枝優花監督が語る、「We Live in Time」への共感「30代の今の自分に刺さりすぎて…」
2025年5月28日 18:00

「ブルックリン」のジョン・クローリー監督最新作で、A24が北米配給権を獲得した「We Live in Time この時を生きて」のトークイベントが5月27日、都内で行われ、映画監督・脚本・写真家の枝優花(「少女邂逅」)が登壇。MCを務めたコラムニストの山崎まどかとともに、本作の魅力を語り合った。
新進気鋭の一流シェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と、離婚して失意のどん底にいたトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)。何の接点もなかった二人が、あり得ない出会いを果たして恋におちる。自由奔放なアルムートと慎重派のトビアスは何度も危機を迎えながらも、一緒に暮らし娘が生まれ家族になる。そんな中、アルムートの余命がわずかだと知ったふたりが選んだ型破りな挑戦とは──。
枝監督は開口一番、「30代の今の自分に刺さりすぎて……かなり共感しました」と、率直な感想を吐露。劇中の主人公たちと年齢が近いこともあり、人生の岐路に立つ彼らの姿が、自身の感情と強く重なったという。山崎も「本作がただの恋愛物語ではなく、決断という大きなテーマもある作品」と、物語の奥深さに触れた。

最初の話題は、フローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドという主演ふたりについて。映画では30代の等身大の男女を演じているが、ピューは現在29歳、ガーフィールドは41歳と、実際には年齢差がある。しかし、その年齢差を感じさせない自然な演技に、枝監督は「アンドリュー・ガーフィールドが演じたトビアスのあり方が、私の中では希望であり、新しいと感じた」と熱く語る。続けて、「男女逆の物語はこれまでたくさん見てきました。でも、本作は男性がキャリアのために女性に変化を求めるような関係とは違って、トビアスが愛する人のために自分を譲り、愛する人を尊重していく。その姿が、現代で生きる上でぶち当たる壁を乗り越える、新たな男性像として映りました」と絶賛した。
山崎は、ピューの魅力について、「彼女自身の生命力や思い切りの良さが、映画のリアリティを後押ししていた。俳優として真実味がある存在」だと力説。インスタグラムで料理動画を配信する日常的な顔から、役作りのための体型変化を拒否したり、ヌードシーンにも自然体で臨む彼女の姿勢が、自立した女性であるアルムートのキャラクターと完璧に重なっていたと指摘。「彼女はカメレオン俳優ではないが、言動にリアルな存在感がある」と、その魅力を称賛した。
さらに話題は、本作最大の特徴である、時系列をシャッフルした斬新な構成に。劇中では出会いや人生における喜び、悲しみ、最悪な日……これら全ての瞬間がバラバラに提示されていく。
山崎は「そもそも人生は全部混乱しているようなもの。自分の人生が物語になるとして、今自分がどの地点にいるのかなんて分からない。ガーフィールド演じるトビアスは、計画的な性格で将来のことをしっかり考えているけれど、ことごとくうまくいかない。でも、それがすごくリアルで良かった」と、構成が生むリアリティを解説。さらに、「時間がシャッフルされることで、観客がふたりの未来を先に知ってしまう瞬間が生まれて、その構造もとても面白かった」と分析した。
枝監督も「ぐちゃぐちゃな時系列が、より一層人生の機微を際立たせていた」と同調し、「本作は、いろいろな展開がありながらも、ポジティブなものに向かっていく作品。人生どうなるか分からないけど、結局は今を生きていくしかないんだということが、この斬新な時間軸の描かれ方によってより深く理解できた」と話し、観客がまるで自分の記憶をたどるように物語を追体験できる構造だと語った。
イベントの終わりには、枝監督が「今日の観客には20代の方が多いと聞きました。世代が違う皆さんが、どんな風にこの作品を受け取ったのか気になります」と投げかけると、山崎は「映画って、その1~2時間に自分の人生を預けるようなもの。失敗したら嫌だなと思う人もいるかもしれないけど、どんな映画にも必ず何か持ち帰れるものがある。今日のこの時間が、皆さんにとって良いものになっていたら嬉しいです」と、映画鑑賞の価値を改めて強調し、温かい言葉で締めくくった。
「We Live in Time この時を生きて」は6月6日から公開。
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