ダニエラ・ベガ : ウィキペディア(Wikipedia)
ダニエラ・ベガ・エルナンデス(、1989年6月3日 - )は、チリの女優でメゾソプラノ歌手。第90回アカデミー賞で外国語映画賞を獲得した映画『ナチュラルウーマン』(2017年)での演技が絶賛を受け、世界的注目のきっかけとなった。また第90回アカデミー賞ではプレゼンターも務め、オスカーの歴史において初めてプレゼンターを務めたトランスジェンダーの人物となった。2018年には、タイム誌において「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。
日本では名字を英語風に読んだ「ダニエラ・ヴェガ」表記も見られるが、本記事ではチリの公用語であるスペイン語の発音に近い「ベガ」表記に統一する。
幼少期
ベガは1989年6月3日に、チリのサンティアゴ県で、父イゴール・アレハンドロ・ベガ・イノストロサ (Igor Alejandro Vega Inostroza) と母サンドラ・デル・カルメン・エルナンデス・デ・ラ・クアドラ (Sandra del Carmen Hernandez de la Cuadra) の長子として生まれた。ベガは8歳の時から、祖母に習ってオペラを学び始めた。成長したベガは男子校に通ったが、そこではいじめを受けた。10代後半までこの男子校に通ったが、自身がトランスジェンダーであることを自覚し、を始めた。両親と弟のニコラス (Nicholas) は、当時のチリが保守的な環境であったにもかかわらず、ベガのジェンダー移行を支援した。ジェンダー移行を済ませた後、彼女はトランスジェンダー女性としての機会の無さから鬱状態に苦しんだが、両親から支援を受け、また父の勧めで美容学校、その後演劇学校に通った。
キャリア
2011年 – 2017年:初期の仕事
ベガは脚本家・監督を務めるひとりの人物から、自身の経験を基にして、トランスジェンダーに関する短い舞台作品を共同製作しないかと持ちかけられた。彼女も協力したこの作品は、2011年にマルティン・デ・ラ・パラ (Martin de la Parra's 2011) により "La mujer Mariposa"(The Butterfly Woman、蝶女)とのタイトルで戯曲化され、ベガ自身をスターに押し上げた。この作品では、ベガの歌も披露され、サンティアゴで8年間上演された。この間、彼女は移民を題材にした小片 "Migrante"(「移民」の意)など、いくつかの作品に参加している。ベガが広く知られるようになったのは、2014年にの人気曲『マリア』(原題、"Maria")のミュージック・ビデオに出演したことがきっかけである。この曲とミュージック・ビデオは、同性愛者の自殺予防機構とのコラボレーションで作られたもので、10代の同性愛者の自殺予防に関する啓発目的で製作された。銀幕デビューとなったのは、2014年のドラマ映画『』(原題)で、父の通夜に参列するトランスジェンダー女性を演じた。
2017年:『ナチュラルウーマン』でのブレイクスルー
第67回ベルリン国際映画祭でお披露目された、セバスティアン・レリオ監督の『ナチュラルウーマン』(2017年)では、ベガの演技が多くの批評家に絶賛された。この作品では、ベガ演じるマリーナと、年上で将来も思い描く男性オルランド(演:)との物語が描かれる。オルランドが病で急死した後、マリーナは彼の家族や社会の冷たい目に直面し、自らが題名通りの「魅力的な女性」であることを示すため戦いを始める。『バラエティ』誌の批評家ガイ・ロッジは、ベガの演技について「ベガの力強く、表情豊かで、かすかに苦しみを匂わせる演技は、政治的な賞賛をも大きく越えた評価に値する。幾重にも重ねられた、感情的に多型な演技での妙技であり、これは正確な感受性を持った監督が育んだものだ。監督は、マリーナが行きたくないような場所へ押し込むこと無く、彼女の状況を全く率直に表現させた」と述べた。また、アカデミー賞候補作発表前には、彼女の名前が主演女優賞候補として強く推されるほどだった。前哨戦となるパームスプリングス国際映画祭では、外国語映画部門主演女優賞を獲得した。ベガは2018年の第90回アカデミー賞でプレゼンターを務め、オスカー史上初めてプレゼンターを務めたトランスジェンダーとなった。また同じ年には、タイム誌において「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。
フィルモグラフィ
作品名 | 年 | 役名 | 監督 | 備考 | 出典 |
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(原題)La visita | 2014年 | エレナElena | マウリシオ・ロペス・フェルナンデスMaurício López Fernández | 英題:The Guest | |
ナチュラルウーマンUna mujer fantástica | 2017年 | マリーナ・ビダルMarina Vidal | セバスティアン・レリオSebastián Lelio | 英題:A Fantastic Woman |
受賞とノミネート
年 | 映画賞 | 対象 | 部門 | 結果 | 出典 |
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2015年 | 17èmes Rencontres du Cinéma sud-américain | (原題)La Visita | 最優秀女優賞Best Actress | ||
2017年 | Film Festival Lima PUCP | ナチュラルウーマンUna mujer fantástica | 最優秀女優賞Best Actress | ||
Premio iberoamericano de cine Fénix | 最優秀女優賞Best Actress | ||||
Havana Film Festival | 最優秀女優賞Best Actress | ||||
2018年 | パームスプリングス国際映画祭Palm Springs Film Festival | 外国語映画 最優秀女優賞Best Actress in a Foreign Language Film | |||
Dorian Awards | 今年一番の女優賞Best Performance of the Year – Actress | ||||
本人 | ライジング・スター賞Rising Star Award | ||||
International Cinephile Society Awards | ナチュラルウーマンUna mujer fantástica | 最優秀女優賞Best Actress | |||
Caleuche Awards | 最優秀主演女優賞Best Leading Actress | ||||
Platino Awards | Best Actress |
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/03/19 16:03 UTC (変更履歴)
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