ジェームズ・コバーン : ウィキペディア(Wikipedia)

ジェームズ・ハリソン・コバーン3世(James Harrison Coburn III 、1928年8月31日 - 2002年11月18日)は、アメリカ合衆国出身の映画・テレビ俳優である。コバーンは45年間のキャリアを通して70を超える映画と100を超えるテレビドラマに出演した。幅広い役柄を演じた彼は『白い刻印』のグレン・ホワイトハウス役でアカデミー助演男優賞を受賞した。

『荒野の七人』、『突撃隊』、『大脱走』、『ダンディー少佐』、『電撃フリントGO!GO作戦』、『夕陽のギャングたち』、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』といった西部劇やアクション映画で、荒削りの、歯を見せて笑うタフな男を演じることが多かった。

1960年代後半から1970年代前半にかけて彼は「クール」なイメージをもたれる。そして同年代のリー・マーヴィンスティーブ・マックイーンチャールズ・ブロンソンと同様に、彼は「タフガイ」のスターになった。アメリカで柔道を学び黒帯を取得、来日時には講道館を訪れた。また、ブルース・リーに武術、アクションを学んでいる。

来歴・人物

生い立ち

コバーンはネブラスカ州ローレルに生まれる。母親はマイレット・S(旧姓:ジョンソン)、父親はジェームズ・ハリソン・コバーン・ジュニアで彼は世界恐慌での失業者だった。コバーンはスコットランド=アイルランド系でありスウェーデン系でもあったNew England Historic Genealogical Society(2004年9月2日時点のアーカイブ)。彼はカリフォルニア州、コンプトンで育ち、コンプトン・ジュニア・カレッジ卒業後の1950年代、アメリカ陸軍に入隊した。軍隊で彼はトラック運転手や、テキサス州の陸軍ラジオの臨時DJとして働いた。また、彼はドイツ、マインツの陸軍訓練用フィルムのナレーションも務めた。その後はロサンゼルス・シティ・カレッジでジェフ・コーリーやステラ・アドラーから演技を学ぶ。そして彼はラ・ジョラ・プレイハウスでの舞台『ビリー・バッド』でデビューした 。

キャリア

1959年、コバーンはランドルフ・スコット主演の西部劇 Ride Lonesome で悪役パーネル・ロバーツの手下役で映画デビューを果たした。他にもコバーンは数多くのテレビに出演した。テレビドラマ『ボナンザ』ではいくつかのエピソードに出演してロバーツと再び共演した。NBC制作ジョン・ペイン主演の西部劇ドラマ The Restless Gun では2つ以上のエピソードに登場した。また、1960年~1961年にかけて放送されたNBCのドラマ Klondike ではジョイ・ランシングやラルフ・テーガーと共演した。やがて Klondike が打ち切られるとコバーンとテーガーはNBCのメキシコを舞台とした探偵ドラマ Acapulco に出演した。他にもコバーンは『弁護士ペリーメイスン』に2度ゲスト出演した。

1960年代から1970年代にはコバーンはアクション・西部劇でタフガイ役で有名になっていた。ジョン・スタージェス監督の『荒野の七人』と『大脱走』ではスティーブ・マックイーンチャールズ・ブロンソンと共演する。彼は悪役の1人テックスを演じた『シャレード』(1963年)や口のうまい海軍将校役の『卑怯者の勲章』(1964年)、片腕のインディアン役の『ダンディー少佐』(1965年)などで有名になっていった。1966年、コバーンはジェームズ・ボンドのパロディ映画『電撃フリントGO!GO作戦』の主役で正真正銘のスターとなる。1971年にはセルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウェスタン『夕陽のギャングたち』に出演する。この映画では、20世紀初頭のメキシコ革命の最中にメキシコに現れたアイルランドの爆弾のプロを演じた。1973年にはサム・ペキンパー監督と組んで『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(2人はすでに1965年の『ダンディー少佐』で共に仕事をしている)に出演した。その後も『戦争のはらわた』でペキンパーの映画に出演した。

1978年、コバーンはテレビに戻り、ダシール・ハメットの探偵小説『デイン家の呪い』の3部構成のミニシリーズに出演した。だが彼は関節リウマチにかかり、1980年代の出演作は数えるほどしかなかった。やがて彼は俳優に復帰し2002年にこの世を去るまでの間、仕事を続けた。初めのうちはテレビで活躍していたが『ヤングガン2』や『ハドソン・ホーク』、『天使にラブ・ソングを2』、『マーヴェリック』、『イレイザー』、『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』、『白い刻印』、『ペイバック』に出演し映画にも戻っていった。特に『白い刻印』でのコバーンの演技が認められアカデミー賞を受賞、全米映画俳優組合賞、インディペンデント・スピリット賞にノミネートされた。

死去

2002年11月18日、コバーンは心筋梗塞で死亡する。そのとき、彼はカリフォルニア州、ビバリーヒルズの自宅で音楽を聴いていた。彼の遺族は妻のポーラ(旧姓:ミュラード)、息子のジェームズ4世、そして義理の娘だった。彼の遺骨はウエストウッド・メモリアルパークに埋葬され、そこにあるベンチには名前が刻まれた。生前、コバーンはシボレーのテレビ広告キャンペーンの声を務めていた。コバーンの死後はジェームズ・ガーナーが引き継いだ。

