監督の実母がマルチ商法にドハマり→“現実”を脚本に取り入れた!? 「石門」中国社会に潜む“リアル”を描いた本編映像
2025年2月21日 12:00

“中華圏のアカデミー賞”と称される台北金馬獎(第60回)で日本資本の映画として初めて最優秀作品賞を受賞し、最優秀編集賞との2冠に輝いた映画「石門」(読み:せきもん)の新たな本編映像が、このほど公開された。主人公の母が夢中になっている“マルチ商法のリアル”をとらえている。
米レビューサイト「ロッテントマト」では、批評家が94%、一般観客は驚異の100%の高評価を獲得(12月14日時点)。監督は中国湖南省出身のホアン・ジーと東京出身の大塚竜治。中国と日本を拠点に活動する夫妻は、女性の性に関する問題をテーマに映画を共同製作してきた。新作「石門」は、望まぬ妊娠に直面した20歳のリン(ヤオ・ホングイ)を主人公に、女性の前にある様々な壁を静かに見つめる作品となっている。
本編映像は、妊娠していることを知ったリンが、両親が経営する診療所に帰宅するシーンから始まる。営業中のはずの診療所には誰も居ない。「今どこに?」と母に電話をかけると、少しの間をおいて「集会よ。お父さんがいるでしょ?」と素っ気ない返事。父がいないと伝えると、「患者さんの家を回っているのね。私のところに来なさい」と娘を呼び出す。
指示された場所に到着したリンの目には、怪しげな集会をする人々の姿が飛び込んでくる。髪の毛を剃り上げた女性や、伸びかけの坊主頭の女性たちが、互いの頭や肩にクリームを塗りこみながら「賞品は10万元の価値がある高級外車だ。ボスも言ってるぞ、“わが社の商品を売ればもれなく家と車を手にできるぞ”」と、儲け話を意気揚々と語る男性の声に耳を傾けているのだ。
どうやら一攫千金を謳うマルチ商法の集会のようだ。「活力クリームの販売目標は5カ月で2千個。ひと月400個で十分だ。車をゲットして買い物や学校の送り迎えをしたら便利だろ。クリームを2千個、それから顔のパックも。車が欲しいならパックも600枚売るんだ」と、男の話は更にヒートアップしていく。その声に元気よく返事をする女性たちの異様な盛り上がりを見つめていたリンは、あきれた様子で母に冷たい視線を送る……。

ホアン・ジー&大塚竜治監督の演出スタイルは、演技経験のないキャストを起用し、あらすじをベースに、出演者たちが実際に体験したリアルな出来事を物語に盛り込んでいくことが特徴だ。実はこのシーン、あらすじには一切書かれていなかった。
母を演じたホン・シャオション(ホアン・ジー監督の実母)が、実際に“活力クリーム”を売りさばくマルチ商法にハマってしまい、撮影中にもかかわらず髪の毛を剃り上げてしまった。その現実を脚本に組み込んで撮影することで、より自然体の演技を引き出すことに成功しているのだ。
中国ではマルチ商法は法律で禁止されており、取り締まりの対象となっている。その被害は後を絶たず長年にわたって社会問題化している。昨年公開されたグー・シャオガン監督作「西湖畔(せいこはん)に生きる」では、お茶の葉を摘むことで生活を営んでいた質実な母が、倍々ゲームを謳うマルチ商法によって全てを失う様が描かれていたように、本作でも現在の中国社会に潜む闇の一端が描かれている。
「石門」は、2月28日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開。
(C)YGP-FILM
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