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「宝島」原作者・真藤順丈「沖縄は“青春と革命”の島」 大友啓史監督とトーク、母校・高輪学園生徒たちにメッセージ

2025年9月4日 13:30

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(左から)ジョン・カビラ、真藤順丈、大友啓史
(左から)ジョン・カビラ、真藤順丈、大友啓史
(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

映画「宝島」全校上映会が9月3日、文京シビックホールで行われ、監督を務めた大友啓史、原作者の真藤順丈氏が登壇した。

原作は、戦後沖縄を舞台に、史実に記されない真実を描き切った同名小説。主演・妻夫木聡のほか、広瀬すず窪田正孝永山瑛太らが共演し、アメリカ統治下の沖縄を舞台に、混沌とした時代を全力で駆け抜けた若者たちの姿を圧倒的熱量と壮大なスケールで描き出す。

画像2(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

上映会に参加したのは、真藤氏の母校である高輪学園の全生徒ら約1600人(中学1年生~高校3年生、教職員も含む)。イベントの司会は、沖縄出身のジョン・カビラが務めた。カビラは、本作に声で出演。ハイライトシーンでもある「コザ暴動」が起きた当時、沖縄で暮らし、事件を記憶している。

カビラ「クリスチャンの家庭で育ったわたしは教会に行っていたんですが、そこで大人たちがざわついていました。何やら大変なことがあったらしい。その話を両親とすると、父親が『沖縄の皆さんは虐げられている。いつか爆発するかもしれないと思っていた』と言いました。そして基地で仕事をしてきたアメリカ人の母は『これは、いずれ起こるかもしれないと危惧していた』と。両親にはそういう思いがあったわけです。そしてわたしもこの映画を観ながら涙しました」
画像3(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

高輪学園の生徒は、平和学習で沖縄に行っていると聞いた真藤氏。「僕の頃は平和学習がなかったので。僕も沖縄に行きたかった…!」と語り、会場を笑わせつつも、「母校とこうやって触れあうことになるなんて人生分からないものだなと。僕はこれまで16作くらい小説を書いていますが、映画になるのは『宝島』が初めて。こんなスケールの大きな、ものすごい映画にしてもらって。恵まれてるなと思います」と心境を明かす。

原作を知った時は一気に読み進んでしまったという大友監督。「僕は以前『ちゅらさん』というドラマで本土復帰後の沖縄を撮ったんですが、復帰前の沖縄も撮りたいなと思っていたんです。だから原作の熱量にやられてしまい。作り手としてはその熱量に負けない熱量のある作品を、映画として作ろうと思った」と振り返った。

「僕も感無量でした」と語る真藤氏。「ただ上下巻の長い話で、基地問題というセンシティブな物語なので、どうやって撮るのかなと思っていたんですが、見事に映像化していただいて。本当にこれはすごいことなんですよ。戦後の沖縄の返還までの話を、3時間超とはいえ、1本の映画にまとめていて。なおかつコザ暴動も、飛行機事故も、まったく逃げずに描ききった。本当にすごい映画だなと思った」と語った。

画像4(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会
画像5(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

その言葉に大友監督も「僕も含め、メインのキャストも沖縄の人間じゃないということで。沖縄で起きた過去の出来事をどう描き出すか。そこで体験した人たちの声に耳を傾けて、うそをつかないように。僕らができる精いっぱいをやった」と本作を手がけるにあたっての覚悟を話す。すると真藤氏も「僕も沖縄にはルーツがない。そこで戦果アギヤーという義賊に自分を仮託して、沖縄のリアリティーに満ちた話を書き上げていったわけです。ただ戦後80年ということで、もしグスクやヤマコが生きていたら80歳か90歳くらいだと思うんですが、戦争を語り継ぐという意味で、われわれも当事者の方に頼り過ぎてたところがあるんじゃないかと。だから今度はわれわれの世代がそれぞれに、僕の場合は小説で、どうしてこんな日本になっているのか、何と戦い、置き去りにしているのかをひもといて、いろんな方向に未来へ引き継いでいけるよう、がんばっていかないといけないなと思いました」と話していた。

学生たちからは、感想と質問を受けることに。まずは「皆さんにとって沖縄とは?」という質問が出ると、真藤氏が「青春と革命の島という感じですね」と返答。

真藤氏「このお話は、サンフランシスコ講和条約から沖縄返還までの20年間を描いてるんですが、その時代に本当に熱い時代があった。そこにはわれわれが忘れてしまったものや、青春に関する要素が全て凝縮されている。だからある種、戦後日本のあるべき姿がそこにあるのかなと思うんです。だから沖縄の青春と、その後のものを描いてるのが『宝島』。だから青春の島だと思います」
画像6(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

やがて、ひとりの学生から「真藤先輩に質問です。高輪学園ではどんな学生生活を送っていたんですか?」という質問が飛びだした。真藤氏は「僕は正直言ってボンクラでした。漫画や小説は一杯読んでたけど、夜ふかしをしていたので、授業中は寝てました。でも先生が、僕には内側から出てくるものを表現したいという欲求があるみたいだから、と言って、一緒に進路を考えてくれた。まさに(教育理念の)『見えるものの奥にある見えないものを見つめよう』という言葉の通りでした」と恩師に感謝していた。

画像7(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

最後のメッセージでは、真藤氏はこのようなことを語っていた。

真藤氏「先ほど歴史の教科書で学べないようなこと、という話がありましたが、中学・高校の歴史の授業って縄文・弥生時代からはじまって、現代史みたいなものはほとんどやらずに時間が終わっちゃう。だから歴史の授業は現代史という科目があった方がいいんじゃないかと。それくらい今の日本に繋がってる大事な時代の話ですし、僕は世の中を変えるつもりで『宝島』を書きました。映画のスタッフの皆さんもそういうような、何かを問いかけるようなものを届けたなと思い、感銘を受けています。でも実際に世の中を変えたり、動かない壁を動かしたりするのは皆さんの世代だと思っていますので先輩としてちょっと先輩風を吹かしてますけど、皆さんも自分の大事な宝を探すように、そういう風に人生を送っていただけたら」

一方、大友監督は、映画「宝島」が2度にわたり中断を余儀なくされながらも、奇跡的に復活し完成にこぎつけた“奇跡の映画”であると前置きしつつ、「それだけに僕らもこの映画に対してものすごい愛着を持っているし、それと同時に、未来を切り開こうとしていた登場人物たちに、途中で諦めたら、グスクやヤマコやレイに『お前らに任せるべき作品じゃなかった』と言われちゃうような気がして。途中で諦める判断もできずに、最後までしがみつくようにしてたどり着いた映画なんです。諦めずに一生懸命やってると誰かが光を当ててくれることもあると思うんで。皆さんぜひ『宝島』を見ていただいて、グスクやヤマコやレイに自分を投影していただいて、当事者になっていただけたらと。もしちょっとでも感動していただけたら、この作品をぜひ広めてください」と会場の学生たちに呼びかけた。

画像8(C)真藤順丈/講談社(C)2025「宝島」製作委員会

この日は、登壇がかなわなかった主演の妻夫木よりビデオメッセージが寄せられた。「この映画を通して僕は、過去は変えられないけど未来は変えられると思いました。一人ひとりの想いが、希望ある未来を作っていくんだと、僕は信じています。私たちは、先人たちの想いと共に今を生きています。今があるということは当たり前ではありません。何のために生きていくのか、そして未来に何を託していくのか。そういったことを、この映画を通して皆さんに感じていただけていたらうれしいです」といったメッセージを、学生たちは真剣なまなざしで見守っていた。

宝島」は、9月19日から全国公開。

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