本作の日本語吹替版では、田村睦心がブラック・ウィドウ/ナターシャの“妹”であり、ロシアの暗殺者養成機関で育ったエレーナ役、梶裕貴が物語の鍵を握るボブ/セントリー役を担当。このほど映画.comのインタビューに応じ、作品の魅力やキャラクターへの思いを語った。(取材・文:磯部正和)
※この記事には「
サンダーボルツ*」のネタバレとなる箇所がございます。未見の方は、十分ご注意ください。
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――映画をご覧になった率直な感想をお聞かせください。
梶:まず、よくこの個性が強すぎるメンバーで映画を一本作ろうという決断を下しましたよね!(笑)。
田村:確かに。ハチャメチャなキャラクターたちなのに、意外とまとまっているんですよね。しかも結構感動するんです。
梶:コミカルな部分と感動シーンの緩急がすごいですよね(笑)。
田村睦心――お二人が演じられたキャラクターについて。田村さんはエレーナ役を続投されますが、改めて彼女の魅力をどのように感じていますか?
田村:エレーナは、元々「
ブラック・ウィドウ」では妹としての立ち位置で、強いお姉ちゃんに頼っている印象でした。でも本作では、お姉ちゃんがいなくなった後の“やさぐれ感”がありつつも、彼女が持っていた優しさや強さを受け継いでいる。やさぐれているのに、ものすごく人に優しくて芯が強いんです。そこが魅力的ですね。
そして、演じている
フローレンス・ピューさんのお芝居が本当に素晴らしくて。顔の表情だけで気持ちが手に取るようにわかるんです。だから吹き替えとしては、彼女の演技に寄り添うことを意識しました。喋り始める前から表情で語っているので、「もう完璧だな、添えるだけでいいじゃん」と感じるくらいでした(笑)。切ない顔とかもすごく良くて、本当に細かいお芝居をされる方だなと思いました。
梶:「
ブラック・ウィドウ」の時からエレーナは存在感がありましたが、今回さらに深みが増して、この「
サンダーボルツ*」の物語を引っ張っていくポジションとしてぴったりのキャラクターだなと感じました。
梶裕貴――梶さんが演じられたボブは、セントリーという“もうひとつの顔”を持つ複雑なキャラクターですね。
梶:そうですね。そもそもボブを演じている
ルイス・プルマンさんは、僕と違ってガタイもいいし、声も低い。なのでオーディションの時から、日本語吹替版として、彼の持つ“気弱さ”や“口下手”な部分をどう印象的に表現するかが課題でした。コンセプトとして、「日本人が共感できるようなキャラクター像を目指したい」というのが本国製作チームからの要望にあったようで。聞こえてくる声と見た目のギャップがあるので、観客の皆さんに違和感なく受け入れてもらえるかが少し不安でもありましたが、実際に試写を観てみて、ルイスさんのお芝居――仕草や姿勢などを含めた繊細な表現にリードしていただきつつ、うまく合わせることができたのかなと感じています。
――吹替ならではの難しさはありましたか?
梶:ボブは言葉が詰まるシーンが多いんですが、原音の英語と日本語では喋るテンポが違うので、そのニュアンスを汲み取って日本語のセリフにはめていくのが技術的に難しかったです。「ここで3回詰まって、でもここは早口で…」みたいな(笑)。声のボリュームの調整も難しかったですね。吹替えのスタッフさんと相談しながら、模索しつつ作っていきました。完成したものを観て、絶妙なバランスで収まっていたので感動しました。スタッフの皆さんには心から感謝しています。
(c)2025 MARVEL ――「
サンダーボルツ*」は、アベンジャーズとは全く異なる個性的なメンバーが集まったチームですが、その魅力はどこにあると感じますか?
梶:まさに“最強じゃない”ヒーローたちの集まり。それぞれのシリーズではメインキャラクターでありつつも、どこかサブ的なポジションだったり、問題を抱えていたりするメンバーが集まっているというところが大きな特徴ですよね。
田村:あんまり華やかな人たちではないんですけど(笑)。やっていることは、はちゃめちゃなのに、意外と素直で可愛い連中なんです。見ていて微笑ましいというか。
梶:いわゆるヒーローらしい“きれいごと”を言わない人たちなんです。どこか泥臭くて、人間らしさがあって。
田村:スポ根的な仲間感じゃなくて、「腐れ縁」みたいな(笑)。なんだったら別に大して仲良くなかったメンバーもいるし。
梶:そうそう。しぶしぶ協力している感じとかね。
田村:最初は暴力で解決しようとするような人たちなんですけど、最終的には暴力じゃなくて、優しさでまとまっていく。みんなが集まってくるところとか……グッときます。
梶:最初は殺し合いで集められたような導入なのに、最後には熱い友情のようなものが芽生えている。その泥臭さがいいんですよね。新しいマーベル作品のスタイルを感じましたし、ものすごく続編を見てみたくなりました。アベンジャーズとは違うチーム感を描いたシナリオの良さが強く出ていたと思います。
――日本の任侠映画のような雰囲気も感じました。
田村:ああ、確かに!アウトレイジ的な集まりが、最終的にはいいことしちゃう、みたいな(笑)。
梶:そうですね(笑)。説教臭いことを言わないからこそ、観ている側も矛盾を感じずに最後まで見届けられる。「それを言うならさっきの行動は何なんだ?」みたいなことがないというか。
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(c)2025 MARVEL ――ご自身が演じた役以外で、「推し」キャラクターはいますか?
