吉沢亮×李相日監督「国宝」を携えてついに全米上陸! LA&NYで大喝采を浴びる
2025年11月25日 14:00

第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞日本代表に決定した「国宝」(上映中)の上映キャンペーンが、現地時間11月18日から11月23日にかけてロサンゼルスとニューヨークで行われ、主演の吉沢亮と李相日監督がこれに参加。舞台挨拶に登壇し、参加者からの質疑に応答した。
現地時間18日に、アカデミー・ミュージアム(映画博物館)内の「Ted Mann劇場」で、ジェトロ(日本貿易振興機構)ロサンゼルス事務所主催イベント「J-SCREEN」の一環として行われた特別上映会。エンドロールが始まると会場から割れんばかりの盛大な拍手とともに「ブラボー!」の声も聞こえ、その中を吉沢と李監督が登壇した。
司会者から、なぜ歌舞伎の世界に惹かれたのか問われた李監督は、「僕は歌舞伎の中でも特に女形という存在に非常に魅了されました。美しさはもちろんのこと、ちょっとしたグロテスクさもあり、多分たくさんのものを失いながら一生涯をかけて芸を究めていく。非常に純粋で稀な生き物な気がしています。なぜ彼らがそこまで高みを目指すのか、彼らの人生の見えない部分を知りたい、解明したいと思ってこの企画に着手しました」と製作のきっかけを明かした。

吉沢は、歌舞伎への取り組みについて質問を受け「歌舞伎を見たことはありましたが、深く理解していませんでした。そのため基本的にはゼロからのスタートでした。稽古を始めて最初の3〜4カ月は、『すり足』という歩行技術の練習だけでした。そして、基礎稽古の後、実際の踊りに移っていきました。その中で、本物の歌舞伎役者のレベルには決して到達できないだろうと悟りました。ですから、僕はただ、その芸術への献身に集中しました。それは喜久雄の中にも本当にある想いで、喜久雄という役を演じるうえでも相乗効果があったと思います」と役作りについて答えた。
撮影監督のソフィアン・エル・ファニと、どのように協力して異なる時代を視覚的に表現したのか問われた李監督は「彼の美的感覚やその言葉がはっきり分からなくても、役者のお芝居を見抜くあの目、そういった力を信じて撮影をお願いしました。ソフィアンと相談して、基本的な考え方として、歌舞伎の撮り方を3つのレイヤーに設計を立てました。まずは、歌舞伎全体の美しさがしっかり伝わるように、その歌舞伎の様式美を捉える、しかも映画の観客がまるで舞台を観ているかのように体感できるようなショット。2つ目のレイヤーは、客席など、歌舞伎役者の世界から見た視点。3つ目が一番重要なのですが、その舞台にいる彼らの内面。例えば、喜久雄が今どんな重圧をかけられて、どういった自分の内面的な爆発を抱えながら舞台にいるかという、光と影で言うと影の部分まで映るように、クローズアップを撮る。その3つのレイヤーで設計しました」と撮影の狙いについて解説。

喜久雄の経験レベルや感情の状態、年齢に応じて、どのように演じ分けたかを問われた吉沢は、「李監督の演出として、踊りのシーンでも、お初として『曽根崎心中』を演じているシーンでも、ただただ稽古したことを美しく踊るということではなく、その時に舞台に立っている喜久雄の心境になって踊ってくれと言われました。『お初』という役ではなく、「お初を演じている喜久雄」でいてくれ、と。そのため、技術的な面で形を変えていくというよりは、そのシーンの前に起こったことや、今そこに喜久雄が立っている覚悟や恐怖、そういう感情によって内側から出てくるもので踊っていくということを意識していて。他の歌舞伎役者さんと手法は全然違うと思いますが、その時の喜久雄の心境によって少しずつニュアンスは変わっていたと思いますね」と語った。

