河森正治監督×髙橋渉監督×リアン=チョー・ハン監督、日本のアニメーションの底力を語る!「止まっている絵が動いて見えることで命があるように感じる」【第38回東京国際映画祭】
2025年11月2日 20:30

第38回東京国際映画祭で11月2日、シンポジウム「アニメーションだからできること」が東京ミッドタウン BaseQで開催され、東京国際映画祭プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏の司会のもと、「迷宮のしおり」の河森正治監督、「トリツカレ男」の髙橋渉監督、「Little Amélie or the Character of Rain(英題)」のリアン=チョー・ハン監督が出席した。
個性的なアニメーションを手掛けてきた3監督。それぞれのクリエイターが影響を受けたアニメーションの作品についてトークが展開。リアン監督は「私は16歳のとき、映画館で『もののけ姫』を観ました。それから夢中になり、その後VCDを借りることができて、1週間で12回も観てしまいました。そして同じ年に『火垂るの墓』も知り、作品を観たときには、ずっと泣いてしまい、1週間で6回も観ました」と衝撃を受けたことを明かす。

さらに「『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚 追憶編』というアニメに出合い、これは人生で100回は観ていると思います」と告白。藤津氏から「『追憶篇』は、かなりリアリスティックな表現に踏み込んでいた。そういった手描きのアニメで、本物らしく描くインパクトは大きかったのですか?」と問われると、リアン監督は「『追憶編』は、ものすごくインパクトがありました。特に、後に実写映画化された時には、私の個人的な見方ですが、俳優さんたちがとてもクールな動きをしているのに、アニメ版よりもどこか距離を感じてしまったんです」と感想を述べる。
そして「理由は分かりませんが、アニメの絵だからこそ、カメラの配置や非常にシンプルな動きによって、より感情移入できたように思います。実写版は、クールでスタイリッシュすぎるように感じてしまい、リアルでありながらも、かえって現実から切り離されたような感覚がありました」と述べると「絵だけではなく、カメラの配置、作品のトーン、詩情、音楽、そして繊細な演技、そういったもの全てが印象的でした」と監督のアニメーション作りに大きな影響を与えてくれたと語っていた。

またリアン監督は「私がいるフランスという国は、アメリカと日本の間に位置していて、この2つは全く異なる、ほとんど正反対のスタイルを持っています。ですが、私たちの多くは、日本のアニメーションが持つ繊細さに惹かれ、より大きな影響を受けてきました」と語ると「私たちは小規模な、インディペンデントに近い低予算の映画を作っています。ですが、日本のアニメーションをインスピレーションとすることで、ほんの少しの表現で、感情を最大限に動かすことができるのです。日本のアニメーションの本当にすごいところは、最小限の動きで、これほど豊かな感情を描き出せることです」と絶賛していた。
同じ質問に髙橋監督は「子どもの頃に受けたのは『キン肉マン』なんです。『キン肉マン』が大好きで、いつも楽しく観ていました。ですが、時々すごく泣ける回というか、熱い回があるんです。そういう時には、絵のタッチも荒々しくなって、役者さんの演技もすごく熱がこもっていて『アニメでこんなに泣けるんだ』と、とてもインパクトを受けました」と語ると「中学生になると(大友克洋監督の)『AKIRA』に魅了されました。何かこれといったテーマがあるわけではない。感動とか、そういうものを狙っているわけではなくて、破壊の美しさのようなものを、絵だけで表現しきっていて、観終わった後は本当に呆然としました」と衝撃を受けたことを明かしていた。

河森監督は「あまりにも昔なので細かいディテールは忘れましたが」と前置きしつつ、「(1973年公開の山本暎一監督作の)『哀しみのベラドンナ』を初めて観た時の衝撃はすごかったです。深井国さんのイラストが急に動き出して、激しいタッチのまま動いていて……。内容もすごくアダルトな方向性と、アートの方向性がきちんと表現されていて『ここまでアニメーションには可能性があるんだ』と思いました」と語る。
藤津氏から「『哀しみのベラドンナ』は『止め絵』をカメラワークで見せる部分が多く、日本アニメの『必要なところしか動かさない』という精神が極まった感じがありますね」と振ると、河森監督は「アニメーションという言葉には“絵を動かす”という意味合いと“命を吹き込む”という語源的な意味合いがありますが、それは必ずしも動かすことだけで達成されるわけではないと思います。止まっている絵が動いて見えることで命があるように感じる……というだけでなく、止まっている絵でさえ命を感じさせたり、より深い部分を感じさせたりする。そういった表現の幅というのは、すごく魅力的です」と日本のアニメーションの素晴らしさを語っていた。
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