トランプ大統領が過激すぎる「サウスパーク」に反論しない理由 コメディアンが分析
2025年12月2日 14:00

米アニメ「サウスパーク」が第2期トランプ政権を真正面から風刺し、衝撃的な描写が物議を醸している。過激な物言いで知られるトランプ大統領なら、徹底的に反論してもおかしくないところだが、沈黙を貫いたままだ。米ハリウッド・レポーターが、俳優でコメディアンのパットン・オズワルトによる分析を紹介している。
今シーズンの「サウスパーク」は、大統領役の俳優が砂漠をさまよう中、アメリカの有権者を誘惑から救おうと自分の局部からのメッセージに耳を傾けたり、自由世界のリーダーがサタンとの不倫関係によって反キリストの父となったり、今まで以上に煽情的な風刺を繰り広げてきた。
Photo by Win McNamee/Getty Images作中のトランプ大統領は、短気かつ好色、利己的で、誰に対しても欺まん的な人物として描写されている。極秘に堕胎を試みたり、ホワイトハウス内で副大統領と関係を持ったり、その証拠映像をただのディープフェイクだと信じ込ませるようメディアを操作したり、数々の問題行動をフィクションとして描いている。
しかし、ここまで攻撃されてもトランプ大統領は一切リアクションしていない。外交では、すぐさま他国に対して反撃しているが、「サウスパーク」に対してはSNSでも沈黙を貫き、番組の挑発に乗る気配は皆無だ。
その理由について、オズワルトは米デイリー・ビーストのポッドキャスト番組「The Last Laugh」で持論を展開した。
オズワルトは、一つ目の理由として「視聴率とお金」を挙げた。「『サウスパーク』は、とんでもない額の金を稼ぐだけでなく、とんでもない視聴率を叩き出している。トランプがどれだけ腹を立てようとも、最終的に彼が尊重するのは、数字が振り切れていて、金も振り切れている存在だ」とコメント。「『サウスパーク』のように、作品としてのクオリティはもちろん、数字と金の面でも圧倒的で、誰も否定できないほど巨大な存在になると、トランプは何も言わなくなる」と語った。
最新のシーズン27は、初回視聴が1999年以来の最高記録となる再生回数590万回を記録。さらに、第2話では視聴者がさらに増加し、3日間で620万回を突破した。クリエイターのトレイ・パーカー&マット・ストーンは大規模契約により年間2億5000万ドル(約375億円)を受け取ると報じられている。
事実、トランプ大統領は選挙キャンペーン中のインタビューで「大事なのは1つだけ。それは視聴率だ。いい奴でも悪い奴でも、邪悪でもひどくても、下品でも上品でもいい。視聴率がなければ意味がない」と公言している。
トランプ大統領はこれまで、ロバート・デ・ニーロ、ファッションブランドのノードストローム、深夜の政治風刺番組など、気に入らない相手には深夜でも即座にSNS攻撃を行ってきた。にもかかわらず、強烈な批判を浴びせた「サウスパーク」に対しては、一切反応していない。
その理由はシンプルだ。反撃すると、そのコメディアンの知名度が跳ね上がってしまうからだ。
トランプ自身が、自分の一言がメディアを暴走させる武器であることを認識している。とくに制作スパンの短い「サウスパーク」にとって、大統領との直接対決は“最高のネタ”となり、番組を史上最高レベルにバズらせる材料になりうる。トランプ陣営はそのことを理解し、あえて沈黙を貫いている可能性が考えられる。
「サウスパーク」と並ぶ、もうひとつの国民的アニメシリーズ「ザ・シンプソンズ」も、2000年に未来のトランプ大統領を予言し、最近ではトランプ支配によるディストピアなアメリカを描くなど、20年以上にわたり風刺を貫いてきた。
しかし、「ザ・シンプソンズ」はいまやポップカルチャーの殿堂に深く根を下ろしており、アメリカ最長寿のシットコムにケンカを売ることが得策ではないことを、トランプ大統領自身も理解しているに違いない。「サウスパーク」に対しても同様の態度をとっているのだろう。
「サウスパーク」の最新シーズンは、視聴率が過去最高を更新し、コンテンツの過激さもシリーズ屈指のレベルに達していることから、トランプを巡る風刺は今後さらに加熱するとみられる。果たして、トランプ大統領がしびれを切らし、舌戦の口火を切る日は来るのだろうか?