ジョーン・ディディオン : ウィキペディア(Wikipedia)
ジョーン・ディディオン(Joan Didion、1934年12月5日 - 2021年12月23日)は、アメリカ人小説家、エッセイスト、脚本家である。ニュージャーナリズムの書き手のひとりとして、1960年代に興隆したアメリカのカウンターカルチャーや当時の若者たちの生態を描いた小説やエッセイで注目された。
略歴
1934年、アメリカ合衆国カリフォルニア州サクラメント生まれ。父親は兵士で引っ越しが多かったため、幼いころはきちんとした教育を受けられず、恥ずかしがり屋で読書好きなおとなしい子供だった。カリフォルニア大学バークレー校在学中に、雑誌の『ヴォーグ』が主催するエッセイ・コンテストで優勝し、卒業後ヴォーグで2年間働いた。
ヴォーグ在籍中の1963年に処女作『Run, River』を出版。翌1964年に、裕福な資産家の息子で、『タイム』誌のライターをしていたと結婚し、ヴォーグを退職してロサンゼルスで暮らし始める。1966年には生後間もない女の子、クィンターナを養女にする。ロスの高級リゾート地に住み、パーティに明け暮れ、ジャニス・ジョップリンら伝説的な有名人たちとも交流しながら、『ライフ』『エスクァイア』『ニューヨークタイムズ』など多くの雑誌・新聞に寄稿し、小説やドキュメンタリーなどを執筆した。
1968年から空間識失調やめまい、多発性硬化症を患った。1970年代初期には、夫と夫の兄のドミニクと3人で映画会社を設立、夫とともに脚本を担当し、アル・パチーノ主演の『哀しみの街かど』を制作した。その後ドミニクとは離れたが、夫と脚本を書いた『スター誕生』(1976年)が大成功を収め、『告白』(1981年)、『アンカーウーマン』(1996年)と夫婦二人三脚の脚本執筆が続いた。1979年にはクィンターナの通学のためにロス郊外の高級住宅街に引っ越す。夫とは40年間いつも一緒で、ニューヨークのアッパー・イースト・サイドの自宅アパートの隣あった部屋にそれぞれ仕事場を持ち、朝は2人でセントラル・パークを散歩し、近くのスリー・ガイズ・レストランか高級ホテルのカーライルで朝食を取るのを日課としていた。デイヴィッド・ハルバースタムら、ニューヨーク文壇に多くの友人を持ち、夫の一族の行きつけで、セレブ御用達のイタリア料理店「エリオズ」の指定席で毎晩のように夫婦で食事をとる、といった優雅な日々を送っていた。
2003年末に、前年に結婚したばかりの娘クィンターナが肺炎から意識不明となり、マンハッタンの病院に収容された。夫とともに娘の集中治療室に毎日看病に通う中、自宅アパートで夫が突然心臓発作で死亡する。その後の1年を綴った『』がベストセラーとなり、同書は2005年に全米図書賞を受賞した。同年、クィンターナも39歳で亡くなる。
2021年12月23日、パーキンソン病による合併症のためニューヨークの自宅で死去。。
俳優のグリフィン・ダンと、1982年に恋人に絞殺された女優のドミニク・ダンは夫の兄の子である。
受賞歴
主な著書
小説
- Run, River(1963年)
- Play It As It Lays(1970年)
- A Book of Common Prayer 『日々の祈りの書』(1977年)
- Democracy(1984年)
- ''The Last Thing He Wanted 『マクマホン・ファイル』映画『マクマホン・ファイル』(2020年)の原作。(1996年)
ノンフィクション
- Slouching Towards Bethlehem 『ベツレヘムに向け、身を屈めて』(1968年)
- The White Album 『60年代の過ぎた朝 ― アメリカ・コラムニスト全集―ジョーン・ディディオン集』(1979年)
- Salvador 『ラテンアメリカの小さな国』(1983年)
- Miami 『マイアミ ― 亡命ラテン・エリートのアメリカ』(1987年)
- After Henry(1992年)
- Political Fictions(2001年)
- Where I Was From(2003年)
- Fixed Ideas: America Since 9.11(2003年)
- Vintage Didion(2004年)
- The Year of Magical Thinking 『悲しみにある者』(2005年)
- [[:en:We Tell Ourselves Stories in Order to Live|We Tell Ourselves Stories in Order to Live: Collected Nonfiction]](2006年)
- Blue Nights 『さよなら、私のクィンターナ』(2011年)
映画
脚本
- The Panic in Needle Park 『哀しみの街かど』(1971年)
- Play It as It Lays(1972年)
- A Star Is Born 『スター誕生』(1976年)
- True Confessions 『告白』(1981年)
- BROKEN TRUST 『告発文書』 (1995年) TVM
- Up Close & Personal 『アンカーウーマン』(1996年)
その他
- JOAN DIDION: THE CENTER WILL NOT HOLD ジョーン・ディディオン:ザ・センター・ウィル・ノット・ホールド 2017 出演
- THE LAST THING HE WANTED マクマホン・ファイル 2020 原作
日本語訳された作品
- 『日々の祈りの書』小池美佐子 訳、サンリオ、1983年
- 『ラテンアメリカの小さな国』晶文社セレクション、千本健一郎 訳、晶文社、1984年
- 『メイプルソープと美神たち』ロバート・メイプルソープ 写真、高野育郎訳、JICC出版局、1989年
- 『マイアミ ― 亡命ラテン・エリートのアメリカ』白須英子 訳、中央公論新社、1991年
- 『ベツレヘムに向け、身を屈めて』青山南 訳、筑摩書房、1995年
- 『60年代の過ぎた朝 ― ジョーン・ディディオン集』アメリカ・コラムニスト全集、越智道雄 訳、東京書籍、1996年
- 『マクマホン・ファイル』後藤安彦 訳、文藝春秋、1998年
- 『悲しみにある者』池田年穂 訳、慶応義塾大学出版会、2011年
- 『さよなら、私のクィンターナ』池田年穂訳、慶応義塾大学出版会、2012年
注釈
出典
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2023/10/18 05:54 UTC (変更履歴)
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