代はテレビ出演が主で、映画は出演しても脇役だった。しかし『JFK』や『沈黙の戦艦』出演の頃から注目されるようになる。1993年の『逃亡者』ではハリソン・フォード演じるキンブル医師を追い詰める捜査官役でアカデミー助演男優賞を受賞した。以降、主演作品に恵まれるようになる。
1997年、『メン・イン・ブラック』のK役に抜擢される。監督によると「彼は大真面目に演じていてもどこかコミカルだ」ったのが決め手とのこと。このことについて本人は不本意だったというが、映画は続編が作られるほどのヒットを記録し、Kははまり役の一つとなった。また同役は映画の公開から数年を経て、缶コーヒーBOSSのCMにおいて本人出演でパロディ化された。その経緯は後述の通り。
1999年、京都の老舗で日本屈指の宿である俵屋旅館が火事になったとき、偶然宿泊していた。鎮火後、「火事が消えたのならあの部屋に戻りたい」と言い、周囲を困惑させたとする逸話がある『俵屋の不思議』 著:村松友視。
2005年には自身が監督・プロデュース・出演した『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。
2006年4月からは日本国内においてサントリー缶コーヒーBOSSレインボーマウンテンのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」に出演。毎回日本の様々な職業に潜入するというストーリーで、2023年1月現在、17年目を迎える長寿CMシリーズとして定着している。
2011年4月からはサントリーグループによる東北地方太平洋沖地震復興支援として、坂本九のヒット曲である「上を向いて歩こう」・「見上げてごらん夜の星を」の両曲を同社グループのCM出演者総勢71名がリレー方式で歌う企業イメージCMにも出演。歌声も披露している。
2012年8月からは、「BOSSコーヒー20周年」とソフトバンクモバイルの「プラチナバンド開始」の共同キャンペーンの一環として、「宇宙人ジョーンズ」と「白戸家」両シリーズのコラボレーションCMにも出演している。
人物
2012年、『メン・イン・ブラック3』のプロモーションワールドツアーで、唯一、日本だけに参加し、「私は本当に日本が大好きで、日本に来るのはいつも幸せ。本当に美しい国ですし、私にとっては第二の故郷。ファンがいるということはあまり意識していませんが、こうやってみなさんにお会いでき、本当に嬉しく思います」と、自らの日本好きを語っている『MIB3』の続編あるかも! ウィル・スミスらが来日しジャパンプレミア 2012年5月9日 ムービーコレクション。また2013年にも『終戦のエンペラー』のプロモーションで来日。歌舞伎座を訪問し、「10年来の歌舞伎のファンだ」と語った。娘の為に集めているという浮世絵も趣味としており、月岡芳年の月百姿を34作まで収集しているという。好物の日本料理は「鮎の塩焼き」いきすぎた親日家!? ティム・バートン監督とトミー・リー・ジョーンズ 2012年6月30日 エキサイトニュース。
主な出演作品
公開年 | 邦題原題 | 役名 | 備考 | 吹き替え |
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1970 | ある愛の詩Love Story | ハンク | 不明(日本テレビ版)小室正幸(テレビ東京版)真木駿一(VOD版) | |
1975 | トミー・リー・ジョーンズのホロスコープEliza's Horoscope | トミー・リー | ||
1976 | チャーリーズ・エンジェル/ぶどう園乗っ取り殺人事件Charlie's Angels | Aram Kolegian | テレビ映画 | |
ジャクソン・ジェイルJackson Country Jail | コーリー・ブレイク | 津嘉山正種(TBS版) | ||
激突39台!史上最大の自動車事故/ハイウェイ・パニックSmash-Up On Interstate 5 | Officer Hutton | テレビ映画 | ||
1977 | ハワード・ヒューズ物語The Amazing Howard Hughes | ハワード・ヒューズ | ||
ローリング・サンダーRolling Thunder | ジョニー・ヴォーデン | 小杉十郎太(テレビ東京版) | ||
1978 | ベッツィーThe Betsy | アンジェロ | ||
アイズEyes of Laura Mars | ジョン・ネヴィル | 神谷明 | ||
1980 | 歌え!ロレッタ愛のためにCoal Miner's Daughter | ドゥーリトル・リン | ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)ノミネート | 大塚明夫 |
1982 | 死刑執行人The Executioner's Song | ゲイリー | テレビ映画プライムタイム・エミー賞 主演男優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)受賞 | |
1983 | キャプテン・ブーリーの大冒険Nate and Hayes | ブーリー・ヘイズ | 日本劇場未公開 | 戸谷公次 |
1985 | ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦The Park is Mine | ミッチ | ||
1986 | ブラックライダーBlack Moon Rising | クイント | 田中信夫(テレビ朝日版) | |
1987 | 背徳の罠/死者のメッセージBroken Vows | ペーター | 日本劇場未公開 | |
