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「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」はアルモドバル監督の死生観に魅了される 滝藤賢一、武田真一、山中瑶子らがコメント発表

2025年1月29日 15:00

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画像1(C)Iglesias Más

ペドロ・アルモドバル監督の初の長編英語作品で、第81回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した最新作「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」の新たな本編映像が、このほど公開された。

本作は、病に侵され安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の最期の数日間を描く物語。ウェス・アンダーソン監督作品やジム・ジャームッシュ監督作品の常連として知られ、「フィクサー」でアカデミー助演女優賞に輝いたティルダ・スウィントンと、「アリスのままで」でのアカデミー主演女優賞に加え、世界三大映画祭すべてで女優賞を受賞したジュリアン・ムーアが親友同士を演じ、繊細で美しい友情を体現している。

小説家として活躍するイングリッド(ムーア)は、ある日疎遠になっていた親友マーサ(スウィントン)が末期がんを患ったことをきっかけに再会を果たす。会っていなかった時間を埋めるように語り合う日々を過ごすふたり。そしてマーサは安楽死を望んでいることを伝え、この世から旅立つ日に隣の部屋にいてほしいとイングリッドに申し出る。

アルモドバル監督が新たな視点から描く、死をとおして生きることを見つめ直す珠玉の人生の物語。本編映像では、このような光景をとらえている。

安楽死を心に決め、自宅でつかの間の休息をとるマーサ。ワイヤレスイヤホンを耳に、ご機嫌な様子で電話をかけた相手は友人のイングリッドだ。死を受け入れたマーサは晴れやかな顔で“終の棲家”を見つけたことを報告するが、電話口のイングリッドは、2人のことを良く知るダミアン(ジョン・タトゥーロ)と顔を合わせ不安げな表情を浮かべる――。

死をテーマとして描いている作品だが、映像から伝わるように辛気臭く重苦しい印象はまるでない。登場人物たちの衣装はカラフルで華やか、“終の棲家”の話題なのにワイヤレスイヤホンとハンズフリーというラフな格好で通話をする姿など、随所にアルモドバルなら監督ではのセンスとユーモアがちりばめられ、“死=重厚なテーマ”というイメージを打ち消し、“死を意識することで今を大切に生きることができる”というポジティブなメッセージを伝えている。

ザ・ルーム・ネクスト・ドア」は、1月31日公開。著名人コメントも発表されている。詳細は、以下の通り。

【ISO(ライター) 】
混濁した死と生をあらゆる被写体を介して観測してきたアルモドバルが、逝く者・見届ける者の両面から生命をやさしく抱擁する至高のメロドラマ。連帯する女たち、母と子、負の歴史が人に刻むトラウマ…これまで幾度も反復してきたテーマがここにきてこれほど優美に花開くとは。
北村道子(スタイリスト、衣装デザイナー) 】
一人の女が死と苦悶に対してやってきた友に饒舌になっていく。そうとは知らない友は次第に引き込まれていく。死に無関心だった友の受け身のショットは私でもある。アルモドバルの脚本は観ている側にも参加を促している。鳥の鳴き声が響く山奥での出来事を映画に昇華した見事な作品である。
【伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家) 】
アルモドバルが母性を表現する時、赤を使う。けれど人生は一色ではなく、カラフルであり本能のままに生きた女性はビビットだと言わんばかりの 神々しき女性のラストショーを目撃した。この次は何を撮るのか、もはや想像もつかない。
【清藤秀人(映画ライター) 】
いかに死にゆくかという課題は、いかに生きたかということと繋がっています。そして、アルモドバルは提案します。死に際でこそ美しくカラフルであれと。さて、マーサのようにレモンイエローの死装束はいかがですか?
斉藤博昭(映画ライター) 】
どうやって自分の最期と向き合うか――。 多くの人が考え、映画でも何度も取り上げられてきたテーマを、ここまで美しく、優しく、潔く描いた作品は初めてではないか。 自らの運命を決めるティルダ・スウィントンの覚悟と佇まいは崇高そのもの。 アルモドバル監督らしい鮮やかな美術。その決断がいつ実行されるのかというスリリングな緊張感。映画的喜びと興奮に浴しながら、最後は人生讃歌が導かれるミラクルな傑作だ。
滝藤賢一(俳優)】
生き方の真髄を問われているような。まさに終え方の美学。最期を迎えた時、どんな顔でいるのか。その顔は人生の集大成となっているのだろうか。その時を最高傑作にするためにも今までの生き方、そして、今、これからの生き方がとても重要な気がしてきました。
【武田真一(アナウンサー)】
がんを患う主人公マーサは、旧友のイングリッドに自らの最期を見届けてほしいと依頼する。イングリッドは戸惑いながら引き受けるが、その役割が何をもたらすかは、彼女も、観客である私たちもわからない。ある時を迎えるまで…。死は恐ろしい。せめて誰かに人生の物語を見届けてもらえたら、その苦痛はやわらぐだろうか?寂しさと温かさと、様々な感情が溢れ出る。人と人とのつながりを、もう一度信じたくなる映画だ。
【月永理絵(ライター、編集者)】
遠からず死者になろうとする者と、生者はどのように向き合えばいいのか。このシンプルでいて残酷な問いを、アルモドバルはいくつもの脱線と絶え間ないおしゃべり、鮮やかな色の氾濫とともに描ききる。そして当然女性たちーー母と娘の対話も。これまでとまったく異なる何かに挑戦しているようで、ここには、私たちがアルモドバルの映画に観てきたものすべてがある。
【ひらりさ(文筆家)】
死は怖い。尊厳ある死を選びたい。家族をかえりみず仕事に打ち込んだ人生でも、死ぬときは、誰かにそばにいてほしい。アルモドバルの作品はいつも、人生のリアルな感情に満ちている。そこにひとしずく落とされるフィクションの色彩が、そのリアルをたまらなく鮮やかに彩るのだ。
森直人(映画評論家)】
更新されていくペドロ・アルモドバル監督の「集大成」。これ以上の深みの境地があるのだろうか。完璧なスタイリングのかっこいい大人たち。彼らの濃厚な人生の語りに耳を傾け、ジェイムズ・ジョイス原作『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』への美しいオマージュに眼を潤ませながら、死の向こう側を想う。大傑作。
山中瑶子(映画監督『ナミビアの砂漠』】
「かつて親しかった友人」という他者との、適切な距離についての素晴らしい映画。 死に向かう物語にも関わらず、中年女性同士の瑞々しく、活きの良い関係性を鮮やかに描き出している。未来へのお守りのような一本!
【よしひろまさみち(ライター)】
アルモドバル初の英語長編は、まるで極上の小劇場を観ているような、緊張感と閉塞感が漂う会話劇。友愛を超えたラブを感じる親友同士のカラフルで濃密な数日間は、死が「終わり」ではないことを感じさせてくれる。
渡辺祥子(映画評論家)】
あざやかな色に包まれた友情と別れの物語はいかにもアルモドバル映画。そこにある痛みも悲しみも死さえも美しく輝きながら、
ティルダ・スウィントン演じるヒロインが喋る一言一言に彼自身の思いを重ねているようにも見える。

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