出演作品

映画

題名 役名 監督 備考
1959 Ride Lonesome Whit バッド・ベティカー
ネバダの決闘Face of a Fugitive パーディ ポール・ウェンドコス
1960 荒野の七人The Magnificent Seven ブリット ジョン・スタージェス
1961 The Murder Men Arthur Troy ジョン・ペイサー
1962 突撃隊Hell Is for Heroes フランク・ヘンショウ伍長 ドン・シーゲル
1963 大脱走The Great Escape ルイス・セジウィック ジョン・スタージェス
シャレードCharade テックス・パンスロウ スタンリー・ドーネン
テキサス保安官The Man from Galveston ボイド・パルマー ウィリアム・コンラッド
太陽の帝王Kings of the Sun ナレーター J・リー・トンプソン
1964 Action on the Beach 本人役 不明 ドキュメンタリー
卑怯者の勲章The Americanization of Emily ポール・“バス”・カミングス少佐 アーサー・ヒラー
1965 ダンディー少佐Major Dundee サミュエル・ポッツ サム・ペキンパー
海賊大将A High Wind in Jamaica ザック アレクサンダー・マッケンドリック
ラブド・ワンThe Loved One 入国管理官 トニー・リチャードソン
1966 電撃フリントGO!GO作戦Our Man Flint デレク・フリント ダニエル・マン
地上最大の脱出作戦What Did You Do in the War, Daddy? クリスチャン少尉 ブレイク・エドワーズ
現金作戦Dead Heat on a Merry-Go-Round イーライ・コッチ バーナード・ジラード
1967 電撃フリント・アタック作戦In Like Flint デレク・フリント ゴードン・ダグラス
荒野の隠し井戸Waterhole #3 ルートン・コール ウィリアム・A・グラハム
シークレット!シークレット!The President's Analyst ドクター・シドニー・シェーファー セオドア・J・フリッカー 兼製作
1968 太陽を盗めDuffy ダフィ ロバート・パリッシュ
キャンディCandy ドクター・A・B・クランカイト クリスチャン・マルカン
1969 殺人美学Hard Contract ジョン・カニンガム S・リー・ポゴスティン
1970 はるかなる南部Last of the Mobile Hot Shots ジェブ シドニー・ルメット
1971 夕陽のギャングたちGiù la testa ジョン・H・マロリー セルジオ・レオーネ 英題:Duck, You Sucker!(改題:A Fistful of Dynamite
1972 殺しのカルテThe Carey Treatment ドクター・ピーター・キャリー ブレイク・エドワーズ
ロデオに生命を賭けた男The Honkers ルー・ラスロップ スティーヴ・イーナット
ダーティ・セブンUna ragione per vivere e una per morire ペンブローク大佐 トニーノ・ヴァレリ 英題:A Reason to Live, a Reason to Die
1973 ブルース・リーの生と死Bruce Lee: The Man and the Legend 本人役(クレジットなし) シン・ウー ドキュメンタリー
黄金の指Harry in Your Pocket ハリー ブルース・ゲラー
ビリー・ザ・キッド/21才の生涯Pat Garrett and Billy the Kid パット・ギャレット サム・ペキンパー
シーラ号の謎The Last of Sheila クリントン ハーバート・ロス
1974 新ドミノ・ターゲット/恐るべき相互殺人The Internecine Project ロバート・エリオット ケン・ヒューズ
1975 弾丸を噛めBite the Bullet ルーク・マシューズ リチャード・ブロークス
ストリートファイターHard Times スピード ウォルター・ヒル
1976 スカイ・ライダーズSky Riders ジム・マッケイブ ダグラス・ヒコックス
大いなる決闘The Last Hard Men ザック・プロヴォ アンドリュー・V・マクラグレン
ミッドウェイMidway ヴィントン・マドックス大佐 ジャック・スマイト
1977 ホワイトロックWhite Rock ナレーター トニー・メイラム
戦争のはらわたCross of Iron ロルフ・シュタイナー軍曹 サム・ペキンパー
1978 カリフォルニア・スイートCalifornia Suite パイロット ハーバート・ロス クレジットなし
1979 ポール・ポジションFormula uno, febbre della velocità ナレーター オッタヴィオ・ファブリ 英題:Speed Fever
リベンジャーFirepower ファノン マイケル・ウィナー
マペットの夢みるハリウッドThe Muppet Movie カフェのオーナー ジェームズ・フローリー カメオ出演
ゴールデンガールGoldengirl ジャック・ドライデン ジョゼフ・サージェント
1980 ジェームズ・コバーンの新ハスラーThe Baltimore Bullet ニック・キャシー ロバート・エリス・ミラー
ラヴィング・カップルLoving Couples ウォルター ジャック・スマイト
ジェームズ・コバーンのクロスオーバー/光と影Mr. Patman パットマン ジョン・ギラーミン
1981 野良犬軍団/ダーティー・ソルジャーHigh Risk セラノ スチュワート・ラフィル
ルッカーLooker ジョン・レストン マイケル・クライトン
1984 Draw! Sam Starret スティーヴン・ヒリアード・スターン
1985 遥かなる少年の日々Martin's Day ラードナー警部 アラン・ギブソン
1986 犠牲 〜ある兵士の死〜Death of a Soldier パトリック・ダネンバーグ少佐 フィリップ・モーラ
1988 丹波哲郎の霊界ワールドWalking After Midnight 本人役 ジョナサン・ケイ
1989 Call from Space リチャード・フライシャー 短編映画
1990 夢みるように微笑んでTrain to Heaven グレゴリウス トグニー・アンダーバーグ
ヤングガン2Young Guns II ジョン・チザム ジェフ・マーフィー
1991 ハドソン・ホークHudson Hawk ジョージ・キャプラン マイケル・レーマン
1992 Mastergate Major Manley Battle マイケル・イングラー
ザ・プレイヤーThe Player 本人役 ロバート・アルトマン カメオ
1993 プロフェッショナルDeadfall Mike Donan / Lou Donan クリストファー・コッポラ
実録ブルース・リー/ドラゴンと呼ばれた男Curse of the Dragon 本人役 トム・クン、フレッド・ワイントローブ ドキュメンタリー
天使にラブ・ソングを2Sister Act 2: Back in the Habit ミスター・クリスプ ビル・デューク
1994 マーヴェリックMaverick デュヴァル提督 リチャード・ドナー
1995 悪い女The Set-Up ジェレミア・コール ストランスフォード・ハミルトン
1996 Skeletons Frank Jove デイヴィッド・デコト―
イレイザーEraser アーサー・ベラー本部長 チャック・ラッセル
ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合The Nutty Professor ハーラン・ハーティ トム・シャドヤック
Ben Johnson: Third Cowboy on the Right 本人役 トム・サーマン ドキュメンタリー
1997 ブラック・メール/脅迫Keys to Tulsa ハーモン・ショウ レスリー・グライフ
The Disappearance Of Kevin Johnson 本人役 フランシス・メガフィー
1998 白い刻印Affliction グレン・ホワイトハウス ポール・シュレーダー アカデミー助演男優賞受賞
1999 ペイバックPayback フェアファックス ブライアン・ヘルゲランド
2000 The Good Doctor Dr. Samuel Roberts ケニス・オーキン 短編映画
イントレピッドIntrepid キャプテン・ハル・ジョゼフソン ジョン・プッチ
2001 JUSTICE 必殺Proximity ジム・コーコラン スコット・ジール
テキサス・レンジャーズTexas Rangers ナレーター スティーヴ・ミナー
The Yellow Bird Rev. Increase Tutwiler フェイ・ダナウェイ 短編映画
エゴイストThe Man from Elysian Fields アルコット ジョージ・ヒッケンルーパー
モンスターズ・インクMonsters, Inc. ヘンリー・J・ウォーターヌース3世 ピート・ドクター 声の出演
Kurosawa 本人役 アダム・ロウ ドキュメンタリー
2002 スノー・ドッグSnow Dogs ジェームズ・“サンダー・ジャック”・ジョンソン ブライアン・レヴァント
アメリカン・ガンAmerican Gun マーティン・ティルマン アラン・ジェイコブス

