【「パディントン 消えた黄金郷の秘密」評論】故郷帰りの大冒険が心に成長をもたらす、波乱万丈なシリーズ第3弾!
2025年5月5日 11:00

礼儀正しくおっちょこちょいなクマのパディントンとブラウン一家が出会った映画版の第1作目から、早いもので10年。本作では前2作を担ったポール・キングが製作総指揮&原案に回るなど布陣に変化が起きているが、多彩な登場人物が楽器のように響き合うコミカルな冒険と、胸に広がる温もりは変わっていない。何よりベン・ウィショーのジュっとバターが溶けるような優しい声に触れられる喜びはやっぱり格別だなと、2作目との間に7年のブランクが空いただけに、改めてそう強く感じる。
思えば、1作目では初めての街、暮らし、人々との出会いがあり、2作目では慣れ親しんだ日常や絆をもう一段深めていく姿が描かれた。そこにきて3作目のメインとなるのは、なるほど、我らがクマの原点回帰。最近あまり元気がないらしいルーシーおばさんを訪ねて、パディントンがブラウン一家の手を借りながら、生まれ故郷のペルーを目指す。だが、肝心のおばさんの姿は無し。その行方を追って一行はアマゾン川を船で進み、危険なジャングルへと分け入っていくのだが・・・。
ご覧の通り本作には、慣れ親しんだロンドン暮らしがまったく通用しない非日常が広がっている。と同時に、この大冒険は、子供たちが成長して巣立ちの時を迎えようとしているブラウン一家の通過儀礼としても大きな意味を持つ。目の前にそびえるジャングルはメタファーと言っても過言ではないだろう。
果てしない旅路に豪華ゲストが色を添える。オリビア・コールマンが歌って踊るシスターとして素っ頓狂に盛り上げたかと思えば、気のいい船長役のアントニオ・バンデラスは「黄金伝説」を持ち出して物語に揺さぶりをかけてくる。また、本作の根底に、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の「アギーレ 神の怒り」(1972)や「フィツカラルド」(1982)のエッセンスがうっすら織り込まれているのも、知っている人にとっては楽しめるポイントかもしれない。
前作があれほど絶賛されたものだから、比較したい気持ちはよく分かる。だがそこにばかり気を取られ過ぎると楽しめなくなる(その尺度さえ外せばノリよく楽しめる良作だと私は思う)。ちなみに今回、監督を担うのはイギリスの百貨店CMなどでユニークな創造性を発揮する50代のクリエイターだ。長編はこれが初。かつてパディントンがそうだったように全ての人に始まりの一歩がある。ぜひフレッシュな気持ちで新布陣による今作を受け止め、味わいたいものだ。
執筆者紹介
牛津厚信 (うしづ・あつのぶ)
映画ライター。77年長崎生まれ。明治大学を卒業後、某映画専門放送局の勤務を経てフリーに転身。クリエイティブ・マガジン「EYESCREAM」や「パーフェクトムービーガイド」などでレビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。またイギリス文化をこよなく愛し、その背後にある歴史や精神性を読み解くことをライフワークとしている。
Twitter:@tweeting_cows/Website:http://cows.air-nifty.com/
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