グレゴリー・ペック : ウィキペディア(Wikipedia)

エルドレッド・グレゴリー・ペック(Eldred Gregory Peck、1916年4月5日 - 2003年6月12日)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ出身の俳優。

プロフィール

アイルランドおよびイングランド系の父親Freedland, Michael. Gregory Peck: A Biography. New York: William Morrow and Company. 1980. ISBN 0688036198 p.10United States Census records for La Jolla, California 1910とイングランド系の母親United States Census records for St. Louis, Missouri - 1860, 1870, 1880, 1900, 1910のもとに生まれる。

ボート競技の選手としてオリンピックを目指しカリフォルニア大学バークレー校に進学。ボート部に在籍し活躍するも、第二次世界大戦で開催中止となり不参加に終わるが、同時にボート練習で負った脊椎損傷のために兵役免除となる。薬剤師だった父の影響で医学を勉強していたが演劇に興味を覚え、卒業後ニューヨークに移って俳優養成学校のネイバーフッド・プレイハウスで演技を学んだ。大学在学中、学費を稼ぐために一年間休学し、運送会社にトラック運転士として勤務、ニューヨークの俳優修業中にも、劇場案内人やタクシー運転士を経験している。この時の経験が、後に一見不似合いなキャラクターである荒くれカウボーイ(白昼の決闘)、密漁船船長(世界を彼の腕に)、残忍な復讐鬼(無頼の群)、イカサマ賭博師(西部開拓史)、ベテラン偵察員(レッド・ムーン)等の演技に活かされることとなった。

ブロードウェイの劇場でデビュー後、1944年に映画デビュー。1946年の『子鹿物語』でアカデミー主演男優賞に初ノミネートされると、翌年にはユダヤ人問題を扱った社会派ドラマ『紳士協定』に出演し、2年連続で主演男優賞ノミネート、更に作品がアカデミー作品賞を受賞したことから一気にハリウッドでも指折りのスターとなる。

ウィリアム・ワイラー監督による『ローマの休日』の新聞記者役を演じた際にはオードリー・ヘプバーンの才能をいち早く見抜き、ヘプバーン本人を含めスタッフに様々な助言をし、映画を大成功に導き、ヘプバーンにとって最高の共演者となった。また共同製作者として同監督と組みチャールトン・ヘストンを招いた西部劇の名作『大いなる西部』では身長190cmという大男同士の格闘を演じた。

1962年には自主製作『アラバマ物語』で念願のアカデミー主演男優賞を受賞した。

ペックは初期のころからのイメージそのままに、1960年代後半から1970年代初頭までは、理知的で紳士な風貌が似合う役柄が大半を占めていたが、1976年のオカルト大作『オーメン』以降は打って変わって性格俳優的な雰囲気が漂うようになり、1978年『ブラジルから来た少年』では、マッドサイエンティストを演じるなど変貌を遂げ、カルト映画ファンからも一目置かれる存在になった。

1996年に一度現役引退を表明したが、2年後にはTV映画作品『モビー・ディック』に出演、テレビを中心に活躍した。亡くなった2003年には、アメリカン・フィルム・インスティチュートが選んだ「映画の登場人物ヒーローベスト50」の第1位に『アラバマ物語』のフィンチ弁護士が選ばれており、誠実で正義感にあふれる彼のキャラクターは現在でも人々に愛されている。

政治に関してはリベラルな発言が多かったため、リチャード・ニクソン大統領からは政敵リストに載せられるほど警戒されていたというCorliss, Richard. "The American as Noble Man" – Time Magazine – Monday, June 16, 2003。また、実際の彼も知的な紳士で、人格者として知られておりThe Fairest LADY Audrey Hepburn、その人望を買われて政界進出の噂が周囲から出た(オーソン・ウェルズにも大統領になるよう薦められていたという)が、本人は「すでに自分は大統領役や歴史上の偉人をもう何人も演じている。もうこれだけで充分ではないか?」と答え完全否定。あくまで俳優として職を全うすることを公言したエピソードが知られる。

アカデミー協会の会長やハリウッド俳優組合の会長など各種映画団体の会長や理事、アメリカ癌協会などでも理事を務めた。ダブリン大学のフイルム・スクールの後援者でもあった。2度の結婚で5人の子供がいる。なお、『オーメン』の撮影の2か月前に息子を拳銃自殺で亡くしている呪われたとされる3つのホラー映画 - ライブドアニュースTHE STRANGER THAN FICTION STORIES SURROUNDING THE OMEN, By Chris Littlechild, Ripley Entertainment