ビッグタウンThe Big Town | ジョージ・コール | |||
1988 | ストーミー・マンディStormy Monday | コズモ | 銀河万丈(テレビ東京版) | |
1989 | ロンサム・ダブLonesome Dove | ウッドロウ | テレビ映画 | 中田浩二(NHK-BS2版) |
ザ・パッケージ/暴かれた陰謀The Package | トーマス | 笹岡繁蔵(TBS版) | ||
1990 | アパッチFire Birds | ブラッド・リトル | 小川真司(フジテレビ版)小林清志(テレビ朝日版) | |
1991 | JFKJFK | クレイ・ショー | アカデミー助演男優賞ノミネート英国アカデミー賞 助演男優賞ノミネート | 小川真司(ソフト版)小林清志(テレビ朝日版) |
1992 | 沈黙の戦艦Under Siege | ウィリアム・ストラニクス | 菅生隆之(ソフト版)池田勝(テレビ朝日版) | |
1993 | 心の扉House of Cards | ジェイク・ビアランダー | 菅生隆之 | |
逃亡者The Fugitive | サミュエル・ジェラード | アカデミー助演男優賞受賞ゴールデングローブ賞 助演男優賞受賞 | 菅生隆之(ソフト版)小林清志(テレビ朝日版)田中信夫(機内上映版1)麦人(機内上映版2) | |
天と地Heaven & Earth | スティーブ・バトラー | 菅生隆之 | ||
1994 | ワイルド・メンThe Good Old Boys | ヒューイ・キャロウェイ | テレビ映画製作・脚本兼任 | |
ブローン・アウェイ/復讐の序曲Blown Away | ギャリティ | 小林清志(ソフト版)菅生隆之(テレビ朝日版) | ||
依頼人The Client | ロイ・フォルトリッグ | 有川博(ソフト版)菅生隆之(テレビ朝日版) | ||
ナチュラル・ボーン・キラーズNatural Born Killers | ドワイト・マクラスキー | 樋浦勉 | ||
ブルースカイBlue Sky | ハンク・マーシャル | 菅生隆之 | ||
1995 | バットマン フォーエヴァーBatman Forever | ハーヴェイ・デント / トゥーフェイス | 菅生隆之(ソフト版)小林清志(テレビ朝日版) | |
タイ・カップCobb | タイ・カッブ | |||
1997 | ボルケーノVolcano | マイク・ローク | 菅生隆之(ソフト版)小林清志(テレビ朝日版) | |
メン・イン・ブラックMen in Black | エージェントK | 坂口芳貞(ソフト版)菅生隆之(日本テレビ版) | ||
1998 | 追跡者U.S. Marshals | サミュエル・ジェラード | 『逃亡者』のスピンオフ作品 | 菅生隆之(ソフト版、テレビ朝日版)小林清志(テレビ東京版) |
スモール・ソルジャーズSmall Soldiers | チップ・ハザード | 声の出演 | 玄田哲章(VHS版、日本テレビ版)銀河万丈(DVD版) | |
1999 | ダブル・ジョパディーDouble Jeopardy | トラヴィス | 池田勝(ソフト版)菅生隆之(テレビ朝日版) | |
2000 | 英雄の条件Rules of Engagement | ヘイズ・ホッジス | 堀勝之祐(ソフト版)池田勝(フジテレビ版) | |
スペース カウボーイSpace Cowboys | ホーク・ホーキンズ | 坂口芳貞(ソフト版)菅生隆之(日本テレビ版) | ||
2002 | メン・イン・ブラック2Men in Black II | エージェントK | 坂口芳貞(劇場公開版)菅生隆之(テレビ朝日版) | |
2003 | ハンテッドThe Hunted | L.T. | 池田勝(ソフト版)小林清志(テレビ東京版) | |
ミッシングThe Missing | サミュエル・ジョーンズ | 有川博 | ||
2005 | チアガール VS テキサスコップMan of the House | ローランド・シャープ | 日本劇場未公開製作総指揮兼任 | 坂口芳貞 |
メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬The Three Burials of Melquiades Estrada | ピート・パーキンズ | カンヌ国際映画祭 男優賞受賞監督・製作兼任 | 菅生隆之(ソフト版) | |
2006 | 今宵、フィッツジェラルド劇場でA Prairie Home Companion | アックスマン | 小林清志 | |
2006- | 宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ | 宇宙人ジョーンズ | テレビCM | 谷口節(『ネット』篇まで)菅生隆之(『大相撲』篇から) |
2007 | ノーカントリーNo Country for Old Men | エド・トム・ベル | 英国アカデミー賞 助演男優賞ノミネート | 菅生隆之 |
告発のときIn the Valley of Elah | ハンク・ディアフィールド | アカデミー主演男優賞ノミネート | 谷口節 | |
2009 | エレクトリック・ミスト 霧の捜査線In the Electric Mist | デイヴ・ロビショー | 日本劇場未公開 | 加藤優季 |
2010 | カンパニー・メンThe Company Men | ジーン・マクラリー | (吹き替え版なし) | |
2011 | The Sunset Limited | White | 監督兼任 | |
