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舘ひろしが眞栄田郷敦に説く、芝居よりも大事なもの【「港のひかり」インタビュー】

2025年11月25日 19:00

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眞栄田郷敦(左)、舘ひろし(右)
眞栄田郷敦(左)、舘ひろし(右)

若手随一の実力派・藤井道人監督と、日本を代表する名キャメラマン・木村大作が初タッグを組んだ意欲作「港のひかり」が、全国で公開中だ。今作で7年ぶりに単独主演を務める舘ひろしと、「ゴールデンカムイ」に続き共演を果たした眞栄田郷敦が芝居について、そして今作のテーマのひとつでもある“恩人”について語り合った。(取材・文/大塚史貴、写真/根田拓也)

藤井監督による完全オリジナル脚本の今作は、元ヤクザの“おじさん”と、両親を事故で失い、視力も失ってしまった不遇の少年の十数年間に渡る友情物語。舘が元ヤクザの“おじさん”、眞栄田が“おじさん”と年の差を超えた友情を結ぶ目の見えない少年・幸太の青年期を演じた。

藤井組のスタッフの顔ぶれを見るにつけ、藤井監督と木村が現場を共にしていることが想像し難いと考える映画人は少なくないはずだ。実際に俳優部として現場にいたふたりは、どのような光景を目の当たりにしたのか聞かずにはいられない。

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舘「藤井監督は新しいタイプの監督。僕らの年代だと、助監督を経て監督になることが多かった。最初から監督としてやってきた藤井さんが、ずっとフィルムで撮ってきた叩き上げの木村大作という名キャメラマンと仕事をしてみたいという気持ちはあったんでしょうけれど、ちょっと後悔したんじゃないかな(笑)。
というのも、フィルムで撮るといってもモニターに繋げようと思えば繋げられるわけです。でも大作さんはそれを許さなかった。昔ながらのキャメラマンの『画はキャメラマンのものだ』という矜持があるからね。きっと戸惑ったと思うし、不安なまま撮影していたんじゃないかな。でも、逆にそれが藤井さんにとって今までにない世界を作り出したんじゃないかなという気がしています」
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眞栄田「いつもそうだったわけではないのですが、藤井さんと大作さんが意見をぶつけ合うなか、舘さんが『まあまあまあ』ってあいだに入っている印象が強いです(笑)。でも、互いが互いに寄り添おうとしているイメージもありました。藤井さんはモニターを出さないという大作さんの意向を尊重していましたが、大作さんは『藤井さんの作品を研究してきた』とおっしゃっていました。藤井さんの求める世界をすごく意識されているんだなという気概を感じました」
舘「大作さんは純粋。僕がすごく印象に残っているのは、雨のシーンと雪のシーン。港の雪は、本当の雪ではなく敷き詰めたもの。大作さんの画で訴える力というのは、言葉で表現できないくらいすごいんです」
眞栄田「カモメにもこだわっていましたよね。カモメを飛ばすんだって、助監督さんがエサをまいて……」
舘「カモメも最初は喜んでエサを食べていたんだけど、途中から飽きちゃってね(笑)」
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ふたりの表情から、現場がいかに知的好奇心を刺激するものであったかが容易に見て取れる。撮影は23年11~12月に能登半島・富山県で行われたが、クランクアップ直後に起こった能登半島地震の影響で、海が隆起して入船することが難しくなってしまった大沢漁港や、焼失してしまった輪島の観光名所・朝市通りなど、重要なシーンの多くに美しい輪島や登山の情景が収められている。それだけに、撮影でお世話になった人々を激励する意味でも能登でジャパンプレミアを開催し、舘、眞栄田、尾上眞秀らが現地を訪れ、完成を直接報告した意義は非常に大きい。

舘は、藤井監督と「ヤクザと家族 The Family」で仕事をし、「必ずもう一度ご一緒したい」と約束を交わしていたそうで、今作では企画から参加。脚本の内容についても、何度も打ち合わせを重ねてきたという。再び相まみえることになった藤井監督の最大の強味を、舘はどんなところに見出したのか聞いてみたくなった。