主な出演作品

公開年邦題原題役名備考
1944 炎のロシア戦線Days of Glory ウラジミール 別題『栄光の日々』
王國の鍵The Keys of the Kingdom
1945 愛の決断The Valley of Decision ポール・スコット
白い恐怖 Spellbound ジョン・バランタイン
1946 子鹿物語 The Yearling ペニー・バクスター ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門) 受賞
白昼の決闘 Duel in the Sun
1947 決死の猛獣狩りThe Macomber Affair ロバート・ウィルソン
紳士協定 Gentleman's Agreement フィリップ
パラダイン夫人の恋 The Paradine Case アンソニー・キーン
1949 廃墟の群盗Yellow Sky ジェームズ・ストレッチ・ドーソン
頭上の敵機 Twelve O'Clock High フランク・サベージ准将
1950 拳銃王The Gunfighter ジム・リンゴ
1951 艦長ホレーショ Captain Horatio Hornblower ホレイショ・ホーンブロワー
勇者のみOnly the Valiant リチャード・ランス
愛欲の十字路David and Bathsheba ダビデ
1952 世界を彼の腕にThe World in His Arms ジョナサン・クラーク
キリマンジャロの雪 The Snows of Kilimanjaro ハリー・ストリート
1953 ローマの休日 Roman Holiday ジョー・ブラッドレー
春風と百万紙幣The Million Pound Note ヘンリー・アダムス
1954 夜の人々Night People スティーヴ・ヴァン・ダイク
紫の平原The Purple Plain ビル・フォレスター
1956 灰色の服を着た男 The Man in the Gray Flannel Suit トム
白鯨 Moby Dick
1957 バラの肌着 Designing Woman マイク
1958 無頼の群The Bravados ジム・ダグラス
大いなる西部 The Big Country ジェームズ・マッケイ 兼製作
1959 勝利なき戦い Pork Chop Hill 中尉
悲愁Beloved Infidel F・スコット・フィッツジェラルド
渚にて On the Beach ドワイト・ライオネル・タワーズ艦長
1961 ナバロンの要塞 The Guns of Navarone キース・マロリー大尉
1962 恐怖の岬Cape Fear サム・ボーデン
西部開拓史 How the West Was Won クリーヴ・ヴァン・ヴェイレン
アラバマ物語 To kill a Mockingbird アカデミー主演男優賞 受賞ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門) 受賞
1963 ニューマンという男Captain Newman, M.D. ニューマン
1964 日曜日には鼠を殺せ Behold a Pale Horse マヌエル
1965 蜃気楼Mirage デヴィッド
1966 アラベスク Arabesque デヴィッド・ポロック教授
1968 レッド・ムーンThe Stalking Moon サム
1969 マッケンナの黄金 Mackenna's Gold マッケンナ
0の決死圏The Chairman ジョン・ハサウェイ
宇宙からの脱出 Marooned チャールズ・キース
1971 新・ガンヒルの決闘Shoot Out クレイ
1974 荒野のガンマン無宿Billy Two Hats アーチ・ディーンズ
1976 オーメンThe Omen ロバート・ソーン
1977 マッカーサー MacArthur ダグラス・マッカーサー
1978 ブラジルから来た少年 The Boys from Brazil ヨーゼフ・メンゲレ博士
1980 シーウルフThe Sea Wolves ルイス・ピュー中佐
1982 引き裂かれた祖国/ブルー&グレイThe Blue and the Gray アブラハム・リンカーン テレビ・ミニシリーズ
1983 赤と黒の十字架 The Scarlet and the Black ヒュー・オフラハーティ司祭 テレビ映画
1987 サイレント・ボイス/愛は虹にのせてAmazing Grace and Chuck 大統領
1989 私が愛したグリンゴ Old Gringo アンブローズ・ビアス
1991 アザー・ピープルズ・マネー Other People's Money アンドルー・ジョーゲンソン
ケープ・フィアーCape Fear リー・ヘラー
1993 愛のポートレイト/旅立ちの季節The Portrait テレビ映画
1998 モビー・ディックMoby Dick テレビ映画

日本語吹き替え

1966年に『土曜洋画劇場』で『子鹿物語』が放送されてから、ほとんどの作品で城達也が専属(フィックス)として務めていた。

城は自身が吹き替えたペック出演作の中では『ローマの休日』『子鹿物語』『白鯨』の三本が印象深いと語り、特に『白鯨』は、収録後三日間声が思うように出なくなるほど執念を込めて演じたという。また、ペックについて「演じて出てくる優しさ、人柄の良さ」が好きだと語っていた。

このほかにも、小川真司、津嘉山正種、田中秀幸なども複数回、声を当てている。

関連項目

  • マッカーシズム

外部リンク

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