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーCaptain America: The First Avenger | チェスター・フィリップス大佐 | 谷口節 | ||
2012 | メン・イン・ブラック3Men in Black III | エージェントK | ||
31年目の夫婦げんかHope Springs | アーノルド・ソームズ | 菅生隆之 | ||
終戦のエンペラーEmperor | ダグラス・マッカーサー | (吹き替えなし) | ||
リンカーンLincoln | タデウス・スティーブンス | アカデミー助演男優賞ノミネート全米映画俳優組合賞助演男優賞受賞 | 菅生隆之 | |
2013 | マラヴィータThe Family / Malavita | ロバート・スタンスフィールドFBI捜査官 | 小林清志 | |
2014 | ミッション・ワイルドThe Homesman | ジョージ・ブリッグス | 監督・脚本・製作総指揮兼任 | 小村哲生 |
2016 | クリミナル 2人の記憶を持つ男Criminal | フランクス医師 | 菅生隆之 | |
ジェイソン・ボーンJason Bourne | ロバート・デューイ | 土師孝也(ソフト版)大塚明夫(BSテレ東版) | ||
Mechanic: Resurrection | マックス・アダムス | 菅生隆之 | ||
2017 | 記者たち 衝撃と畏怖の真実Shock and Awe | |||
ベスト・バディJust Getting Started | レオ | |||
2019 | アド・アストラAd Astra | クリフォード・マクブライド | ||
2020 | 陰謀の街 ワンダーWander | ジミー・クリート | 日本劇場未公開 | |
カムバック・トゥ・ハリウッド | The Comeback Trail | デューク・モンタナ | ||
2023 | Finestkind | Ray Eldridge | ||
眠りの地The Burial | ジェレミア・ジョセフ・オキーフ | 日本劇場未公開 | 菅生隆之 | |
TBA | The Razor's Edge | 撮影中 |
日本語吹き替え
主に担当しているのは、以下の三人である。
- 菅生隆之
- 『沈黙の戦艦』(ソフト版)で初担当。以降、ほとんどの作品で吹き替えを務めており、ジョーンズの専属(フィックス)として定着している。
- 菅生によるジョーンズの吹き替えは当初、映画のみの担当であったが、サントリー缶コーヒーBOSSレインボーマウンテンのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」でジョーンズが演じる宇宙人ジョーンズの吹き替えを後述する前任者の谷口節の逝去に伴い、2013年4月放送の『大相撲篇』から引き継いで担当している。
- 小林清志
- 『JFK』(テレビ朝日版)で初担当。菅生に次いで多く担当。寺田貴信によるとジョーンズ来日のニュースが載ったスポーツ紙を持ち、逸話を語ると同時に「とても良い俳優さんだ」と話しており、大変気に入っていたという。2013年には「印象に残る俳優」を訊かれるとすぐに顔が浮かぶとしており、初担当した『JFK』を印象深い作品と述べたこともある。前述の菅生には冗談を交えつつ「気取った声を出してちゃダメだよ」等のアドバイスも送っていたといい、その後も小林自身はジョーンズの再演を希望していたが、2013年の『マラヴィータ』が最後の担当となった。
- 谷口節(トミー・リー・ジョーンズ本人公認)
- CM『宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ』にて2008年4月の初登場から『ネット篇』まで担当。谷口の起用はジョーンズから「僕の吹き替えはMr.谷口にしてくれ」と直々に指名されたことが理由だったとされている。生前は谷口自身も同業者に対し、「吹き替えしててこんなに嬉しいことはない」と語っていた。本CMをきっかけにジョーンズの声優の一人として定着したことで『メン・イン・ブラック 3』エージェントJの吹替えを江原正士さん、エージェントKの吹替えを谷口節さんが担当!、2012年に死去するまでにいくつかの映画でも吹き替えを担当した。
このほかにも、池田勝、坂口芳貞、田中信夫、有川博、小川真司、銀河万丈、大塚明夫なども複数回、声を当てている。
主な受賞
- アカデミー賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- カンヌ国際映画祭
- 2005年度 男優賞 『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
- ゴールデングローブ賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- ロサンゼルス映画批評家協会賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- シカゴ映画批評家協会賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- MTVムービー・アワード
- 1994年度 コンビ賞 『逃亡者』(ハリソン・フォードと共に)
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2025/01/08 14:46 UTC (変更履歴)
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