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「ラ・コシーナ 厨房」どのような“リサーチ”を行った? アロンソ・ルイスパラシオス監督が製作秘話を明かす【NY発コラム】

2025年7月6日 11:00

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「ラ・コシーナ 厨房」(公開中)
「ラ・コシーナ 厨房」(公開中)
(C)COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

ニューヨークで注目されている映画とは? 現地在住のライター・細木信宏が、スタッフやキャストのインタビュー、イベント取材を通じて、日本未公開作品や良質な独立系映画を紹介していきます。


ベルリン国際映画祭、トライベッカ映画祭になどに出品され、世界中の映画ファンから注目を浴びた「ラ・コシーナ 厨房」(日本公開中)。

同作の舞台は、スタッフの多くが移民で構成されたニューヨークの観光客向け大型レストラン「ザ・グリル」。いつも通りの忙しい朝、前日の売上金の一部が消えたことが判明し、従業員全員に盗難の疑いがかけられる。さらに新たなトラブルが次々と発生し、料理人やウェイトレスたちのストレスはピークを迎え、厨房はカオスと化していく。イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーによる1959年初演の戯曲「調理場」(1959年)が原作となっている。

今回は、同作のメガホンをとったアロンソ・ルイスパラシオス監督に話を聞いた。

画像2(C)COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

本作の見どころは“厨房で起こっていることの雰囲気”をよくとらえていること。この雰囲気を作り出すために、どのようなリサーチを行ったのだろうか?

「原作となっている戯曲『調理場』では英国の産業用キッチンが描かれていて、多くのキャラクターが登場する。映画ではニューヨークに舞台を移し、メキシコの不法移民を描いているんだ。脚本を書いている時、私はニューヨークを訪れている。不法移民にインタビューするために、たくさんのレストランに行ってみたんだ。彼らは不法移民なのでインタビューを受けるのは難しい――なぜならインタビュー自体を嫌がるからだ。そこで、ニューヨークにあるメキシコの組合に協力してもらって、彼らが、自分たちの経験について安心して話せる場所を確保してもらった。1対1で話し、さらに厨房にも入ったことで、彼らの日常がどういうものか見てみたんだ」
画像3(C)COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

ルイスパラシオス監督は、学生時代にロンドンにあるレストランのキッチンでバイトをしていたそう。

「当時、この映画で描かれたレストランとそれほど差のない店で働いていた。本作で描かれているレストランは高級なものではなく、もっと工業的――質より量なんだ。だから実際にリサーチしたのは、タイムズスクエアにある観光客向けのレストラン。レッドロブスターやオリーブガーデンのような店に入った。そういう店は私たちのインスピレーションの源で、何度も足を運ぶことになったんだ」。

さらに「このような映画を撮るときは、まずレストランをデザインしなければならない。私たちはシェフを雇い、デザインを手伝ってもらったんだ。リアルに感じられるようにしなければならなかった。シェフがメニューを作り上げ、それを基にして厨房を作り上げていく。“本物の厨房”を作ったうえで、カメラの配置を機能させるという二重のプロセスだった」と教えてくれた。

画像4(C)COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

料理番組のように色とりどりの食材を撮るのではなく、本作ではモノクロ撮影をチョイス。これは美学的な選択だったのだろうか。

「モノクロが、私の撮りたい映画だとわかっていたんだ。寓話的で、完全に現実的ではないものにしたかった。このような物語の場合、自然な照明、手持ちカメラなど、ごく自然な方法で語るのが最もわかりやすいアプローチだと思う。でも私は、あえてそうはしたくなかった。もっと映画的なことをやりたかったんだ。ストーリーも“労働者の夢”を扱っているので、より主観的なものにする必要があった。モノクロにすることで、寓話としての枠組を作ることができたと思う。もうひとつの要素は、時代を超越した作品にすることだった。白と黒はその手助けをしてくれる。何年の出来事なのか、正確にはわからない。今かもしれないし、50年前かもしれない」

筆者は、かつてニューヨークの日本食レストランでバイトしていたことがある。当時も不法移民は働いていて、彼らは同じレストランで長期間働き、他のレストランではあまり働こうとはしなかった。そして、家族にしっかりと仕送りしている人々が多かったことを記憶している。

「(仕送りの要素は)今作を描くうえで重要だった。なぜなら、不法移民の多くは、家族により良い生活をさせようとしているからだ。彼らは家族を置き去りにしたりはしない。不法移民ではないメキシコ系移民の場合もそうなんだ。彼らはアメリカに来て、メキシコの家族と非常に強い絆で結ばれている。不法移民は毎日、アメリカからメキシコに何百万ドルも送金している。メキシコにとっては大きな収入源でもある。それを今作の中でも見せることが重要だった」
画像5(C)COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

最も素晴らしいシークエンスのひとつに、厨房をワンショットで撮影するシーンがある。このショットを撮るために、キャストやスタッフとどのような準備をしたのか。

「あれは今作の目玉で、脚本にも記している。レストランの多忙なランチ時、シェフやウェイトレスが体験するようことを、観客にも体験させたかった。観客を没入させる意図があるんだ。ただ、そのためにはレストランとして機能させる必要があり、それを撮影するためのレストランのデザインもしなければいけなかった。そこからカメラを使って、どのように俳優を振り付けていくか――実際には、全体の撮影時間のおそらく15~20%くらい、このワンショットの撮影に費やしたんだ」
画像6(C)COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

本作の魅力は、事務所から金が盗まれたことに端を発する群像劇であること。

「消えたお金の部分は、原作にはないもの。キッチンでいつも起こっているようなことが面白いと思っていたんだ。誰かが金を盗み、魔女狩りのようなことが行われる。すぐに疑われるのは不法移民で、彼らは失うものが大きい」
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では、ラウル・ブリオネス・カルモナ(主人公ペドロ役)、ルーニー・マーラ(ジュリア役)、アンナ・ディアス(エステラ役)のキャスティング経緯は?

「ラウル・ブリオネスとは長年仕事をしている。12年ほど前、私はアーノルド・ウェスカーの戯曲の舞台版を演出し、ラウルも出演していた。そこで知り合い、それから演劇で一緒に仕事をするようになったんだ。彼は私の前作『コップ・ムービー』にも出演している。彼を起用したのは、とても献身的な俳優で、規律正しいことを知っていたからだ。今作にはそういう人が必要だった。主役のためにメキシコでは大規模なキャスティングを行った。ラウルが出演することになった時、彼の集中力、エネルギー、そして魅力があることは誰の目にも明らかだった。とても厳しい役だったが、ラウルは完璧だった」
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一方、マーラについては「ルーニーについては、脚本を書いているときに頭に浮かんだキャラクターだった。彼女を思い浮かべた時点で、このキャラクターを演じられるのは彼女以外には考えられなかった。彼女には会ったこともなかったけど、手紙を書いて送ったら、ありがたいことにそれが彼女に届いたんだ。まるで瓶にメッセージを入れて海に送り、希望を託したような気分だったよ」と回答。マーラは、ルイスパラシオス監督の過去作を気に入ったことで、メキシコでの撮影に臨んでくれたそうだ。

ディアスに関しては「アンナは、私たちが多くの女の子を対象としたオーディションを経て起用している」と告白。

「その中でも若くて経験の浅い子がよかった。 演劇学校を卒業したばかりの子や、プロとしての経験の浅い子を探していたときに、アンナと出会ったんだ。彼女はとても素晴らしく、いい意味で頑固だった。彼女はこの役を獲得する決意を固め、私に話しかけてきた。『私がこの役を演じたい』とね」

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