テレビ

題名 役名 監督 備考
1963 トワイライト・ゾーンThe Twilight Zone Major French アラン・クロスランド・Jr. 第5シーズン第7話「洞窟の予言者」
1978 デイン家の呪いThe Dain Curse ハミルトン・ナッシュ E・W・スワックハマー ミニシリーズ
1982 サタデー・ナイト・ライブSaturday Night Live 本人 デイヴ・ウィルソン James Coburn/Lindsey Buckingham
1984 フェアリーテール・シアターFaerie Tale Theatre ジプシーの男 ピーター・メダク オムニバスドラマ第3シーズン「ピノッキオの冒険」
2002 Arliss Slaughterhouse Sid Perelli マイケル・グロスマン 第7シーズン第1話「The Immortal

日本語吹き替え

日本語吹き替えは、1960年代から小林清志が専属(フィックス)で担当している。小林は、コバーンの吹き替えを「自然にできる役」として、アニメ『ルパン三世』の次元大介元々、次元大介も『荒野の七人』に登場したコバーンをモデルにしたキャラクターである。と共に挙げており月刊スカパー! 2013年12月号、コバーンが亡くなった際には、「自分の分身がいなくなったような気がした」と後に回想している。

このほかにも、内海賢二小山力也森川公也廣田行生渡部猛瑳川哲朗が声を当てている作品もあるただし、内海と小山以外は一回きりの起用であり、別音源で小林が担当しているケースがほとんどである。。

関連項目

  • 小林清志 - 日本語吹き替え版の専属俳優
  • ラーク - 日本のテレビCMに出演

参照

外部リンク

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