舘「自分の思っているイメージが、ぶれずにはっきりしていることが強味かもしれませんね。それと、俳優の内面を撮ろうとしてくれる。そこが藤井監督の良いところじゃないかな」
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眞栄田「僕も妥協を許さない方だと思いました。柔軟な部分は柔軟ですが、引きたくないところは絶対に引かない」
舘「良い意味で、映画少年なんですよ」

今作のキャッチコピーに、「おじさんが僕の世界を照らしてくれた」とある。ふたりにとって、俳優のキャリアの中で自分の世界を照らしてくれた恩人と考えたとき、誰の顔が思い浮かぶだろうか。

舘「渡哲也さん以外にいないですね。今の僕があるのは、渡さんのおかげだと思っています。ちょっと芝居ができるようになった頃、軽い芝居をするようになった時期があったんです。一度だけ、軽い調子で『Have a good day!』って台本にないセリフを言ってしまったんです。そうしたら、渡さんから『あんな芝居はするな』と怒られたことがあります。普段はセリフなんて覚えなくても怒られたことがないから、なおさら応えました。
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西部警察』の渡さんへの報告セリフのときなんて、覚えていないから言えないわけです。そうすると、渡さんが台本を破って『ひろし、ここ見て言えよ』って胸元に貼ってくれたりしましたしね。セリフを上手く言うとか言わないとか、俳優にとって大事なことじゃないんですよ」
眞栄田「僕は二階堂ふみさんです。役に対する掘り下げ方とか、現場での居方とか、共演してから考え方がガラッと変わりました。3カ月くらい現場で一緒だったので、背中を見て『こういう役者っていいな』と感じさせてくれました」

本編を観るにつけ献身、見返りを求めない無償の愛がちりばめられており、舘が製作決定時に出したコメント「人の強さとは何か、誰かのために生きるとはどういうことか、かつて親分に教えられたその思いを愚直に守りながら、漁師として孤独に生きようとする男を演じました」という一文に改めて目がいく。必然的に、“かつての親分”からの教えについて、より深掘りして話を聞いてみたくなる。

舘「僕が渡さんによく言われたのは、『芝居は上手くなるな』ということ。どういうことかというと、俳優というのはその場の芝居ではなく、存在感で見せろということだったと思うんです。わたしはわたしなりに頑張ってきましたが、でも眞栄田くん、僕から学ぶことなんて何もありませんよ(笑)」
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眞栄田「すごく謙虚な方で、『俺は芝居ダメだから』っていつもおっしゃられるのですが、僕もこういうベテランになりたいです。『ゴールデンカムイ』のときにも感じたことですが、セリフひとつひとつへのこだわりがすごいといつも感じています」
舘「全くこだわっていないんですけどね(笑)。セリフを言うのに精いっぱいなんですよ」

舘の軽妙洒脱な会話に、眞栄田は目を輝かせながら聞き入っている。それもそのはず、眞栄田は「僕は大人になったら舘ひろしさんみたいな大人になりたいってずっと思っていたので」と明かし、相好を崩す。すかさず、「お芝居はこれ以上、上手くならなくていいから。眞栄田くんには皆の目が釘付けになるような魅力があるんだから、そのままを大事にした方がいいね」と舘が切り返す。

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眞栄田「食事にも何度となく連れて行っていただいて……」
舘「人の言えないような話しかしていませんよ(笑)」
眞栄田「昔の失敗談とか、たくさん聞かせてくれるんです。すごく接しやすい存在です」
舘「今の人たちはかわいそうですよ。僕らはどこかで守られていましたから。石原プロにしたって、無茶をやっても平気でした。今の人は無茶ができない。俳優って、それが大事だと思うんだ。型にはめられて良い子でいるのではなく、どこか日常ではないことを表現し続けていかなければならないのだから、そういう感性を常に育んでいかなければダメじゃないかな……という気がします。僕はすごく期待しています」
眞栄田「ありがとうございます!」

執筆者紹介

大塚史貴 (おおつか・ふみたか)

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映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。

Twitter:@com56362672


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