「火の華」小島央大監督、花火の“矛盾をはらんだ点”に着目 主演・山本一賢は“主人公のSNS”を独断で運用
2024年11月16日 14:00

実際の報道に着想を得た“平和国家”の暗部に斬り込む衝撃作「火の華」の完成披露試写会が11月14日、渋谷・ユーロライブで行われ、主演の山本一賢、監督の小島央大が出席。Q&A付きのトークイベントに臨んだ。
2016年に実際に報道された「自衛隊日報問題」に着想を得た本作は、元自衛官・島田東介(山本)の壮絶な経験とその後の宿命を克明に描いた完全オリジナルストーリー。日本映画ではほぼ扱われることのなかったPTSDの深刻さを見据えながら、日本伝統の“花火”をモチーフに、“戦う”ということや“平和”の在り方、そして人間の本質までを問いかける。

この日がワールドプレミアとなった本作。小島監督は「映画を撮影するときも編集するときも、映画自体をひとつの生きもののような感じで捉えているんです。こいつが何を欲しがっているのか、どこへ向かっているのか、映画と会話をするように作っていく感覚で。今日でようやく作品がひとり立ちし、今は巣立ちの瞬間にいるような気持ちですね」とプレミア上映を終えたばかりの心境を吐露する。また、本作の企画経緯については、このように説明した。
命を奪う「暴力性」を持つ鉄砲と弾丸。死者への慰霊や鎮魂を意味し、「平和性」を表す花火。相反する“火薬”をモチーフにすることに行き着いた小島監督。ニューヨーク育ちの小島監督にとって、テレビではPTSDを抱えた兵士のニュースが頻繁に報じられるなど、PTSDの問題は常に身近にあったそう。「花火で救われる人もいれば、PTSDを発症してしまう原因にもなり得るという矛盾をはらんだところに着目しました」と成り立ちを明かした。

2021年に公開され、新藤兼人賞を受賞するなど高く評価された「JOINT」に続き、2度目のタッグとなった小島監督と山本。山本は、出演だけにはとどまらず、共同企画・脚本にも名を連ねている。共同での作劇について、小島監督は「山本さんが島田東介目線の主観的な感情や記憶を書いて、僕がそこに客観性を盛り込んでいきました」と説明。一方、山本は「最初は現場仕事から始まって、そこから銃を取り出す……って、また『JOINT』と同じ展開じゃねえか?と思った」と会場を笑わせつつ、「人生の壁と向き合っているところは、前作も今作も同じですね」とコメントした。
また元自衛官で、新潟で花火師となる役を演じるにあたり、実際に小千谷の花火師に花火作りを学んだという。
また、本作では、火だけでなく、花もモチーフになっている。島田を表す花として夏椿が登場するのだが、これは山本が出したアイデアだった。「花火って、儚いからこそ美しいと言われていますよね。映画も人生もそう。そんな儚さを象徴する花として、夏椿に出会いました」と明かす山本に対して、「山本さんってロマンチストなんですよね。そんな山本さん自身の価値観がこの映画にフィットしているし、そのおかげで唯一無二の作品になったと思います」と小島監督は切り返した。
そんな2人に加え、本作のプロデューサー兼中国マフィアのボス役で出演もしているキム・チャンバは「JOINT」からの盟友だ。3人の関係性について、小島監督は「まっすぐに意見を言い合える同志。支え合っている三角関係なのかなと思います」と話す。一方、山本は、「央大は『才能がすごい』と言われているんだけど、結構泥くさいんですよ。努力家ですし。インテリだけどストリートなところも好きだなぁって。ニューヨーク育ちで東大の建築学科卒業と聞くと、ちょっとイラッとしたりもするけど(笑)。“良い映画を作ろう”という目的が一緒だから仲良くできる」と魅力を明かす。

観客からのQ&Aでは、鑑賞直後の余韻冷めやらぬ熱のこもった質問が数多く飛びだした。劇中には、英語台詞に日本語字幕がついていないシーンがある。その意図を問われた小島監督は「世の中が平和になってほしいとか、愛をもって人間と接しようとか、ある種、綺麗ごとだと思われがちなことを、あえてちゃんと声に出して言えるような世の中になってほしいと僕は思っていて。そんなセリフを誰に託したいかと考えました。そして、字幕がつくと、どうしても(翻訳者の)“解釈”がついてきてしまう。英語がわからなくても何か伝わるものがあるんじゃないかなと思い、字幕なしで編集しました」と明かした。
また、X(旧Twitter)に“島田東介”というアカウントが存在するのを指摘された山本は「恥ずかしいっすね。“島田がSNSをやっていたらこんなことを書くだろう”という役作りの一環として、独断でやっていた。その時の島田の思いを書き連ねていました」と述懐。これは小島監督も知らなかったようで、「よく見つけましたね」と驚いていた。
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