柴崎友香 : ウィキペディア(Wikipedia)

柴崎 友香(しばさき ともか、本名同じ、1973年10月20日 - )は、日本の小説家。

経歴

大阪府大阪市大正区出身。大阪府立市岡高等学校、大阪府立大学総合科学部国際文化コース卒業。

母は広島県呉市の出身で、祖父は『わたしがいなかった街で』に書かれた通り、広島市の原爆ドーム近くのホテルでコックとして働き、原爆投下の直前、呉市に移り難を逃れ、後に大阪に出た。『わたしがいなかった街で』に出てくる「赤い橋」は音戸大橋を指す。

小学校4年生の国語の教科書で、"たった三行でわたしに小説を書き続けるエネルギーをくれたのはジャン・コクトーの「シャボン玉」という詩だった"柴崎友香『よそ見津々』(日本経済新聞出版社)p.232で書いている。シャボン玉の中には庭は入れません周囲(まわり)をくるくる回っています同時に、コクトーが初めて書いた小説『ポトマック』もこの詩と同じ"世界のきらめきへの感動に満ちた眼差し"があるという。という。高校時代から小説を書き始める。大学では写真部に所属。大学で人文地理学を専攻したことは「風景」を意識する作風に大きな影響を与えた。大学卒業後は4年ほど機械メーカーでOLとして勤めた。

1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞の最終候補になる(受賞者は鹿島田真希)。1999年、短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャートBEST200』に掲載されて作家デビューする。

2004年、『きょうのできごと』が田中麗奈妻夫木聡の主演で行定勲監督により『きょうのできごと a day on the planet』のタイトルで映画化。

2006年に第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞し、『その街の今は』で第23回織田作之助賞大賞を受賞。2007年、『その街の今は』で第136回芥川龍之介賞候補、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。同年、『また会う日まで』で第20回三島由紀夫賞候補、「主題歌」で第137回芥川龍之介賞候補。

2006年より名久井直子、長嶋有、福永信、法貴信也とともに同人作家として同人活動も行なっている。作家の保坂和志から高い評価を受けるが、三島由紀夫賞選考では保坂との作風の類似も指摘されている(福田和也の評)。

2010年、「ハルツームにわたしはいない」で第143回芥川龍之介賞候補、『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年、「春の庭」で第151回芥川龍之介賞受賞。

2018年、『寝ても覚めても』が東出昌大主演で濱口竜介監督により映画化。同作は第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された。

『読売新聞』土曜夕刊3面(からだCafe)の月替わり連載「一病息災」で2024年7月、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された体験を明らかにした。若い頃から、部屋を散らかしやすく、用事を忘れたり遅刻したりすることが多いと自覚しており、『片づけられない女たち』を読んで自分のことだと感じて約20年間、情報を集めつつ専門医の診察を受けたいと考えてきたという[一病息災]ADHD(1)小説家 柴崎友香さん:日常の困り事 発達障害?『読売新聞』夕刊2024年7月6日3面。2024年刊行の『あらゆることは今起こる』(医学書院)は、そうした体験を振り返った著作である。

2024年、『続きと始まり』で芸術選奨文部科学大臣賞芸術選奨 文化庁 2024年8月27日閲覧と谷崎潤一郎賞第60回「谷崎潤一郎賞」は、柴崎友香さんの『続きと始まり』 中央公論新社 2024年8月27日閲覧。を受賞。

受賞歴

  • 2006年:第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)(『きょうのできごと』)
  • 2006年 - 第23回織田作之助賞大賞(『その街の今は』)
  • 2007年:第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞(『その街の今は』)
  • 2010年:第32回野間文芸新人賞(『寝ても覚めても』)
  • 2014年:第151回芥川龍之介賞(『春の庭』)
  • 2016年:日本地理学会賞(社会貢献部門)
  • 2024年:第74回芸術選奨文部科学大臣賞(文学)(『続きと始まり』)
  • 2024年:第60回谷崎潤一郎賞(『続きと始まり』)
  • 2024年:第12回大阪ほんま本大賞特別賞(『大阪』岸政彦共著)"岸政彦×柴崎友香 共著エッセイ『大阪』(河出文庫)、第12回大阪ほんま本大賞特別賞に決定!."時事ドットコム(2024年10月4日). 2024年10月10日閲覧。