梶:うーん、難しい(笑)。みんな可愛いくて、愛おしくて……。でも、アレクセイ・ショスタコフ(
デビッド・ハーパー)かな。
田村:アレクセイは可愛いですね!
梶:「
ブラック・ウィドウ」の時からそうでしたけど、彼が出てくると一気にコミカルな空気感になるんですよね。ドラマの本筋がシリアスな中でも、彼だけはちょっと笑っていい雰囲気がある(笑)。明夫さん(=
大塚明夫)のお声とお芝居も、もちろん最高!キャラクターとして、力はあるけど特殊能力はない、どこか昭和の何くそ根性というか、そんな泥臭さが誰よりもあって。それでいて、エレーナとの親子のドラマで泣かせてくれる。今作でもすごく印象的でしたね。
(c)2025 MARVEL田村: ここの親子関係は本当にいいですよね。お父さん(アレクセイ)が本当に優しくて。はちゃめちゃで「しょうもない親父だな」って思う瞬間もあるんですけど(笑)。彼がいたからこそ、エレーナは暗殺者として育てられても、ああいう優しさを持った人物になれたんだろうなって。でも推しかぁ……。アレクセイ以外だと、ジョン・ウォーカー(
ワイアット・ラッセル)が好きでしたね。
梶: ああ、ウォーカーね!
田村: 直情的な感じがいい(笑)。すぐ言い合いになったりするんですけど、同じレベルで会話をしている感じがなんか楽しくて。ムカつく瞬間もあるんですけど、意外と素直で優しい、いいやつだなって思います。
(c)2025 MARVEL ――チームならではの、クスッと笑えるシーンも多かったですね。
梶: エレベーターのシーンは最高でしたね!
田村: あー、あれは笑いました!
梶: みんなでボブを救出しに行って、カッコよく登場するのかと思いきや、ヴァレンティーナ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)のアナウンスで「エレベーター使えるから上がってきなさい」って(笑)。チーンって扉が開いて、みんな居心地悪そうにしているのが……。
田村: あんなにカッコいい格好しているのに(笑)。「なんか正門から来たのが初めてだな」みたいな雰囲気がたまらないですよね。
梶: アベンジャーズじゃ絶対ありえない(笑)。
田村: アベンジャーズだったら、みんな飛んだりできますからね(笑)。シャン!って登場しないのが「
サンダーボルツ*」らしい。その愛おしさがありますよね。ヴァレンティーナも、悪役なんですけど、どこか爪が甘くて憎めない。彼女の過去も少し描かれていて、今後どうなるのかすごく気になります。
(c)2025 MARVEL――梶さんは、「
スパイダーマン ホームカミング」で主人公の友人役を務めていましたが、マーベル・スタジオ作品で主要キャラクターを演じるのは今回が初となりました。今回メインキャラクターとして参加されて、改めてどのような思いがありますか?
梶: いや、やっぱり嬉しいですよ。マーベル作品は憧れでしたから。しかも今回はセントリーという、すごく大きな力を持ったヒーロー役で。オーディションの時は、自分が何の作品を受けるのかも伏せられていて(笑)。
田村:ええ!?
梶:そうなんです。だから最初はまったくピンときていなかったんですけど、合格をいただいて「
サンダーボルツ*」だと知り、セントリーについて調べたら「こんなすごい力を持っているキャラクターなんだ!」と大興奮して(笑)。とはいえ、ワクワクと同時に緊張感もありましたね。
今回、改めて過去作(「
ブラック・ウィドウ」など)を見返してみると、以前とはだいぶ見え方が違って。「
サンダーボルツ*」のドラマを知ったうえで観るエレーナは、より愛おしく感じられましたし、こういった大きな歴史の流れの中に、ボブも「
サンダーボルツ*」も、そして自分自身も声優として加わらせてもらえるんだなと思うと、本当にゾクゾクしました。感慨深かったです。
(c)2025 MARVEL――最後に、映画を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
田村: 本当に面白くて、魅力的なキャラクターがたくさん登場します。ヒーローじゃない彼らがどうなっていくのか、ぜひ劇場で見届けてください。吹き替え版も、それぞれのキャラクターの個性が際立っていておすすめです。
梶: アベンジャーズとは全く違う、泥臭くて人間臭いチームの物語です。笑いあり、涙あり、そして今後のMCUシリーズに繋がっていくワクワク感もあります。ぜひ、劇場で彼らの活躍(?)を応援してください!