【横浜フランス映画祭2025】ミシェル・アザナビシウス監督が語る、初のアニメーション映画制作秘話 ジャン=ルイ・トランティニャンがナレーションで最後の仕事
2025年3月24日 11:00

横浜市で開催された横浜フランス映画祭2025で3月23日、ミシェル・アザナビシウス監督の「神さまの貨物」が横浜ブルク13で上映され、アザナビシウス監督が上映後のQ&Aに応じた。
「アーティスト」(11)でフランス映画初のアカデミー賞作品賞、2017年製作の日本映画「カメラを止めるな!」のフランスでリメイクした「キャメラを止めるな!」(22)など、バラエティに富む作品で知られるアザナビシウス監督の初のアニメーション作品だ。
長年子どもを授からなかった木こりの妻が、絶え間なく森を通過する列車から放り投げられた赤ん坊を連れて帰って育てることを決意する――という物語。強制収容所行きの貨物列車に乗せられたユダヤ人夫婦の夫が、何とかわが子の命だけでも救いたいと願って起こした行動、イデオロギーに染まった村人に対し、自身の命を挺して子どもを守ろうとする木こり、と公然と虐殺が行われていた戦時下での人間の良心を美しいアニメーションとアレクサンドル・デスプラによる音楽で描き出す。フランスの著名な劇作家であり、児童文学者であるジャン=クロード・グランバーグの同名小説が原作で、2022年に死去した俳優のジャン=ルイ・トランティニャンがナレーションを担当した。

自身の両親とグランバーグが70年以上の付き合いがあったことから、本作の原作を知ったというアザナビシウス監督。「ホロコーストを描く映画は、殺した方の凶悪さ、あるいは犠牲者の悲劇を描くどちらかが多いですが、この作品は正義の人々、命をかけて他の生命を助けた人を描きました。人間は最悪のことも引き起こすが、最良のこともできるということ、尊厳と道徳を選ぶこと、それは子どもたちに伝える物語として現代的であると思う」と本作のテーマを語る。
アニメーション映画として制作したのは、原作者グランバーグの意向だったそう。「ホロコーストはヨーロッパの国々にとっての集団の悲劇であり、トラウマになっていることです。現実をコピーするのであなく、ある程度距離を置いて現実を想起させる手段で、子どもにも見せることができ、嘘のない語りができる手段です」とその手法の優位性を語る。

初のアニメーション作品だが、主な登場人物のデザイン、作画はアザナビシウス監督自身が担当したという。アニメーションは実写映画と制作過程が大きく異なり、多くの困難があったと吐露。「物語を絵と音楽で感動させ、語ることは実写もアニメ-ションも同じですが、手法が異なります。アニメーションは例えば雲から木まで好きに描けますが、多くの人の手が必要で、チームワークの作業になります。監督としては、現実にとらわれずに何かを想起させる表現でよいので、よりアーティスティックに描け、実写よりも語る可能性が広がりました。アニメ-ションを使うことによって、フィクションを入れ込んでいけますし、ある世界から鳥が飛ぶようにまた違う世界に連れて行ってくれますし、ナレーションもポエジーのように違う世界に導きます」と語った。
音楽は、セリフが少ない映画のため、絵コンテの早い段階から、まずはマーラーなど有名なクラシック楽曲などの音楽をつけていき、色付きのシーンが完成し、全体の音楽の構成ができたところに、デスプラが全体をまとめてオリジナル楽曲を作っていったそう。また、リアリティを重視し、劇中の一場面とエンドロールでは実際にユダヤ人たちによって歌い継がれてきたイディッシュ民謡が用いられている。

本作は、ナレーションを担当したジャン=ルイ・トランティニャンさんの最後の映画の仕事でもある。「フランスの俳優の中で最も美声の持ち主で、巨匠です。話を持ち掛けたときはすでにご病気で、目が見えない状況だったので、奥さんが脚本を読み、彼が暗記したものを録音するというやり方をとりました。彼が住んでいる南仏に赴き、スタジオで録音をしましたが、非常に感動的でした」と亡き名優との仕事を振り返った。
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