翌19日は、観光名所のハリウッド・サインを訪れた吉沢と李監督。前日の上映を振り返り、吉沢は「迎え入れてくださる時の拍手や僕たちが話している時に観客の皆さんが頷きながら聞いてくださっていて、すごく深いところで観てくださっているということが伝わってきました」とコメント。李監督は、「歌舞伎を題材にしているので、どこまで理解してくださるのかという懸念は少しありましたが、そういったものを超えて何か迫力を感じ取ってくれている。上映が終わり、我々が登壇した時、特に“喜久雄(吉沢)”が登壇した時の『本物が現れた!』と、空気がざわつく感じがあり、肌で感じるものがありました」とアメリカでの上映の手応えを語った。
その後、来年の北米公開に先立ち、先行限定劇場公開をしているAMC Universal Cityでも舞台挨拶を実施。李監督は、「歌舞伎を題材にした映画ですが、特にハリウッドで観てもらう意義、役者の人生そのもの、歌舞伎役者もハリウッドの映画スターも同じように自分の人生を犠牲にしながら芸術家として高みを目指して、何かその狂気を含め畏怖心と美しさを感じる。それは日本のみならず、世界的に普遍的な感動をもたらすと思っています。今日、ここアメリカで皆さんの顔を見ながら、その反応を見ることができ、とても有難く思っています」と挨拶。
一方、吉沢は、「(日本での大ヒットを受け)これほど日本のお客様が歌舞伎を題材にした映画を愛してくれると想像もしていませんでした。芸事に対する愛憎、ひたむきに向かっていく人間たちがものすごく美しく、お客様に観ていただけたのかと思っています。それは日本だけではなく、アメリカでも、世界中で共感してもらえることではないかと思います。世界の皆さまに観ていただける機会が増えればいいなと思っております。ぜひお力添えをいただければ非常に嬉しく思います」とメッセージを送った。

映画を観た観客からは熱い感想の声が上がっている。

その後、一行はロサンゼルスから約3900kmのアメリカ大陸横断をし、ニューヨークに到着。22日にニューヨークの多くの映画好きに愛される歴史ある劇場で、「国宝」を先行限定劇場公開中の「Angelika Film Center」で挨拶に立った。劇場には多くの観客が詰めかけ、熱気に満ちた状態で上映がスタート。上映終了後、大拍手と歓声に包まれ、李監督と吉沢が登壇した。
司会者から「歌舞伎学者のアイデンティティや他の誰かになって演じること、また常に自分自身であり続けることの間で意識したこと」について問われた吉沢は、こう分析した。
一方、「この映画は喜久雄というキャラクターに対して曖昧な態度を保っています。彼を神聖化したり、悪魔化したりせず、彼の感情や行動を裁きません。そして彼は、最後まで少し捉えどころのない、神秘的なままでいます。喜久雄を少し捉えどころのないままにしておいたのはなぜですか?」と、日本ではあまり聞かれない質問を受けた李監督は、「自分の人生を顧みることより、芸術に進んでいく、その中にめり込んでいく。そちらのほうを選択せざるを得ない、そういった業みたいなものが、表現者としてのしかかっていると思います。だからこそ、喜久雄にしか、彼のような人間にしか到達できない境地というものがあり、彼を通して観客である我々は何かを見せてもらっている。それが、芸術家の意義のような、何か業を背負って生きる人の苦難ではないかと想像しました」と答えた。

翌23日には、ジャパン・ソサエティー・ニューヨークで「国宝」を2回上映。14時の回の上映終了後、「最も難しかった、あるいは最も誇りに思っているシーンはありますか?」と聞かれた吉沢は、「困難ではないシーンはないので(笑)」と答え会場の観客の笑いを誘ったが、「喜久雄としてお初を演じたり、踊ったりすることが一番難しく、最初に李監督からその演出を受けた時、何を言っているのかわからなかったのですが、それまでの喜久雄の人生、今そこに置かれている状況を含めてお芝居してくれ、ということでした。実際の歌舞伎役者さんに比べて非常に感情的になる部分も多いですし、様式美として見せるところをあえてエモーショナルなお芝居で演じる部分は特にドラマチックになっていて、作品を観て李監督が言っていることが分かったと同時に、歌舞伎役者さんではなく、我々のような役者が選ばれた意味が分かりました」と胸の内を明かした。
19時からの上映回では、上映前に舞台挨拶を行ったが、観客はスタンディングオベーションで吉沢、李監督を迎えた。李監督は「約25年前に学生時代の卒業制作で作った作品(「青 chong」)が日本代表になり、NYUの学生映画祭に参加した時に初めてニューヨークを訪れました。そして、今回アカデミー賞国際長編映画賞日本代表の作品という形で、またこの地に戻ることができたことを喜び、また同時に興奮と責任を感じています」と話し、吉沢は、「20歳くらいの時にニューヨークに来て以来大好きになり、そこからほぼ毎年1回は訪れています。今回初めて仕事で呼んでいただき、またニューヨークの皆様と直接お会いできて、こうして僕らの映画が届けられることを非常に嬉しく思っています。最後まで楽しんでください」と締め括り、感謝を伝えた。
「国宝」は、北米で2026年初頭公開予定。

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