「クイーンダム 誕生」ジェナ・マービンと対談、ジェンダーと社会性を考察【湯山玲子コラム】
2026年2月9日 13:00
撮影/間庭裕基湯山玲子さんが映画とファッションを考察するコラム「湯山玲子 映画ファッション考。物言う衣装たち。」。今回はそのプルアウト版として、女装、つまり誇張した女らしさや性表現でパフォーマンスを行うドラァグクイーンについての考察インタビュー。ある意味、ファッションの力を極限まで推し進めた存在は、その突出した存在は、ファッションの可能性と、その根底にあるジェンダーと社会性について様々に問題を投げかけていきます。
取り上げる作品は、LGBTQ+の活動が弾圧されるロシアに現れたクィア・アーティストのジェナ・マービンを映したドキュメンタリー「クイーンダム 誕生」(公開中)。
本作のアジア初公開を記念し、本コラム特別編として来日したジェナと湯山さんが対談。唯一無二の「全く新しい発想の存在を目指している」というジェナの生き方に湯山さんが迫ります。
(C)2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVEDもちろん、最初は既存のドラァグのスタイルを模倣することから始めましたが、すぐに自分なりの個性を出すことに集中していきました。女装自体は、実はお茶の間レベルで人気を博していたキャラが、ロシアにはいたのです。2000年代にヴェールカ・セジュチュカという、女装コメディアンが大ブレイクして、ユーロビジョンに出場するほどの文化的象徴でした。

実は、私も最初は派手なドレスを着てクラブで仕事をしていた時期もあるのです。ドラァグクイーンは「女性を超えた女性であるべきだ」という考えもあるので、そのようなドレスやヘアスタイル、ボディラインも意識していました。でも、ステージを終えて家に帰るたび、この豪華なルックに見合う「本質的な中身」は何なのかと自問していたんです。

(C)2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVEDそういえば、ジェナさんの周囲には、常に助けてくれる女性たちがいますね。マッチョで男らしさに拘る男性がまだまだ大多数のロシアという国の女性たちの在り方を考えさせられるところがありました。彼女たちの包容力は、「所詮男なんて、奥さんの掌の中で遊んでいるようなもの」という男尊女卑に関するきれい事の言い換えにも例えられる話でもあるのですが。


最初は正直、他の学生たちも含めて、みんな驚いていました。でも自分の中では、不思議と拒否感はなくて、「そういう道もあるんだ」と感じたんです。その課題に取り組むにあたって、家で何度も体を動かして練習する、ということはほとんどしませんでした。むしろ、頭の中でずっと動きを回し続けていました。こういう動きになる、次はこうなる、と想像だけを重ねていったんです。
そして発表の日、初めて音楽をかけて踊りました。その瞬間、自分の体が勝手に、不思議なくらい自然に動いたんです。今までの訓練や型とはまったく違う感覚で、体が表現そのものになった。その気持ちよさ、その解放感は、今でもはっきり覚えています。

現在はフランスのアーティスト・レジデンスなどで新しい劇団とのコラボレーションを模索しています。フランスでは、ロシアとはまったく違うドラァグシーンに出会いました。一番大きく感じたのは、即興性と連帯感です。彼女たちは、個人で完結している存在というより、コミュニティとして動いているんです。周りで起きている社会的な出来事や問題についても、みんなで話し合って、共有している。孤独な存在ではないという感覚が、すごく強いのです。
(C)2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED短いパフォーマンスを次々と消費されるよりも、時間をかけて、場所と関係を結びながら作品を育てていく。そうした環境の中では、ドラァグという形式を使うこともあれば、使わないこともあると思います。その中で生まれる変化や揺らぎも含めて、作品にしていきたいですね。

モスクワから約1万キロ離れた極寒の田舎町マガダンで祖父母に育てられた21歳のジェナ・マービンは、幼い頃から自身がクィアであることを認識しており、保守的な町で暴力や差別の標的にされてきた。その痛みやトラウマをアートへと昇華させたジェナの芸術性はSNSで支持を集め、またたく間に脚光を浴びる。ジェナは過激で独特な衣装をまとい、無言のパフォーマンスを通して、ウクライナ侵攻への反対や、LGBTQ+の活動を禁止する法律と政治、社会に対する反抗的な姿勢を示す。現在のロシアでは命を危険にさらす行為だが、それでもジェナは自らの存在をかけて抗議を続け、社会の無関心と差別に一石を投じている。映画ではそんなジェナの“強さ”のみならず、まだ若いジェナが将来への不安や自己との葛藤を抱える姿や、祖父母との関係などにもカメラを向け、痛みと苦しみの果てに孤高のクイーンが誕生する瞬間を映し出す。
(C)2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED
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