作品一覧

小説

  • 『きょうのできごと』(2000年、河出書房新社/2004年、河出文庫)
    • レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー(『文藝別冊:J文学ブック・チャートBEST200』)
    • 途中で(『文藝』1999年冬号)
    • ハニーフラッシュ、オオワニカワアカガメ、十年後の動物園(書き下ろし)
    • きょうのできごとのつづきのできごと(文庫版のみ/『文藝』2004年春号)
  • 『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』(2001年、河出書房新社/2006年、河出文庫)
    • 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?(『文藝』2000年夏号)
    • エブリバディ・ラブズ・サンシャイン(『文藝』2001年春号)
  • 『青空感傷ツアー』(2004年、河出書房新社/2005年、河出文庫)
    • 初出:『文藝』2002年夏号
  • 『ショートカット』(2004年、河出書房新社/2007年、河出文庫)
    • ショートカット(『文藝』2003年秋号)
    • やさしさ(『文藝』2004年夏号)
    • パーティー(書き下ろし)
    • ポラロイド(書き下ろし)
  • 『フルタイムライフ』(2005年、マガジンハウス/2008年、河出文庫・ISBN 4309409350)
    • 初出:『ウフ.』2004年5月号~2005年2月号
  • 『その街の今は』(2006年、新潮社/2009年、新潮文庫・ISBN 4101376417)
    • 初出:『新潮』7月号
  • 『また会う日まで』(2007年、河出書房新社/2010年、河出文庫)
    • 初出:『文藝』2006年春号
  • 『主題歌』(2008年、講談社/2011年、講談社文庫)
    • 主題歌(『群像』2007年6月号)
    • 六十の半分(『朝日新聞』関西版2006年1月5日、12日、19日、26日)
    • ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド(『Melbourne 1』2006年11月)
  • 『星のしるし』(2008年、文藝春秋・ISBN 978-4163274805)
    • 初出:『文學界』2008年6月号
  • 『ドリーマーズ』(2009年、講談社/2012年、講談社文庫)
    • ハイポジション(『群像』2005年5月号)
    • クラップ・ユア・ハンズ!(『Иркутск2』〔イルクーツク2〕2007年12月)
    • 夢見がち(『esora vol.2』2005年7月)
    • 束の間(『esora vol.3』2006年4月)
    • 寝ても覚めても(『esora vol.5』2008年8月)
    • ドリーマーズ(『群像』2009年6月号)
  • 『寝ても覚めても』(2010年、河出書房新社/2014年、河出文庫)
  • 『ビリジアン』(2011年、毎日新聞社/2016年、河出文庫)
  • 『虹色と幸運』(2011年、筑摩書房/2015年、ちくま文庫)
  • 『わたしがいなかった街で』2012年、新潮社/2014年、新潮文庫)
    • わたしがいなかった街で
    • ここで、ここで
  • 『週末カミング』2012年、角川書店/2017年、角川文庫)
    • 蛙王子とハリウッド(『野性時代』2006年8月号)
    • ハッピーでニュー
    • つばめの日(『野性時代』2008年12月号)
    • なみゅぎまの日
    • 海沿いの道
    • 地上のパーティー
    • ここからは遠い場所
    • ハルツームにわたしはいない(『新潮』2010年6月号)
  • 『星よりひそかに』(2014年、幻冬舎)
  • 『春の庭』(2014年、文藝春秋/2017年、文春文庫)
    • 春の庭(『文學界』2014年6月号)
    • 糸(文庫版のみ/『新潮』2013年5月号)
    • 見えない(文庫版のみ/『窓の観察』2012年9月)
    • 出かける準備(文庫書き下ろし)
  • 『パノララ』(2015年、講談社/2018年、講談社文庫)
  • 『きょうのできごと、十年後』(2016年、河出書房新社/2018年、河出文庫)
  • 『かわうそ堀怪談見習い』(2017年、KADOKAWA/2020年、角川文庫)
  • 『千の扉』(2017年、中央公論新社/2020年、中公文庫)
  • 『公園へ行かないか?火曜日に』(2018年、新潮社)
  • 『つかのまのこと』(2018年、KADOKAWA)
  • 『待ち遠しい』(2019年、毎日新聞出版/2023年、毎日文庫)
  • 『百年と一日』(2020年、筑摩書房/2024年、ちくま文庫)
  • 『続きと始まり』(2023年、集英社)

