長い沈黙を経て、なぜ再び映画を撮ろうと思ったのか――弔辞の代筆業を描く「来し方 行く末」監督の告白【アジア映画コラム】
2025年4月27日 19:00

北米と肩を並べるほどの産業規模となった中国映画市場。注目作が公開されるたび、驚天動地の興行収入をたたき出していますが、皆さんはその実態をしっかりと把握しているでしょうか? 中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」のフォロワー数280万人を有する映画ジャーナリスト・徐昊辰(じょ・こうしん)さんに、同市場の“リアル”、そしてアジア映画関連の話題を語ってもらいます!
毎年、日本では数多くの中国映画が上映されています。ですが、メジャー作品を除けば、その大半がカンヌやベルリンなど欧米の映画祭を経て紹介されたものです。中国国内の映画祭で評価された作品が、直接日本に届くという機会はまだ限られています。
上海国際映画祭をはじめ、中国では毎年多くの優れた映画が生まれています。そうした作品を日本にも紹介しようと、2015年には上海国際映画祭と東京国際映画祭が提携し、互いに推薦作品を交換上映するという取り組みが始まりました。
この提携は、コロナ禍で数年間中断されていましたが、23年に再開。上海からは、メインコンペティションで監督賞と男優賞をダブル受賞したリュウ・ジャイン監督作「来し方 行く末」と、アジア新人賞部門で監督賞を受賞した「メイ」が推薦されました。
この2作品は東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門で上映され、大きな注目を集めました。中でも「来し方 行く末」は、静けさのなかに深い感情を湛えた作品として、多くの観客の心をとらえていました。
そして「来し方 行く末」は、今年の4月25日から日本公開を迎えました。
監督のリュウ・ジャインは、05年の長編デビュー作「牛皮」にて、第55回ベルリン国際映画祭のカリガリ映画賞と国際批評家連盟賞を受賞。その独特なインディーズ・スタイルによって、当時の中国映画界に大きな衝撃を与えました。
今回の「来し方 行く末」は、カンヌ国際映画祭の監督週間、ロッテルダム国際映画祭Bright Future部門で上映された「牛皮II」以来、実に14年ぶりの長編映画です。なぜ長い沈黙を経て、また映画を撮ろうと思ったのでしょうか。
その思いを聞きたくて、北京にいる監督とオンラインでじっくりと語り合いました。

大学院まで進学したものの脚本家デビューがかなわなかったウェン・シャンは、不思議な同居人シャオインと暮らしながら、葬儀場での弔辞の代筆業で生計を立てている。丁寧な取材に基づいた弔辞は好評だが、本人は中年に差しかかる年齢で、このままで良いのか自問自答していた。同居していた父親との交流が少なかった男性や、ともに起業した友人の突然死に戸惑う会社員など、さまざまな境遇の依頼人との交流を通して、ウェンの中で止まっていた時間がゆっくりと進みはじめる。






(C)Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd
執筆者紹介

徐昊辰 (じょ・こうしん)
1988年中国・上海生まれ。07年来日、立命館大学卒業。08年から中国のポータルサイトSINA、映画専門誌「看電影」、映画専門Web媒体DeepFocusなどで、日本映画の批評と産業分析を続々発表。2016年から、北京電影学院に論文「ゼロ年代の日本映画~平穏な変革」などを不定期発表。中国最大のSNS、微博(ウェイボー)のフォロワー数は約270万人。WEB番組「活弁シネマ倶楽部」の企画・プロデューサー。2020年から上海国際映画祭・プログラマーに就任、日本映画の選考を担当。2024年「現代中国映画祭」を企画・設立。
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