「九月と七月の姉妹」幼さと狂気が支配する、姉妹だけの“ゲーム”を捉えた本編特別映像
2025年8月7日 17:00

「ロブスター」「ブルータリスト」などで俳優としても活躍し、ヨルゴス・ランティモスの公私ともに渡るパートナーとしても知られるアリアン・ラベドが長編デ監督ビューを飾った「九月と七月の姉妹」で、主人公である姉妹の歪な支配関係を捉えた本編映像が披露された。
生まれたのはわずか10カ月違い、いつも一心同体のセプテンバーとジュライ。我の強い姉と内気な妹は支配関係にありながら、お互い以外に誰も必要としないほど強い絆で結ばれている。しかし、学校でのある事件をきっかけに、シングルマザーのシーラと姉妹はアイルランドの海辺近くにある亡父の家<セトルハウス>へと引っ越すことになる。新しい生活のなかで、次第にセプテンバーとの関係が変化していることに気づきはじめるジュライ。「セプテンバーは言う──」ただの戯れだったはずの命令ゲームは緊張を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく……。

本編映像は、伝令ゲーム“サイモン・セッズ“を姉妹だけのゲーム“セプテンバー・セッズ“にアレンジして興じる姉セプテンバーと妹ジュライの姿を捉えている。「回って」「鼻を舐めて」「腕立て伏せを10回」と、セプテンバーが一方的に命令し、それにジュライが黙々と従っている。一見、子どもらしい無邪気な遊びに興じているように見えるが、妹は姉の言いなりになっており、徐々に狂気を孕んでいく。
ラベド監督は、本作の姉妹の関係性について、「思いやりと破壊は紙一重」「ホラーやサスペンスの要素は有害な人間関係という恐ろしい体験の中に組み込まれている」「それがこの姉妹の共依存関係の核心にある」と語っており、短いシーンながら歪な支配関係が見て取れる映像に仕上がっている。

なお、本作は全編フィルムで撮影されており、前半は16ミリ、後半は35ミリとフォーマットを切り替えている点も大きな特徴のひとつだ。その理由についてラベド監督は「ジュライの現実認識の変化を、さりげなく示す手段としたかった」と語る。また、撮影手法としてワイドショットを多用しているが、「閉ざされた空間にある身体と、自然の広がりの中に置かれた身体、その両方を捉えたかった。フレームの中で身体が現れたり消えたりする“余白”を生み出すため」とその意図を明かした。
さらに、「姉妹は共通の身体言語を持っていて、それが母のシーラとも融合していく」と述べ、「彼女たちは、賛美歌のような響きを持つ共通の“音楽的感覚”を共有している。そういった遊びややり取りを通じて、映画の中にある種の“軽やかさ”を生み出そうとした」「親しい関係とは、奇妙さとおかしさが混じり合うもの。私はそれを、過度な感情(パトス)に陥ることなく探ろうと考えた」と、演出に込めた思いを語った。
「九月と七月の姉妹」は、9月5日から渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開。
(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024
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