随筆

  • 『ガールズファイル:27人のはたらく女の子たちの報告書』(マガジンハウス、2007年)
    • ガールズファイル(『ハナコ・ウエスト』2005年6月号~2007年8月号)
    • 毎日、寄り道。(『ハナコ・ウエスト』2004年5月号~2005年5月号)※小説
  • 『見とれていたい わたしのアイドルたち』(マガジンハウス、2009年)
  • 『よそ見津々(しんしん)』(日本経済新聞出版社、2010年)
  • 『よう知らんけど日記』(京阪神エルマガジン社、2013年)
  • 『宇宙の日』(ignition gallery、2020年)
  • 『あらゆることは今起こる』(医学書院〈シリーズケアをひらく〉、2024年)ISBN 978-4-260-05694-6

対談集

  • 『ワンダーワード』(小池書院、2008年)ISBN 978-4862253071
    • ワンダーワード(『大阪芸術大学 大学漫画』vol.1~vol.9)特別編含む。
    • 京都観光 2024原作/柴崎友香・作画/田雜芳一(『河南文藝 漫画篇』vol.3)
    • 上條淳士とふたたび and 2008 Now――(新録書き下ろし)

共著

  • 『いつか、僕らの途中で』(ポプラ社、2006年)共著・イラスト:田雜芳一
    • 田雜芳一との往復書簡。『河南文藝 漫画篇』2004年初夏号~2005年新春号連載。
  • オールマイティのよろめき(extra flight!)(Иркутск2〔イルクーツク2〕)
  • 『大阪建築:みる・あるく・かたる』(京阪神エルマガジン社、2014年)共著:倉方俊輔
  • 『大阪』(河出書房新社、2021年/河出文庫、2024年)共著:岸政彦

アンソロジー

  • 『いとしさの王国へ : 文学的少女漫画讀本』(マーブルトロン、2003年)ISBN 4123900518
    • 些細なできごと、些細なやりとり
  • 『東京19歳の物語』(G.B.、2005年)ISBN 4901841408
    • 天気予報によると
  • 『本からはじまる物語』(メディアパル、2007年)ISBN 978-4896100907
    • 世界の片隅で(『しゅっぱんフォーラム』掲載)
  • 『29歳』(日本経済新聞出版社、2008年)ISBN 9784532170875
    • ハワイへ行きたい
  • 『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション 10』(河出文庫、2013年)ISBN 9784309412306
    • メルボルンの想い出
  • 『大阪ラビリンス』(新潮文庫、2014年)ISBN 9784101204376
    • 火花1火花2

ムック

  • 『もうひとつの、きょうのできごと』(河出書房新社、2004年)ISBN 430901626X
    • 映画出演者によるイメージ写真と、柴崎友香の書き下ろし短編小説から成っている。

単行本未収録作品

  • ランドスケープ(『文藝』2003年夏号)
  • あと少し(『文藝』2004年冬号)
  • 小さな覗き窓(『集英社WEB文芸RENZABURO』連載中)※フォトエッセイ
  • お餅の焦げたところ(『ODD ZINE』Vol.4)
  • 知らなかった、と人々は言った(『文學界』2021年2月号)
  • 現在の地点から(『文藝』2024年秋季号)

出演

ウェブ番組

  • ポリタスTV(YouTube、2023年12月7日)

関連項目

  • 日本の小説家一覧

外部リンク

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